第34回大阪府理学療法学術大会

講演情報

口述 一般演題

事前公開

[O-01] 一般演題(運動器①)

2022年7月3日(日) 12:35 〜 13:20 会場3 (10階 1008会議室)

座長:乾 哲也(千里リハビリテーション病院)

12:55 〜 13:05

[O-01-3] 左上腕骨近位端骨折術後3ヶ月半にて肩関節3rd外旋可動域に再着目した一症例

井上 奈々, 法所 遼汰, 安田 真幸 (おおさかグローバル整形外科病院リハビリテーション科)

キーワード:他動運動、上肢挙上動作

【症例紹介】
 症例は70歳代の女性、診断名は左上腕骨近位端骨折で髄内釘固定術を施行された。受傷機転はバイクの方向転換時に左側へ転倒された。受傷時の画像では2part骨折と大結節骨折を認めた。術後3ヶ月半での主訴は左手が上がり難い、ニードは左上肢挙上動作獲得とした。
【評価とリーズニング】
 理学療法は術後2週までは三角巾固定・振り子運動・患部外運動を実施、術後2週から安静度は制限なく関節可動域練習を開始した。術後8週の評価にて、ROM(自動/他動、単位:°)は左肩関節屈曲100/120、1st外旋10/15、ADLは自立し介護職の復帰が可能となった。その後、肩関節周囲の関節可動域練習、筋力強化練習を継続して実施したが左上肢挙上動作の改善は停滞した。
 術後3ヵ月半のROMは左肩関節屈曲115/125、外転80/85、1st外旋20/25、水平内転90/90、3rd外旋45、MMTは左肩関節屈曲3、外転・外旋・内旋2であった。自動挙上動作は、肩関節外転・内旋を伴いながら屈曲し、屈曲45°から肩甲骨挙上・骨頭前上方変位を認めた。他動屈曲の最終域でも同様の代償を認め、日常生活においても挙上位での制限が主要な問題であると考えた。そのため問題点は肩甲上腕関節の可動性低下を挙げ、その要因として他動での左肩関節屈曲・水平内転・3rd外旋可動域制限を考えた。
【介入と結果】
 治療では、まず肩関節周囲筋(大胸筋、三角筋中部線維、上腕二頭筋、僧帽筋上部線維)のリラクゼーション、水平内転方向へのストレッチングにより後方関節包の柔軟性改善を図った。次に肩関節屈曲と3rd外旋の可動域改善を目的として、大円筋・広背筋に対してダイレクトストレッチング、持続伸張を行った。さらに肩甲上腕関節のモビライゼーション・ホールドリラックスを実施後、最後は持続伸張により可動域改善を図った。他動での可動域が向上した後、腱板トレーニングを実施した。
 術後約5ヵ月のROMは左肩関節屈曲130/140、外転95/100、1st外旋20/25、水平内転90/90、3rd外旋70、MMTは左肩関節屈曲4、外転3、外旋・内旋は2であった。他動での左肩関節屈曲・3rd外旋の可動域向上を認め、自動挙上は90°まで肩甲骨挙上・骨頭前上方変位の代償動作の軽減を認めた。
【結論】
 症例は術後3ヵ月半まで他動での肩関節屈曲可動域が低下していたが、3rd外旋を含む肩甲上腕関節の治療方法を再考した結果、他動の肩関節屈曲可動域向上を認めた。豊田らは健常成人の3rd外旋可動域は105°と報告しており、症例は術後3ヵ月半で45°と著明な制限を認めた。今回の結果から、3rd外旋の可動域が他動での屈曲可動域に影響を与えている可能性が示唆された。しかし、自動挙上角度はまだ制限されていることから、継続して腱板トレーニングを実施していく必要があると考える。