[PG-20-01] 下腿三頭筋のストレッチによる筋組織酸素動態の変化について
【背景と目的】
近年では、ストレッチによる血行改善や筋血流減少による筋量維持の効果が注目されている。そこで我々は、筋の中でも下腿三頭筋のストレッチ(足関節最大背屈)による下肢の組織酸素血流動態の変化を検討していく。
【方法】
対象は、神経障害、下肢関節障害、心血管障害のない男性5名 女性5名 年齢21±1歳。また、測定前の過度な運動・飲酒は控えるよう指示した。
方法は、徒手による下腿三頭筋のストレッチ前後で組織酸素血流動態を比較した。測定は近赤外線組織酸素モニタ(NIRO-200NX)を用い、センサーを腓腹筋内側頭、ヒラメ筋に貼付し、組織酸素化指数(TOI)、酸素化ヘモグロビン変化量(O₂Hb)、脱酸素化ヘモグロビン変化量(HHb)を測定した。腹臥位で2分間安静測定を行い、その後2分間膝関節伸展位で足関節背屈ストレッチを行う。ストレッチの方法は腹臥位の状態で、足部をベッドから出し、踵骨を把持し足関節を背屈させる。ストレッチ後は3分間の安静計測も行う。統計解析は、フリー統計ソフトはEZR(バージョン4.0.0)を用い、比較検定はpaired t検定、Wilcoxon符号付順位和検定を行い、有意水準は5%とした。
【結果】
ストレッチ前後で有意差が見られた腓腹筋O2Hb前0.09±3.05μmol後-5.93±4.3μmolが低下(p<0.05)、腓腹筋c Hb前0.47±4.71μmol後-3.77±5.35μmolが低下していた(p<0.05)。腓腹筋TOI前75.69±4.53%後70.82±6.63%が低下していた(p<0.05)。つまり、腓腹筋TOIの低下はO2Hbが低下する虚血パターンであった。ヒラメ筋HHb前0.72±1.46μmol後1.33±1.86μmolが増加し(p<0.05)、ヒラメ筋TOI前73.38±4.59%後69.47±6.75%は低下していた(p<0.05)。ヒラメ筋TOIの低下はHHb上昇するうっ血パターンであった。また、ストレッチ回復前後では腓腹筋O2Hb前-5.93±4.31μmol後-0.42±2.77μmolが増加(p<0.05)、腓腹筋TOI前70.82±6.63%後75.13±4.96%増加していた(p<0.05)。つまり、腓腹筋TOIの増加はO2Hbが増加する充血パターンであった。
【結語】
膝伸展位での下腿三頭筋ストレッチによる筋組織酸素動態の変化について検討した。腓腹筋は筋線維に並走する腓腹動脈が伸張され血管が縮小するため虚血状態となり、ヒラメ筋では腓腹筋の伸張時筋硬化によりヒラメ筋周辺を走行する後脛骨静脈、腓骨静脈およびヒラメ静脈が圧迫されうっ血状態となった可能性が考えられる。また、ストレッチ後に腓腹筋の充血反応がみられることから、膝伸展位での下腿三頭筋ストレッチは腓腹筋の組織酸素動態を改善する可能性がある。
【倫理的配慮、説明と同意】
本研究はヘルシンキ宣言に基づき、対象者に研究の趣旨と内容を説明し、書面にて同意を得た。なお、本研究は森ノ宮医療大学研究倫理審査部会の承認を得て実施した(承認番号:2020-068)。
近年では、ストレッチによる血行改善や筋血流減少による筋量維持の効果が注目されている。そこで我々は、筋の中でも下腿三頭筋のストレッチ(足関節最大背屈)による下肢の組織酸素血流動態の変化を検討していく。
【方法】
対象は、神経障害、下肢関節障害、心血管障害のない男性5名 女性5名 年齢21±1歳。また、測定前の過度な運動・飲酒は控えるよう指示した。
方法は、徒手による下腿三頭筋のストレッチ前後で組織酸素血流動態を比較した。測定は近赤外線組織酸素モニタ(NIRO-200NX)を用い、センサーを腓腹筋内側頭、ヒラメ筋に貼付し、組織酸素化指数(TOI)、酸素化ヘモグロビン変化量(O₂Hb)、脱酸素化ヘモグロビン変化量(HHb)を測定した。腹臥位で2分間安静測定を行い、その後2分間膝関節伸展位で足関節背屈ストレッチを行う。ストレッチの方法は腹臥位の状態で、足部をベッドから出し、踵骨を把持し足関節を背屈させる。ストレッチ後は3分間の安静計測も行う。統計解析は、フリー統計ソフトはEZR(バージョン4.0.0)を用い、比較検定はpaired t検定、Wilcoxon符号付順位和検定を行い、有意水準は5%とした。
【結果】
ストレッチ前後で有意差が見られた腓腹筋O2Hb前0.09±3.05μmol後-5.93±4.3μmolが低下(p<0.05)、腓腹筋c Hb前0.47±4.71μmol後-3.77±5.35μmolが低下していた(p<0.05)。腓腹筋TOI前75.69±4.53%後70.82±6.63%が低下していた(p<0.05)。つまり、腓腹筋TOIの低下はO2Hbが低下する虚血パターンであった。ヒラメ筋HHb前0.72±1.46μmol後1.33±1.86μmolが増加し(p<0.05)、ヒラメ筋TOI前73.38±4.59%後69.47±6.75%は低下していた(p<0.05)。ヒラメ筋TOIの低下はHHb上昇するうっ血パターンであった。また、ストレッチ回復前後では腓腹筋O2Hb前-5.93±4.31μmol後-0.42±2.77μmolが増加(p<0.05)、腓腹筋TOI前70.82±6.63%後75.13±4.96%増加していた(p<0.05)。つまり、腓腹筋TOIの増加はO2Hbが増加する充血パターンであった。
【結語】
膝伸展位での下腿三頭筋ストレッチによる筋組織酸素動態の変化について検討した。腓腹筋は筋線維に並走する腓腹動脈が伸張され血管が縮小するため虚血状態となり、ヒラメ筋では腓腹筋の伸張時筋硬化によりヒラメ筋周辺を走行する後脛骨静脈、腓骨静脈およびヒラメ静脈が圧迫されうっ血状態となった可能性が考えられる。また、ストレッチ後に腓腹筋の充血反応がみられることから、膝伸展位での下腿三頭筋ストレッチは腓腹筋の組織酸素動態を改善する可能性がある。
【倫理的配慮、説明と同意】
本研究はヘルシンキ宣言に基づき、対象者に研究の趣旨と内容を説明し、書面にて同意を得た。なお、本研究は森ノ宮医療大学研究倫理審査部会の承認を得て実施した(承認番号:2020-068)。
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