第33回大阪府理学療法学術大会

Presentation information

oral session

[WO-2] WO-2

Sun. Jul 11, 2021 10:35 AM - 11:25 AM web会場②(ウェビナー1000名) (web会場②)

座長:山野 宏章(大阪行岡医療大学)

11:05 AM - 11:15 AM

[WO-2-04] 早期離床及び動作分析に基づく運動療法を実施した重症くも膜下出血患者の一症例

*麻生 莉沙1、團野 祐輔1、山田 賢一1、喜多 孝昭1、鈴木 俊明2 (1. 守口生野記念病院、2. 関西医療大学大学院)

【症例紹介】
 本症例は,Sylvian Hematomaを伴う右中大脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血(WFNS分類Ⅴ,Hunt&Kosnik分類Ⅴ,Fisher分類3)と診断された50歳代前半の女性である.入浴後より頭痛,浮動性眩暈が出現し,嘔吐したため救急要請.救急車内で意識レベル低下し, JCS300,一時的にJCS2桁に改善するも,当院到着時JCS200.上記診断にて,翌日,開頭クリッピング術施行となった.
【評価とリーズニング】
 術後2日目,ICUでの初期評価時は,SIAS67点,FAC0,FIM63(運動39,認知24)点.JCS1と覚醒レベル良好,呼吸循環動態も安定しており,人工呼吸器離脱.脳室ドレーンも抜去された.主治医からの安静度はフリーとなり,バイタルサインの変動と症候性脳血管攣縮の発生に注意しながら,早期離床可能と考えた.
 術後14日目,一般病棟転棟後の中間評価時は,SIAS74点,FAC2,FIM95(運動60,認知35)点,BBS45点,10m歩行8.9秒,TUG11.1秒.歩行観察では,左立脚期初期から中期にかけて,左足部全体と下腿が一体となって下腿外側傾斜が生じ,同時に体幹左側屈がみられ,左方向への不安定性が生じていた.不安定性が生じた要因として,本来であれば,左足部回内による下腿外側傾斜が生じるが,本症例では,左足部全体と下腿が一体となって外側傾斜が生じ,胸腰椎移行部で左側屈が生じることで左方向への不安定性が生じていると考えた.筋緊張検査より左後脛骨筋筋緊張亢進,左長短腓骨筋筋緊張低下,左腸肋筋筋緊張亢進,左最長筋筋緊張亢進,左外腹斜筋筋緊張亢進を認めた.
【介入と結果】
 術後2日目から13日目までのICU在室中は,術後2日目から端座位,術後3日目から立位,術後6日目から歩行練習を開始し,バイタルサインの変動と症候性脳血管攣縮の発生に注意しながら,早期に離床練習を実施した.
 術後14日目から20日目までの一般病棟転棟後は,左後脛骨筋のストレッチ,左足関節外がえし自動運動,端座位での側方リーチ動作,歩行練習を実施した.
 術後21日目,SIAS74点,FAC4,FIM121(運動86,認知35)点,BBS53点,10m歩行6.9秒,TUG8.6秒,mRS2となり早期に自宅復帰となった.
【結論】
 くも膜下出血患者に対する早期離床の安全性及び効果に関する報告は増えているが,重症例及びSylvian Hematomaを伴うくも膜下出血患者に関する報告はまだ少ない.今回,Sylvian Hematomaを伴う重症くも膜下出血患者に対し,ICUでの早期離床及び動作分析に基づく運動療法を行った結果,歩行の自立度及び実用性の向上,早期の自宅復帰が可能であった.重症くも膜下出血患者に対する早期離床は,重症度よりも術後の覚醒レベルや全身状態を考慮すること,また早期に離床するだけでなく,個別的な運動療法を加えて実施することの重要性が示唆された.
【倫理的配慮・説明と同意】
 対象者には,口頭にて説明し書面にて同意を得た.本発表は当院倫理委員会にて了承を得た.

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