第33回大阪府理学療法学術大会

講演情報

Webポスター

[PR-17] 査読者推薦演題②(症例報告)PR-17

2021年7月11日(日) 08:45 〜 15:30 Web Poster:PR-17 (webポスター会場)

座長:鯨津 吾一(大阪府済生会茨木病院)

[PR-17-04] 心不全患者に対し運動療法と栄養管理を多職種間で行い自宅退院となった一症例

*渡辺 彩1、横山 遥香1、松山 博文1 (1. 市立池田病院)

【症例紹介】
本症例は呼吸困難を主訴にX日に当院を救急受診、亜急性心筋梗塞によるうっ血性心不全と診断され集中治療室(以下、ICU)に入室となった80歳代男性である。既往歴は下壁陳旧性心筋梗塞(PCI後)、慢性腎不全、肺線維症であり入院前のADLは全自立レベルだった。
【評価とリーズニング】
ICU入室時は身長175.0cm、体重66.6kg、BMI21.5、NYHA分類Ⅲ、CS2であった。心電図は異常Q波、軽度のST上昇、陰性T波、心エコーはvisual EF30 %前後、前壁側mid-apexに壁運動異常を認めた。血液所見はNT-proBNP 35000pg/mL以上、hsTnI 31166.9 pg/mL、CK 750U/L、Alb3.5g/dLであった。CPAPを装着し利尿剤と硝酸薬が開始され、同日の夕食から心臓食(1700kcal、塩分3~5g程度、蛋白質65g)が開始となった。うっ血症状は徐々に改善しX+4日にCPAPを離脱、翌日に鼻カヌラとなりX+6日からリハビリテーション(以下、リハビリ)を開始した。介入当初から起立性低血圧の影響で積極的な離床が行えず、初期評価ではBI 45点、日常生活動作は軽介助レベル、MMT3~4レベルであった。一般病棟へ転棟後リハビリ室で離床を進め、X+11日に室内気に変更、連続歩行距離は3mであり耐久性が低かった。加えて食事摂食量が3割と食欲不振の状態が数日間続き、エネルギー摂取の不足に関しても多職種間で問題視された。
【介入と結果】
介入当初から筋力強化練習や起居動作練習を行い、リハビリ室でADL練習や運動療法として有酸素運動、レジスタンストレーニング(以下、RT)を土肥・アンダーソンの基準を順守し、本人の自覚症状やモニター管理の下実施した。徐々にセット数や連続運動時間を増やして実施し、RTではリモデリングに注意を払うために高負荷の運動は避けて行った。同時に食欲不振による低栄養状態の改善を図るために病棟看護師や医師、NSTの介入も加え心臓食からライト食(1000kcal、塩分5g程度、蛋白質35g)に変更した。すると摂食量は8~10割に増加し、腎機能や心機能の増悪なく身体機能の向上に繋がった。最終評価ではBI 95点、日常生活動作は見守りレベル、MMT4~4⁺レベル、6分間歩行試験は杖歩行135mと延長した。心機能ではNT-proBNP 2659pg/mL と改善、X+32日にLADに対しPCIを施行しvisual EF40%となりX+36日に自宅退院となった。
【結論】
心不全では低栄養もしくは低栄養のリスクを有する患者が多く、心臓リハビリにおいて栄養は有効な運動療法を行うためには不可欠なものといわれている。今回、重症心不全患者に対し運動療法による効果と、食事区分の変更により低栄養状態の悪化を防ぎ、栄養管理を多職種で連携して行ったことで、ADL向上に繋がったと考える。
【倫理的配慮、説明と同意】
発表に際しヘルシンキ宣言に基づいて、本症例に趣旨を十分に説明し書面にて同意を得た。

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