1:15 PM - 1:25 PM
[O-03-5] 膝蓋大腿関節内の疼痛により片脚スクワットが困難であった左前十字靭帯再建術後の一症例
Keywords:前十字靭帯損傷、バスケットボール
【症例紹介】
本症例は女子バスケットボール部に所属する17歳の女性である。練習中の転倒で左前十字靭帯を断裂し、その後、同側大腿四頭筋腱を用いた再建術を施工され競技復帰に向けてリハビリ開始となった。
当院で術後4週目より介入し、ジョギングができるよう片脚スクワット(Single Squat:以下SSQ)の獲得を目指しリハビリを進めていたが、術後10週目時点で左膝蓋大腿関節(以下PFjt)内に疼痛を認めSSQが困難であった。主訴は「膝の中が痛い」であり、Needを除痛およびSSQの獲得とした。
【評価とリーズニング】
本症例の左SSQは下降層で左膝関節屈曲が乏しく、膝関節外反し左股関節過屈曲による体幹の過剰な前傾が生じていた。また、左股関節内転・内旋による骨盤左回旋・右下制も過剰であった。疼痛は膝関節最大屈曲位で生じ、Numerical Rating Scale(以下NRS)8、部位は左PFjt内であった。
本症例は常時左股関節内旋位、左膝関節軽度屈曲位で、膝蓋骨が前傾していた。ROMは左膝伸展ROM-5°屈曲ROM140°であった。触診上、左外側広筋・大腿直筋の柔軟性は低下し、膝蓋骨上方に術創部があることや膝蓋骨の上下・内側方向の動きは乏しかった。これらより左膝関節伸展ROM制限は生じていると考えた。筋力について左股関節外転筋MMT4、左膝伸展MMT4であり、特に内側広筋の萎縮を認めた。
以上より左SSQでは左内側広筋筋力低下と外側広筋・大腿直筋の柔軟性低下から膝蓋骨は優位に外側偏移し、大腿骨外側上顆と膝蓋骨間の狭小化から疼痛が生じていると考えた。また、左中殿筋筋力低下により過剰に股関節内転内旋することで膝関節外反と膝蓋骨の外側偏移を助長していると考えた。
さらに、バスケットボールの競技特性上、膝の屈伸時には膝外反を伴いやすく、健側股関節も内旋傾向でSquatのフォーム修正は必要であった。
【介入と結果】
左膝伸展ROM拡大のため外側広筋や大腿直筋・術創部と皮下組織へのストレッチ、膝蓋骨モビライゼーションを重点的に行い、膝関節伸展ROM0°となった。
左内側広筋に対し、Patella settingなどOKCトレーニング中心に実施し、SquatなどCKCトレーニングではフォーム修正も並行して行った。その結果、左股関節外転MMT5、膝関節伸展MMT5になった。さらに、左中殿筋へのトレーニングにて左股関節外転MMT5になった。
以上の結果、左SSQの下降相の左膝関節屈曲は増大し、左股関節過屈曲・内転・内旋、左膝の外反・膝蓋骨外側偏移が改善することでNRS2と疼痛軽減を認めた。
【結論】
左膝関節伸展ROMおよび内側広筋の筋力向上により膝蓋骨の可動性は向上した。根地島ら(2004年)は股関節外転外旋位で内側広筋の筋出力が向上すると報告している。本症例の内側広筋の筋力向上のためには中殿筋の筋力を向上させ、股関節内旋位を改善することが必要であった。以上より左SSQの膝外反と膝蓋骨外側偏移は改善し疼痛軽減に至ったと考える。
本症例は女子バスケットボール部に所属する17歳の女性である。練習中の転倒で左前十字靭帯を断裂し、その後、同側大腿四頭筋腱を用いた再建術を施工され競技復帰に向けてリハビリ開始となった。
当院で術後4週目より介入し、ジョギングができるよう片脚スクワット(Single Squat:以下SSQ)の獲得を目指しリハビリを進めていたが、術後10週目時点で左膝蓋大腿関節(以下PFjt)内に疼痛を認めSSQが困難であった。主訴は「膝の中が痛い」であり、Needを除痛およびSSQの獲得とした。
【評価とリーズニング】
本症例の左SSQは下降層で左膝関節屈曲が乏しく、膝関節外反し左股関節過屈曲による体幹の過剰な前傾が生じていた。また、左股関節内転・内旋による骨盤左回旋・右下制も過剰であった。疼痛は膝関節最大屈曲位で生じ、Numerical Rating Scale(以下NRS)8、部位は左PFjt内であった。
本症例は常時左股関節内旋位、左膝関節軽度屈曲位で、膝蓋骨が前傾していた。ROMは左膝伸展ROM-5°屈曲ROM140°であった。触診上、左外側広筋・大腿直筋の柔軟性は低下し、膝蓋骨上方に術創部があることや膝蓋骨の上下・内側方向の動きは乏しかった。これらより左膝関節伸展ROM制限は生じていると考えた。筋力について左股関節外転筋MMT4、左膝伸展MMT4であり、特に内側広筋の萎縮を認めた。
以上より左SSQでは左内側広筋筋力低下と外側広筋・大腿直筋の柔軟性低下から膝蓋骨は優位に外側偏移し、大腿骨外側上顆と膝蓋骨間の狭小化から疼痛が生じていると考えた。また、左中殿筋筋力低下により過剰に股関節内転内旋することで膝関節外反と膝蓋骨の外側偏移を助長していると考えた。
さらに、バスケットボールの競技特性上、膝の屈伸時には膝外反を伴いやすく、健側股関節も内旋傾向でSquatのフォーム修正は必要であった。
【介入と結果】
左膝伸展ROM拡大のため外側広筋や大腿直筋・術創部と皮下組織へのストレッチ、膝蓋骨モビライゼーションを重点的に行い、膝関節伸展ROM0°となった。
左内側広筋に対し、Patella settingなどOKCトレーニング中心に実施し、SquatなどCKCトレーニングではフォーム修正も並行して行った。その結果、左股関節外転MMT5、膝関節伸展MMT5になった。さらに、左中殿筋へのトレーニングにて左股関節外転MMT5になった。
以上の結果、左SSQの下降相の左膝関節屈曲は増大し、左股関節過屈曲・内転・内旋、左膝の外反・膝蓋骨外側偏移が改善することでNRS2と疼痛軽減を認めた。
【結論】
左膝関節伸展ROMおよび内側広筋の筋力向上により膝蓋骨の可動性は向上した。根地島ら(2004年)は股関節外転外旋位で内側広筋の筋出力が向上すると報告している。本症例の内側広筋の筋力向上のためには中殿筋の筋力を向上させ、股関節内旋位を改善することが必要であった。以上より左SSQの膝外反と膝蓋骨外側偏移は改善し疼痛軽減に至ったと考える。