第33回大阪府理学療法学術大会

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Web Poster

[PG-19] PG-19

Sun. Jul 11, 2021 8:45 AM - 3:30 PM Web Poster:PG-19 (webポスター会場)

座長:杉山 恭二(大阪府立大学大学院)

[PG-19-03] 尺沢への経穴刺激理学療法が脊髄運動神経機能に与える影響―個別データでの検討―

*前田 翔梧1、松下 可南子1、安井 柚夏1、島地 陽登1、伊藤 夢基1、福本 悠樹1,2、谷 万喜子2、鈴木 俊明1,2 (1. 関西医療大学 保健医療学部 理学療法学科、2. 関西医療大学大学院 保健医療学研究科)

【背景と目的】

中枢神経障害などによって生じる筋緊張異常が存在すると、日常生活において円滑な動作の遂行が困難となることや理学療法を行う上で妨げになるため筋緊張異常の改善を求めることが重要となる。筋緊張異常に対する治療手技の1つとして経穴刺激理学療法(以下ASPT)がある。ASPTは鍼灸医学における循経取穴の理論を応用した理学療法手技である。具体的には、症状のある部位や罹患筋上を走行する経絡上の経穴に対して治療者の指で刺激を加えることにより、対象とする筋の筋緊張を変化させるものである。本研究では、尺沢へのASPT抑制手技を行った際の脊髄運動神経機能への影響について、統計学的検討と共に個別データにも着目し、F波を用いて脊髄運動神経機能の経時的変化について検討を行った。

【方法】

健常者20名に対し、安静状態でのF波を計測 (安静時)、続いて手太陰肺経の尺沢にASPT抑制手技を1分間実施しながらF波を計測した(ASPT時)。さらにASPT実施直後、5分後、10分後、15分後にもF波を記録した。F波計測にはViking Questを用い、最大上刺激の1.2倍強度にて左手関節部の正中神経を刺激し、左母指球上の筋群より記録した。刺激持続時間は0.2msとし0.5Hzの頻度にて30回刺激した。F波分析項目は出現頻度とした。ASPT手技は尺沢に対し5N/sの速さで垂直方向に疼痛閾値の圧刺激を与えた。疼痛閾値は組織硬度計/圧痛計にて尺沢へ痛みを感じる圧刺激を3度加えて測定し、その平均値をもって個人の疼痛閾値と設定した。統計学的検討はFriedman検定で各群間を比較し、その後Wilcoxonの符号順位検定で各群間を比較した後、Bonferroniの方法で補正を行った。有意水準は5%とした。

【結果】

統計学的検討において出現頻度は刺激時と比較して刺激直後、5分後、10分後、15分後にて低下した。個別データでは、出現頻度において、安静時と比較して刺激時に増加もしくは安静時と同様の値であった16名のうち、12名が刺激直後から低下しており、そのうち10名が5分後に安静時よりも低い値、もしくは同様の値まで低下、2名が刺激時よりは低下しているものの安静時より高い値を示した。一方で安静と比較して刺激時に低下した4名は共に、刺激直後に増加したものの5分後には安静時よりも低い値を示した。

【結論】

個別データでは、出現頻度において安静時と比較して5分後に低下する被検者が多くみられた。出現頻度は再発火する脊髄前角細胞数を反映していることから、尺沢へのASPT抑制手技は脊髄運動神経機能の興奮性を低下させる可能性が示唆された。また、本研究の結果から、臨床応用する際には刺激後5分程度経過した後に筋緊張が抑制されることを理解して治療を行う必要がある。しかし、出現頻度が低下するパターンは複数見られ、今後、異なったパターンが出現する条件について検討していく必要がある。

【倫理的配慮・説明と同意】

関西医療大学倫理審査委員会の承認(承認番号:19ー21)を得て実施し、対象者には本研究の意義、目的を充分に説明し、同意を得た。

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