第33回大阪府理学療法学術大会

講演情報

オーラルセッション

[WO-4] Covid-19 WO-4

2021年7月11日(日) 11:45 〜 12:25 web会場②(ウェビナー1000名) (web会場②)

座長:大野 直紀(りんくう総合医療センター)

12:15 〜 12:25

[WO-4-04] 新型コロナウィルス感染症対策下にオンライン家族指導を実施した一例~リハ分野でのICT活用の可能性~

*澤井 康平1,2、大門 恭平1,2 (1. 岸和田リハビリテーション病院 リハビリテーションセンター、2. 岸和田リハビリテーション病院 脳卒中リハビリテーション研究所)

【症例紹介】回復期リハビリテーション(リハ)病院では、リハ見学による家族への情報提供や介助指導、退院前訪問指導が勧められている。しかし、COVID-19の影響で、当院でも面会や退院前訪問指導が制限され、入院患者・家族・療法士間で連携する機会が減少した。対応策にICT活用が推奨されているが、家族の高齢化や操作性が問題で、現場では実施可能な症例が限られている。その中で、ビデオ通話によるオンライン家族指導を実施し、自宅退院に至った症例を経験したので、その可能性について報告する。症例は、腰痛と発熱で受診し、腸腰筋膿瘍後の廃用症候群と診断され、当院回復期リハ病院へ転院となった82歳女性。入院時MMSEは25点、FIMは運動19点、認知27点で食事を除いたADLは重度介助であった。
【評価とリーズニング】息子夫婦と同居し、入院前ADLは屋内独歩で日常生活は自立。入院49日目、病前までの回復は困難と予測され家族面談を実施。この時点で、歩行器歩行は介助で10m、院内は車椅子移動、トイレは下衣操作に全介助を要し、FIM運動41点、認知34点であった。家族の希望は「トイレが一人でできなければ自宅に帰ることは難しい」、面会禁止のため「実際どこまで動けるのかわからない」とのことで、施設入所も考えたいとの意向であった。以上より、今後のリハ目標を自宅復帰に必須となるトイレ自立を挙げ、ビデオ通話で経過報告・家族指導を実施した。使用アプリはZoom、端末は療法士・家族ともにiPadを用いた。家族はZoomの使用経験がなかったため、事前に操作方法の説明を行った。退院後、家族にオンライン家族指導に関するアンケート(患者の動作能力を理解できたか、満足度、退院後に困ったことなど)を実施した。
【介入と結果】入院56日目、1回目のビデオ通話を実施。リハ場面を見てもらい、家族から「思った以上に動けていたので、2週間後にもう一度見せて欲しい」とポジティブな反応であった。入院72日目、2回目のビデオ通話では自宅環境を想定した動作の注意点を伝えた。また、家族には自宅環境の動画撮影を依頼し、互いの画面で共有した。そこで、患者・家族・療法士間で自宅生活のイメージの共有や環境設定を提案し、退院後の歩行補助具の必要性も理解された。退院時ADLはトイレ動作・屋内歩行器歩行を獲得でき、FIM運動64点、認知34点で自宅退院が可能となった。ICTの活用に関して、2度のビデオ通話を実施し、接続は問題なく行えた。退院後のアンケートでは、「患者の状態・能力が理解できた」、「とても満足」と良好な結果であった。
【結論】COVID-19の影響がある中、オンライン家族指導は患者・家族・療法士間でリアルタイムに情報共有でき、目標や治療方針を意思決定していく上で有用となる可能性がある。今後、現場でICTがさらに普及するためには、高齢世帯でも使用できる簡易アプリの開発や、効果的な活用方法を見出すことが必要であると考える。
【倫理的配慮、説明と同意】ヘルシンキ宣言に基づき、今回の発表に関して本人・家族に説明し同意を得た。

要旨・抄録、PDFの閲覧には参加者用アカウントでのログインが必要です。参加者ログイン後に閲覧・ダウンロードできます。
» 参加者用ログイン