12:05 〜 12:15
[WO-4-03] COVID-19による回復期リハビリテーション病棟封鎖にて廃用症候群が進行した一例を経験して
【症例紹介】
92歳女性。X-49日に右放線冠ラクナ梗塞と診断されX-29日に当院入院。X-7日に急性胆嚢炎で急性期病院転院。X日に当院再入院。既往歴に高血圧症。病前の日常生活は入浴以外自立しており、屋内は伝い歩き、屋外はバギー歩行にて自立。要介護4。高齢の妹と2人暮らし。自宅復帰を希望。
【評価とリーズニング】
X日HDS-R:27点。ブルンストロームステージ:麻痺側上下肢ともにⅥ。偽痛風疑いによる両膝関節痛と腫脹あり。FIM:81点(運動57点、認知24点)。移乗は軽介助。移動は車いすにて駆動介助。歩行は伝い歩き軽介助。自宅復帰を目標とし、屋内伝い歩きとバギー歩行の獲得を目指した。
【介入と結果】
X+30日より移乗が見守りで可能となり、病棟内バギー歩行が見守りで可能となった。退院前訪問指導にて、動線と環境の確認を行った上でX+90日頃を退院予定とし、調整を進めていた。しかし、X+66日目に同病棟入院患者からCOVID-19陽性者が判明したことで病棟封鎖となり、保健所の指示で当該病棟の患者すべての理学療法・作業療法・言語聴覚療法も全面中止となった。また、本症例は濃厚接触者となり看護師以外の接触は不可となった為、廃用症候群の予防目的にトイレ誘導をバギー歩行で行うよう看護師に依頼した。封鎖解除後のFIMは清拭、浴槽移乗、移動の項目が減点(合計73点 運動50点、認知23点)し移動は歩行から車いすが中心となった。X+97日目(封鎖後24日目)に理学療法・作業療法を再開したが、封鎖前のように歩行は見守りで行えなかった。そこで現在のしている・できるADLをチームで再確認し、目標を再考した。結果、自宅内は車いす生活と結論に至り、治療・家族指導の見直しを行った。退院前に院内のチームスタッフ、家族、訪問診療医、訪問看護師・理学療法士、ケアマネジャー等とオンライン上で合同カンファレンスを行い、患者情報の共有や退院後のフォローアップの体制を整えた。結果X+117日に自宅退院に至った。
【結論】
COVID-19陽性者の発生後、病棟封鎖を経て自宅退院に至った一例を経験した。封鎖病棟の患者は行動範囲が制限され、廃用症候群の進行とともにADLの低下が懸念される。さらに本症例は濃厚接触者としての扱いであったこともあり、より廃用症候群が進行しやすい状況であったと考えられる。本症例との関わりの中で、感染制御を優先すべき状況で密な対応が困難であっても、看護師と協働し廃用症候群の予防を病棟生活の中でいかに実践できるかが重要であると感じた。そのために、平時より患者のしている・できる能力を共有、自主練習などの病棟課題を看護師と密に連携する必要性を改めて認識した。加えて、封鎖解除後はチームとして第一に心身機能やADLの再評価を行い、状況変化に応じて目標の再考や治療課題の見直しを図っていく必要があると考える。
【倫理的配慮、説明と同意】
当院の倫理審査委員会の承認を得た(2020-28)。
92歳女性。X-49日に右放線冠ラクナ梗塞と診断されX-29日に当院入院。X-7日に急性胆嚢炎で急性期病院転院。X日に当院再入院。既往歴に高血圧症。病前の日常生活は入浴以外自立しており、屋内は伝い歩き、屋外はバギー歩行にて自立。要介護4。高齢の妹と2人暮らし。自宅復帰を希望。
【評価とリーズニング】
X日HDS-R:27点。ブルンストロームステージ:麻痺側上下肢ともにⅥ。偽痛風疑いによる両膝関節痛と腫脹あり。FIM:81点(運動57点、認知24点)。移乗は軽介助。移動は車いすにて駆動介助。歩行は伝い歩き軽介助。自宅復帰を目標とし、屋内伝い歩きとバギー歩行の獲得を目指した。
【介入と結果】
X+30日より移乗が見守りで可能となり、病棟内バギー歩行が見守りで可能となった。退院前訪問指導にて、動線と環境の確認を行った上でX+90日頃を退院予定とし、調整を進めていた。しかし、X+66日目に同病棟入院患者からCOVID-19陽性者が判明したことで病棟封鎖となり、保健所の指示で当該病棟の患者すべての理学療法・作業療法・言語聴覚療法も全面中止となった。また、本症例は濃厚接触者となり看護師以外の接触は不可となった為、廃用症候群の予防目的にトイレ誘導をバギー歩行で行うよう看護師に依頼した。封鎖解除後のFIMは清拭、浴槽移乗、移動の項目が減点(合計73点 運動50点、認知23点)し移動は歩行から車いすが中心となった。X+97日目(封鎖後24日目)に理学療法・作業療法を再開したが、封鎖前のように歩行は見守りで行えなかった。そこで現在のしている・できるADLをチームで再確認し、目標を再考した。結果、自宅内は車いす生活と結論に至り、治療・家族指導の見直しを行った。退院前に院内のチームスタッフ、家族、訪問診療医、訪問看護師・理学療法士、ケアマネジャー等とオンライン上で合同カンファレンスを行い、患者情報の共有や退院後のフォローアップの体制を整えた。結果X+117日に自宅退院に至った。
【結論】
COVID-19陽性者の発生後、病棟封鎖を経て自宅退院に至った一例を経験した。封鎖病棟の患者は行動範囲が制限され、廃用症候群の進行とともにADLの低下が懸念される。さらに本症例は濃厚接触者としての扱いであったこともあり、より廃用症候群が進行しやすい状況であったと考えられる。本症例との関わりの中で、感染制御を優先すべき状況で密な対応が困難であっても、看護師と協働し廃用症候群の予防を病棟生活の中でいかに実践できるかが重要であると感じた。そのために、平時より患者のしている・できる能力を共有、自主練習などの病棟課題を看護師と密に連携する必要性を改めて認識した。加えて、封鎖解除後はチームとして第一に心身機能やADLの再評価を行い、状況変化に応じて目標の再考や治療課題の見直しを図っていく必要があると考える。
【倫理的配慮、説明と同意】
当院の倫理審査委員会の承認を得た(2020-28)。
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