13:20 〜 13:30
[O-05-1] 骨転位ならびに不動による拘縮を考慮し後療法を立案した左上腕骨近位端骨折の一例
キーワード:骨転位、拘縮
【症例紹介】
60歳代男性、屋外で転倒し左上腕骨近位端骨折を受傷した。Xp所見でNeer分類2partであり、骨折線はmiddle facet、inferior facetに認めた。受傷1週後、当院で手術加療となった。手術所見では三角筋前外側と肩峰下滑液包(SAB)を剥離し、Cannulated Cancellous screw (CCS)を1本挿入した。術後は肩関節下垂内旋位で3週間の三角巾固定となった。
【評価とリーズニング】
一般的に関節可動域制限の責任病巣として、不動1週後より骨格筋、不動4週以降は関節包が関与すると考えられている。また手術侵襲部位は出血や組織の修復過程において組織間の癒着を生じやすく、術後早期から制限因子となり得ることも報告されている。本症例は、肩関節下垂内旋位にて3週間の不動期間があり、内転筋群および内旋筋群の短縮による外転、外旋制限が懸念された。術前期間を考慮すると不動期間は4週に及ぶため、下方関節包の伸張性低下から屈曲、外転制限を生じることが予測された。加えて、手術所見より肩関節前上方組織の癒着が術後早期から生じる可能性があった。以上より、術後早期より肩関節外旋、内旋、内転方向の可動域練習を実施する必要性があると考えた。一方、骨片の整復ならびにCCSの固定性は良好であったが、肩外旋筋群の収縮による骨片の転位リスクがあった。そのため、本症例の後療法は術後4日より肩関節他動運動、仮骨形成が得られる術後3週より肩関節自動運動、骨癒合が得られる術後6週より筋力増強練習を開始した。術後1週目の肩関節ROMは、疼痛による防御性収縮が出現し屈曲80°、1st外旋25°であった。
【介入と結果】
術後翌日より筋緊張緩和を目的としたリラクゼーションを実施した。術後4日目より外旋筋群の防御性収縮に配慮し肩関節他動運動を開始し、後下方関節包の伸張を目的としてstooping exを指導した。術後2週より前上方組織の癒着防止のため、棘上筋の筋滑走を促すshrug exを実施した。術後3週のXp所見において仮骨形成を認めたため、肩関節自動運動を開始した。術後6週のXp所見で明らかな骨転位を認めなかったため、低負荷での筋力増強練習を開始した。術後12週目の肩関節ROMは屈曲自動他動150°、1st外旋自動55°、他動60°、JOAスコアは95点であった。
【結論】
術後の骨転位が懸念された上腕骨近位端骨折症例に対し、骨片に付着する組織の伸張ストレスを考慮した早期運動療法を実施し良好な結果を得た。骨の治癒過程および不動に伴う拘縮リスクを熟慮した後療法の立案は重要であることが示唆された。
60歳代男性、屋外で転倒し左上腕骨近位端骨折を受傷した。Xp所見でNeer分類2partであり、骨折線はmiddle facet、inferior facetに認めた。受傷1週後、当院で手術加療となった。手術所見では三角筋前外側と肩峰下滑液包(SAB)を剥離し、Cannulated Cancellous screw (CCS)を1本挿入した。術後は肩関節下垂内旋位で3週間の三角巾固定となった。
【評価とリーズニング】
一般的に関節可動域制限の責任病巣として、不動1週後より骨格筋、不動4週以降は関節包が関与すると考えられている。また手術侵襲部位は出血や組織の修復過程において組織間の癒着を生じやすく、術後早期から制限因子となり得ることも報告されている。本症例は、肩関節下垂内旋位にて3週間の不動期間があり、内転筋群および内旋筋群の短縮による外転、外旋制限が懸念された。術前期間を考慮すると不動期間は4週に及ぶため、下方関節包の伸張性低下から屈曲、外転制限を生じることが予測された。加えて、手術所見より肩関節前上方組織の癒着が術後早期から生じる可能性があった。以上より、術後早期より肩関節外旋、内旋、内転方向の可動域練習を実施する必要性があると考えた。一方、骨片の整復ならびにCCSの固定性は良好であったが、肩外旋筋群の収縮による骨片の転位リスクがあった。そのため、本症例の後療法は術後4日より肩関節他動運動、仮骨形成が得られる術後3週より肩関節自動運動、骨癒合が得られる術後6週より筋力増強練習を開始した。術後1週目の肩関節ROMは、疼痛による防御性収縮が出現し屈曲80°、1st外旋25°であった。
【介入と結果】
術後翌日より筋緊張緩和を目的としたリラクゼーションを実施した。術後4日目より外旋筋群の防御性収縮に配慮し肩関節他動運動を開始し、後下方関節包の伸張を目的としてstooping exを指導した。術後2週より前上方組織の癒着防止のため、棘上筋の筋滑走を促すshrug exを実施した。術後3週のXp所見において仮骨形成を認めたため、肩関節自動運動を開始した。術後6週のXp所見で明らかな骨転位を認めなかったため、低負荷での筋力増強練習を開始した。術後12週目の肩関節ROMは屈曲自動他動150°、1st外旋自動55°、他動60°、JOAスコアは95点であった。
【結論】
術後の骨転位が懸念された上腕骨近位端骨折症例に対し、骨片に付着する組織の伸張ストレスを考慮した早期運動療法を実施し良好な結果を得た。骨の治癒過程および不動に伴う拘縮リスクを熟慮した後療法の立案は重要であることが示唆された。