13:50 〜 14:00
[O-05-4] 杖歩行動作の右立脚初期から中期に後方への不安定性を認めた腰椎圧迫骨折患者の症例報告
キーワード:杖歩行動作、立脚中期
【症例紹介】
本症例は、左大腿骨転子部骨折、腰椎圧迫骨折と診断された80歳代の女性である。X年Y月Z日に自宅内で転倒し、左大腿骨転子部骨折と診断され、X年Y+4月に腰椎圧迫骨折と診断された。主訴は「杖で歩くのが怖い、後ろにこけそう」であり、Needを「杖歩行動作の安定性向上」とした。安定性低下の原因である右立脚初期から中期に認めた身体の後方傾斜の軽減の改善を図った。
【評価とリーズニング】
本症例の杖歩行動作は10m歩行中に7回、右立脚初期から中期に後方への不安定性を認めた。後方へ不安定性を認める場面の動作として、左立脚中期以降に左股関節屈曲位の状態で左膝関節も屈曲したままで骨盤左回旋が生じ、その状態で右立脚期を迎え、右立脚初期から中期に右膝関節屈曲位で大腿に対して骨盤が後傾する右股関節伸展が生じ、体幹後傾を認めていた。そして、同時期の左遊脚期で左下肢の振り出しが乏しくなっていた。仮説として身体の後方傾斜を認める要因は、左立脚中期以降も左股関節屈曲、左膝関節屈曲位による骨盤左回旋が生じ、身体重心が左後方に位置した状態で右立脚期に移行することと考えた。立脚期では股関節伸展が約10°生じるとされており、股関節伸展運動が生じることで身体重心が前方へ移動し、立脚側下肢の振り出しが生じやすくなるため、本症例でも股関節伸展が必要であると考えた。左股関節伸展位に至らない機能障害として、左股関節屈曲筋力低下、左股関節伸展可動域制限を挙げた。理学療法評価では、徒手筋力検査(以下、MMT)で股関節屈曲2と筋力低下を認めた。仮説や検査結果から、左股関節屈曲筋力低下により左立脚期に股関節屈曲位のままで骨盤左回旋が生じ、右立脚期で身体の後方傾斜を認めたと考え、左股関節屈曲筋力低下に対して介入を行った。
【介入と結果】
今回、介入期間を3週間と設定した。股関節屈曲の主動作筋である腸腰筋の賦活を目的としたエクササイズとして端座位での股関節屈曲運動を実施した。その後、腸腰筋の筋活動増大と歩行中の股関節伸展の経験を目的とした大股歩行を実施した。その結果、左立脚中期以降で左股関節伸展の増大を認め、その後の右立脚初期から中期で右膝関節伸展が生じた状態で右股関節伸展が生じ、身体の後方傾斜の軽減を認めた。同時に左遊脚期の左下肢の振り出しが増大した。後方に安定性が低下した回数は10m中7回から2回に改善を認めた。理学療法評価では、左股関節屈曲MMTが2から3へ増大した。
【結論】
今回、股関節屈曲筋力低下に対して介入した結果、左立脚期で左股関節伸展の増大、骨盤左回旋の軽減を認め、右立脚期で身体の後方傾斜の軽減を認め、安定性向上につながったと考えた。左股関節伸展の増大により、左下肢の振り子運動が生じやすくなることや身体重心が左後方へ残存している現象が軽減したことで、左遊脚期に左下肢の振り出しが容易となったと考えた。
本症例は、左大腿骨転子部骨折、腰椎圧迫骨折と診断された80歳代の女性である。X年Y月Z日に自宅内で転倒し、左大腿骨転子部骨折と診断され、X年Y+4月に腰椎圧迫骨折と診断された。主訴は「杖で歩くのが怖い、後ろにこけそう」であり、Needを「杖歩行動作の安定性向上」とした。安定性低下の原因である右立脚初期から中期に認めた身体の後方傾斜の軽減の改善を図った。
【評価とリーズニング】
本症例の杖歩行動作は10m歩行中に7回、右立脚初期から中期に後方への不安定性を認めた。後方へ不安定性を認める場面の動作として、左立脚中期以降に左股関節屈曲位の状態で左膝関節も屈曲したままで骨盤左回旋が生じ、その状態で右立脚期を迎え、右立脚初期から中期に右膝関節屈曲位で大腿に対して骨盤が後傾する右股関節伸展が生じ、体幹後傾を認めていた。そして、同時期の左遊脚期で左下肢の振り出しが乏しくなっていた。仮説として身体の後方傾斜を認める要因は、左立脚中期以降も左股関節屈曲、左膝関節屈曲位による骨盤左回旋が生じ、身体重心が左後方に位置した状態で右立脚期に移行することと考えた。立脚期では股関節伸展が約10°生じるとされており、股関節伸展運動が生じることで身体重心が前方へ移動し、立脚側下肢の振り出しが生じやすくなるため、本症例でも股関節伸展が必要であると考えた。左股関節伸展位に至らない機能障害として、左股関節屈曲筋力低下、左股関節伸展可動域制限を挙げた。理学療法評価では、徒手筋力検査(以下、MMT)で股関節屈曲2と筋力低下を認めた。仮説や検査結果から、左股関節屈曲筋力低下により左立脚期に股関節屈曲位のままで骨盤左回旋が生じ、右立脚期で身体の後方傾斜を認めたと考え、左股関節屈曲筋力低下に対して介入を行った。
【介入と結果】
今回、介入期間を3週間と設定した。股関節屈曲の主動作筋である腸腰筋の賦活を目的としたエクササイズとして端座位での股関節屈曲運動を実施した。その後、腸腰筋の筋活動増大と歩行中の股関節伸展の経験を目的とした大股歩行を実施した。その結果、左立脚中期以降で左股関節伸展の増大を認め、その後の右立脚初期から中期で右膝関節伸展が生じた状態で右股関節伸展が生じ、身体の後方傾斜の軽減を認めた。同時に左遊脚期の左下肢の振り出しが増大した。後方に安定性が低下した回数は10m中7回から2回に改善を認めた。理学療法評価では、左股関節屈曲MMTが2から3へ増大した。
【結論】
今回、股関節屈曲筋力低下に対して介入した結果、左立脚期で左股関節伸展の増大、骨盤左回旋の軽減を認め、右立脚期で身体の後方傾斜の軽減を認め、安定性向上につながったと考えた。左股関節伸展の増大により、左下肢の振り子運動が生じやすくなることや身体重心が左後方へ残存している現象が軽減したことで、左遊脚期に左下肢の振り出しが容易となったと考えた。