第33回大阪府理学療法学術大会

講演情報

Webポスター

[PG-20] 卒業研究② PG-20 

2021年7月11日(日) 08:45 〜 15:30 Web Poster PG-20  (webポスター会場)

座長:福元 喜啓(関西医科大学)

[PG-20-03] 振動刺激が関節角度の判断向上に及ぼす効果の検証

*雨田 真1、田中 久美子1、浜田 彩花1、美ノ本 夕菜1、山本 さわ1、金谷 規弘 1 (1. 大阪医療福祉専門学校 理学療法士学科)

【はじめに】振動刺激が身体にもたらす効果の一つとして,Goodwinら(1972)は,腱に振動刺激を与えることで運動錯覚が生じることを報告している.これをもとに神里ら(2018)は,振動刺激が膝関節角度の判断向上に有効であることが示唆されると報告している.しかし,その先行研究では,トルクマシーンを用いてベルト等で固定した状態で関節角度の測定を行っているため,圧覚が入力されており,それが結果に影響を及ぼしている可能性があると考えた.本研究は,神里らの研究をもとに,圧覚を除いた条件での振動刺激が肘関節角度の判断向上に有効であるかを検証した.

【対象および方法】対象は, 整形外科疾患と神経疾患を有していない本校学生30名(男性8名,女性22名,平均年齢20.6歲)で,無作為に15名ずつ振動群と対照群に割り付けた.両群とも目標角度である肘関節屈曲60°を記憶させた後,対象者が判断する目標角度を3回動画で撮影し,その後,振動群には上腕二頭筋筋腱移行部へ40秒間の振動刺激を行い,対照群には40秒間休憩をとらせ,再度両群の対象者が判断する目標角度を撮影した.角度は動画解析ソフト「Kinovea」を用いて後に算出した.振動刺激には家庭用ハンディマッサージャー(スライブ株式会社製,THRIVE MD-01)を使用し,91.7Hzで刺激した.刺激後,対象者に対して運動錯覚が生じたか口頭で質問した.分析には,目標角度と対象者が判断した角度との誤差角度(絶対値)3回の平均値を用いた.得られた群のデータの正規性はコルモゴロフ・スミルノフ検定を行い,①A振動群介入前-B対照群休憩前,②B対照群休憩前-C対照群休憩後,③A振動群介入前-D振動群介入後,④C対照群休憩後-D振動群介入後の4組に分け,①はスチューデントのt検定,②は対応のあるt検定,③はウィルコクソンの符号付順位和検定,④はマンホイットニーのU検定を用い統計検定を行った.全ての有意水準は5%とした.

【倫理的配慮】対象者には書面と口頭で同意を得,大阪医療福祉専門学校の研究倫理審査委員会の承認を得て研究を行った(承認番号:大医福第19-教-56号).

【結果】各群3回の誤差角度(絶対値)の平均値±標準偏差は,A:9.64±6.51,B:8.22±4.36,C:7.24±5.66,D:5.53±5.60,4組の統計解析の結果①はp=0.488,②はp=0.423,③はp=0.023,④はp=0.213であった.振動刺激時に運動錯覚を生じた対象者は一人もいなかった.

【考察】振動群の介入前後の比較では有意差が認められたが,振動群介入後と対照群休憩後では有意差が認められなかった.また,本研究では関節が伸びたと錯覚した対象者は一人もいなかったため,運動錯覚が生じず期待された結果が得られなかったと考える.今後の課題として,振動刺激時の圧を0.3Nで実施することにより錯覚が得られやすいという報告を研究デザインに加え,振動圧を統一して運動錯覚を生じさせ,振動刺激が関節角度の判断向上に有効であるか,再度検証していきたい.

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