第34回大阪府理学療法学術大会

講演情報

口述 一般演題

事前公開

[O-01] 一般演題(運動器①)

2022年7月3日(日) 12:35 〜 13:20 会場3 (10階 1008会議室)

座長:乾 哲也(千里リハビリテーション病院)

12:45 〜 12:55

[O-01-2] 運動恐怖を生じた関節鏡視下腱板修復術後患者に対して患者教育を行った一症例 ~「痛み-行動日誌」を用いて~

氏家 琴音, 清水 凱斗, 千葉 一貴, 永富 孝幸 (JCHO星ヶ丘医療センターリハビリテーション部)

キーワード:関節鏡視下腱板修復術、運動恐怖

【症例紹介】】50歳代の女性。転倒して両手を着き受傷し、前医で保存的治療行うも疼痛残存し当院受診された。棘上筋の肩峰下滑液包側部分断裂と診断を受け、関節鏡視下腱板修復術を施行された。後療法は外転装具装着し、術翌日より自動介助運動開始、術後8週で臥位での自動運動、術後12週で完全装具除去し、自動運動開始となった。しかし、術直後から運動恐怖の訴えが持続して生じており、自動運動が許可された術後12週においても運動に対する恐怖感は残存していた。
本発表は術後12週から術後24週までにおいて、運動恐怖に着目し介入した症例について経過を報告する。

【評価とリーズニング】術後12週、自動運動での肩関節屈曲(Ele)は60°、下垂位外旋(ER)は-15°、C7-thumb distance(CTD)は49㎝、痛みは夜間時に強く出現しており、Numerical Rating Scale(NRS)は6であった。また装具除去後も自己にて肩関節屈曲内旋肢位を保持している状況であった。「装具が無いと不安」といった発言がみられ自動運動に対しても「再度断裂しそうで怖い」などの発言が度々あり、日常生活での使用について不安な訴えが強くみられた。心理的要因の評価で痛みの破局的思考のPain Catastrophizing Scale 日本語版(PCS)(松岡ら,2007)と不安回避思考の評価として日本語版Tampa Scale for Kinesiophobia  (TSK-J)(松平ら,2013)が挙げられている。PCSは20点でカットオフ値を下回る結果(Michael,2009)であった。TSK-Jは40点とカットオフ値を上回る結果(Kikuchi,2015)となり、運動恐怖があると考えられる。以上のことから、運動恐怖が原因により関節可動域の改善が図れず、日常生活での使用が進まないのではないかと考えた。

【介入と結果】運動恐怖を有する患者には、患者自身が痛みに対する不安を解消できる十分な説明・教育が必要とされている。その手段として「痛み-行動日誌」(松原ら,2015)が挙げられており、術後15週から「痛み-行動日誌」を用いて、毎日の痛みの程度や活動量、イベントなどを記載した紙を提出してもらい、その都度フィードバックを実施した。イベントに関しては、動作に対する消極的な記載だけでなく、可能になった動作などを記載して頂いた。
肩関節周囲筋と肩甲骨周囲筋のリラクゼーション、関節可動域練習の実施、自主練習の指導は継続して実施した。
術後24週のEleは120°、ERは25°、CTDは42㎝と可動域の改善を認めた。またNRSは0であった。さらに「痛みがほとんどない」や「洗濯物が干せるようになった」といった発言があり、家事動作全般を痛みなく行え、日常生活での使用が可能となった。しかしPCSは24点、TSK-Jは41点とあまり変化は認めなかった。
【結論】術後24週時点で肩関節の可動域の向上、日常生活での使用が可能となったが、PCSやTSK-Jの改善はみられなかった。