第33回大阪府理学療法学術大会

講演情報

Webポスター

[PG-20] 卒業研究② PG-20 

2021年7月11日(日) 08:45 〜 15:30 Web Poster PG-20  (webポスター会場)

座長:福元 喜啓(関西医科大学)

[PG-20-02] 健常女性と女性持久走選手における近赤外分光法を用いた運動時骨格筋酸素化能の比較

*平井 沙弥1、中野 文香1、堀 竜次1 (1. 森ノ宮医療大学 )

【背景と目的】
呼吸循環器症例では骨格筋レベルにおいての代謝障害による運動耐容能の低下が示唆されている。スポーツ選手においても骨格筋への血液酸素運搬能が良好な運動能力の発揮に重要である。近年、近赤外分光法が運動時の局所血流量、酸素化動態を非侵襲的に測定することを可能となった。本研究では健常女性と女性持久走選手における運動時の筋肉の代謝動態と運動耐容能の反応について赤外線組織酸素モニタ装置を用いて検討し、その影響因子を明確にすることを目的とする。
【方法】
対象は呼吸器・循環器・運動器疾患のない健常女性11名(21.36±1.5歳)、女性持久走選手13名(20.31±1歳)であった。呼吸循環応答は、MINATO医科学社製呼気ガス分析装置AE-100iを用い測定した。運動負荷試験中の骨格筋代謝は浜松ホトニクス社製赤外線組織酸素モニタ装置(NIRO)を用いて左右の外側広筋部(大腿遠位1/3)の組織酸素化指標(TOI)を計測した。運動負荷試験は自転車エルゴメーターを用い、直線的漸増負荷法で行った。統計解析は統計解析ソフトEZR ver1.32を用い、健常女性と女性持久走選手の運動中のTOIの下降の傾き(TOI slope)とpeakVO2、PeakO2pulse、ΔHR/WRを比較した。比較検定はMann-Whitney U検定を用い、有意水準を5%とした。
【結果】
PeakVO2(mL/kg)[健常女性28.79±14.4、女性持久走選手42.54±19.9](p=0.0000152)とPeakO2pulse(mL/kg/bpm)[健常女性8.65±3.3、女性持久走選手13.44±4.9](p=0.000124)、ΔHR/WR(bpm/W)[健常女性64.13±32.8、女性持久走選手51.23±31.5](p=0.00915)と女性持久走選手ではpeakVO2、PeakO2pulseは高く、ΔHR/WRが低かった。また、左右の平均TOI slope(%/s)[健常女性-0.02645±0.0609、女性持久走選手-0.01335±0.029](P=0.00147)と女性持久走選手の方が緩やかであった。
【結語】
自転車エルゴメーター運動時の外側広筋の組織酸素血流動態と呼吸循環応答の関係について検討した。結果、健常女性と比較して女性持久走選手の外側広筋のTOI slopeの減少角度が緩やかであることが分かった。これは、PeakO2pulse(心拍出量)は女性持久走選手が健常女性よりも増大していることやΔHR/WR(心拍応答)は鈍く、女性持久走選手が徐脈で副交感神経の緊張が高いことが関与している可能性がある。つまり、女性持久走選手ではTOI slopeが緩やかなのは、心拍出量の増大とともに交感神経活性が健常女性よりも抑制され骨格筋の末梢血管の収縮が抑制されたためと推察する。
【倫理的配慮、説明と同意】
本研究はヘルシンキ宣言に基づき、対象者に研究の趣旨と内容を説明し、書面にて同意を得た。なお、本研究は森ノ宮医療大学研究倫理審査部会の承認を得て実施した(承認番号:2018-090)。

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