10:35 〜 10:45
[WO-2-01] TKA術後にPT拒否があった高齢認知症患者に対し、環境面に介入した一症例
【症例紹介】
施設入所中の90代女性、両側変形性膝関節症に対し右TKAを施行された。性格は頑固で短気、既往に認知症があった。術前は軽介助で短距離杖歩行が可能であったが、非実用的で車椅子での移動が中心であった。家族は施設への退院を希望していた。
術前から興奮しやすく看護ケアを拒否する事があった。術後は興奮、易怒状態の頻度が高く暴言や暴力、拒薬、PT拒否がみられた。また夜間不穏傾向で、尿意で何度も覚醒しベッドサイドで転倒する事があった。
【評価とリーズニング】
術翌日からPT処方されたが、拒否により積極的な介入が行えなかった。術後7日目の主訴は荷重痛で、安静時NRS4の訴え、ROM膝関節屈曲90°、伸展-10°であった。認知症検査は拒否され実施不可であった。移乗は全介助で、立位、歩行練習は疼痛増強のため困難であった。
術後は術前よりも更に興奮、易怒状態に陥りやすく、看護ケア、PT拒否が続き、治療的介入が困難であった。本症例は高齢認知症患者であり術後せん妄合併リスクは高い状態であると考えられた。布村らは、せん妄の治療は環境や全身状態の改善をはかりながら薬剤治療を考慮することが必要であると述べている。本症例でも認知症チームと連携し薬剤治療や環境調整を行い、担当PTとして特に環境面への介入を行った。本症例はトイレに行こうと立ち上がった際に転倒するなど、自発的な行動が多かったことから、疼痛減少に応じ活動量の向上が可能ではないかと予測した。
【介入と結果】
PT時間の調整をし、興奮状態を招かないよう離床を促した。PT内でも排泄などの欲求に対応する様にし、不快感による興奮状態へ陥らぬように努めた。また、ROM練習は疼痛を惹起しないよう愛護的に行った。
術後5日で暴言、暴力は減少した。しかし、帰宅願望が強くなり昼夜ともに不穏、徘徊がみられた。術後8日に長期入院は望ましくない事を医師が家族へ説明し、家族の希望から早期の自宅退院が目標となった。術後13日に医師、看護師、PT、家族で自宅環境、サービスの検討、調整を行った。
術後14日の最終評価で、主訴は荷重痛、安静時痛はNRS4と変化なく、ROM屈曲105°、伸展-5°であった。認知症検査は実施可能となり、HDS-Rは3点であった。移乗は環境調整し殿部介助で可能となった。疼痛訴えがある中でもPT拒否は減少し動作練習が可能となり立位保持は両上肢支持で短時間可能、歩行器で歩行練習が可能となったが、病棟生活では不穏状態が続いていた。術後17日に自宅環境が整ったため、車椅子移動レベルで早期自宅退院となった。
【結論】
攻撃的でPT拒否のある高齢認知症患者に対し、環境面を配慮する事で興奮状態へ陥ることを避け、活動量を上げる事が出来たと考える。しかし、病棟生活では不穏状態が続いており、入院期間の延長は認知症の悪化や、症例にかかるストレスが強く、転倒を繰り返す危険性も予想された。そのため医療スタッフや家族と連携し早期自宅退院の運びとなった。
【倫理的配慮、説明と同意】
本発表は当院倫理委員会にて承認を得ている。(承認番号HG-IRB2118)
施設入所中の90代女性、両側変形性膝関節症に対し右TKAを施行された。性格は頑固で短気、既往に認知症があった。術前は軽介助で短距離杖歩行が可能であったが、非実用的で車椅子での移動が中心であった。家族は施設への退院を希望していた。
術前から興奮しやすく看護ケアを拒否する事があった。術後は興奮、易怒状態の頻度が高く暴言や暴力、拒薬、PT拒否がみられた。また夜間不穏傾向で、尿意で何度も覚醒しベッドサイドで転倒する事があった。
【評価とリーズニング】
術翌日からPT処方されたが、拒否により積極的な介入が行えなかった。術後7日目の主訴は荷重痛で、安静時NRS4の訴え、ROM膝関節屈曲90°、伸展-10°であった。認知症検査は拒否され実施不可であった。移乗は全介助で、立位、歩行練習は疼痛増強のため困難であった。
術後は術前よりも更に興奮、易怒状態に陥りやすく、看護ケア、PT拒否が続き、治療的介入が困難であった。本症例は高齢認知症患者であり術後せん妄合併リスクは高い状態であると考えられた。布村らは、せん妄の治療は環境や全身状態の改善をはかりながら薬剤治療を考慮することが必要であると述べている。本症例でも認知症チームと連携し薬剤治療や環境調整を行い、担当PTとして特に環境面への介入を行った。本症例はトイレに行こうと立ち上がった際に転倒するなど、自発的な行動が多かったことから、疼痛減少に応じ活動量の向上が可能ではないかと予測した。
【介入と結果】
PT時間の調整をし、興奮状態を招かないよう離床を促した。PT内でも排泄などの欲求に対応する様にし、不快感による興奮状態へ陥らぬように努めた。また、ROM練習は疼痛を惹起しないよう愛護的に行った。
術後5日で暴言、暴力は減少した。しかし、帰宅願望が強くなり昼夜ともに不穏、徘徊がみられた。術後8日に長期入院は望ましくない事を医師が家族へ説明し、家族の希望から早期の自宅退院が目標となった。術後13日に医師、看護師、PT、家族で自宅環境、サービスの検討、調整を行った。
術後14日の最終評価で、主訴は荷重痛、安静時痛はNRS4と変化なく、ROM屈曲105°、伸展-5°であった。認知症検査は実施可能となり、HDS-Rは3点であった。移乗は環境調整し殿部介助で可能となった。疼痛訴えがある中でもPT拒否は減少し動作練習が可能となり立位保持は両上肢支持で短時間可能、歩行器で歩行練習が可能となったが、病棟生活では不穏状態が続いていた。術後17日に自宅環境が整ったため、車椅子移動レベルで早期自宅退院となった。
【結論】
攻撃的でPT拒否のある高齢認知症患者に対し、環境面を配慮する事で興奮状態へ陥ることを避け、活動量を上げる事が出来たと考える。しかし、病棟生活では不穏状態が続いており、入院期間の延長は認知症の悪化や、症例にかかるストレスが強く、転倒を繰り返す危険性も予想された。そのため医療スタッフや家族と連携し早期自宅退院の運びとなった。
【倫理的配慮、説明と同意】
本発表は当院倫理委員会にて承認を得ている。(承認番号HG-IRB2118)
要旨・抄録、PDFの閲覧には参加者用アカウントでのログインが必要です。参加者ログイン後に閲覧・ダウンロードできます。
» 参加者用ログイン