第33回大阪府理学療法学術大会

Presentation information

oral session

[WO-2] WO-2

Sun. Jul 11, 2021 10:35 AM - 11:25 AM web会場②(ウェビナー1000名) (web会場②)

座長:山野 宏章(大阪行岡医療大学)

10:55 AM - 11:05 AM

[WO-2-03] 疼痛により生じた破局的思考の改善を目標とした一症例

*森 亘輝1、松本 凱貴1 (1. 永山病院)

【症例紹介】
 今回、L4・5間の腰部脊柱管狭窄症(lumbar spinal stenosis:以下,LSS)を発症し、後方椎体固定術後の一症例を担当した。術前からNRS10の疼痛により体動困難であり、術後も最大NRS8の疼痛を認めたことで破局的思考に陥っていた。
 症例は60歳代後半の女性。疼痛により体動困難となりY月Z-5日当院へ入院。術前より疼痛が強く体動不可であった。術後も疼痛は軽減するが依然として疼痛が強く、歩けるようになるか、入院前の生活に戻れるか等の不安を強く認めていた。主訴は痛い、HOPEは痛みをなくしたいでありNEEDを除痛とした。
【評価とリーズニング】
 術後1日目は左殿部~左足尖に最大NRS8の疼痛、足部周囲に痺れを認めた。SF-MPQ-2:123/220 mGES:10/100 PCS:38/52 Freiberg test(+)Bragard test(+)SLR(-)縫工筋の収縮時にのみ疼痛増悪あり。
 以上より、縫工筋腱貫通部での伏在神経の絞扼・LSSによる末梢神経痛・LSS及び梨状筋症候群による坐骨神経痛により破局的思考に陥っていると考えた。
 術後10日目の評価では、左殿部~左足尖に最大NRS5の疼痛、足部周囲の痺れあり。SF-MPQ-2:24/220 mGES:48/100 PCS:30/52 Freiberg test(+)Bragard test(+)縫工筋の収縮時痛なし。
 疼痛は全体的に軽減を認め、HOPEは家に帰りたいに変わり、NEEDを除痛・独歩の耐久性向上とした。
【介入と結果】
 術後1日目~10日目までは、LSSによる疼痛により全身の筋緊張亢進が生じ、発痛・筋緊張亢進を繰り返し破局的思考に陥ったと考え、初期はストレッチなどの除痛とラポールの形成に努め、疼痛の軽減と共に筋力増強練習や動作練習で成功体験を与えることに注力した。術後10日目以降は、歩行に対する理学療法を追加した。
 術後28日目の評価では、左足関節周囲にNRS1の疼痛、痺れあり。SF-MPQ-2:11/220 mGES:97/100 PCS:15/52 Freiberg test(-)Bragard test(-)
【結論】
 最終評価では、足部周囲以外の疼痛は消失し各評価項目も改善傾向であった。破局的思考も大幅な軽減を認め、本人からも歩行や退院に対して不安はないと発言が見られた。よって、破局的思考の改善段階での対峙から回復の過程にあると考えた。足部周囲の疼痛と痺れの残存に関してはLSSによる末梢神経障害によるものと考え、退院後の経過につれ改善していくと考えた。
 本症例に対し、術後早期から疼痛の軽減と破局的思考に対しアプローチを行った。結果、退院前は神経根症状以外の疼痛は消失し、破局的思考も大きく改善を示した。
【倫理的配慮、説明と同意】
 本症例に対し報告の目的と趣旨および個人情報の取り扱いについて口頭および書面にて説明し同意を得た。

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