第34回大阪府理学療法学術大会

講演情報

口述 一般演題

事前公開

[O-07] 一般演題(脳卒中②)

2022年7月3日(日) 13:20 〜 14:05 会場7 (12階 1202会議室)

座長:草場 正彦(関西電力病院)

13:20 〜 13:30

[O-07-1] 急性期脳卒中後上肢麻痺の上肢機能およびADL経過と転帰先に関する検討

徳田 和宏1, 海瀬 一也1, 小山 隆2, 藤田 敏晃3 (1.阪和記念病院リハビリテーション部, 2.阪和記念病院リハビリテーション科, 3.阪和記念病院脳神経外科)

キーワード:脳卒中、急性期

【背景と目的】脳卒中後の臨床症状として上肢麻痺は高い確率で発症し,臨床上遭遇する機会も多い.また上肢麻痺はADLやQOLに大きく関与するとされ積極的な介入が求められる.このような背景の中,本邦における脳卒中後のリハビリテーションは急性期,回復期,生活期とシームレスな関わりが推奨されている.しかし急性期においては,方針における意思決定をどのように選択していくかに課題があり,とくに脳卒中後の上肢麻痺において転帰別に検討した報告はない.そこで,今回上肢集中練習(Constraint-Induced movement therapy:CI療法)を急性期から亜急性期に実施した症例を対象に,自宅退院と回復期転院における上肢機能やADL経過を調査し比較検討したため報告する.なお本研究の目的は転帰先の決定において上肢機能の目安を推測することにある.
【方法】対象は脳卒中後上肢麻痺を呈し,上肢集中練習を実施した86例のうち,途中中止,データ欠損を除外した66例.これらを転帰別に自宅退院群20例,回復期転院群44例に分類した.統計学的解析には,2群それぞれの開始時,上肢集中練習開始時,退院時のFugl Mayer Assessment上肢項目(FMA)およびFIMを算出し分散分析から多重比較を行った.次に2群間における背景因子ならびにFMA,FIMの変化量を比較し効果量を算出した.最後に,自宅群:1,回復群:0と設定し開始時FMAのカットオフ値,曲線下面積,感度,特異度,そして陽性尤度比と陰性尤度比を算出した.なお,すべての解析において正規性に順じパラメトリック検定,ノンパラメトリック検定を選択し有意水準は5%とした.
【結果】FMAの経過は自宅群45.9±20.9,52.6±12.3,62.5±4.3,回復期群20.6±21.3,26.5±21.4,36.3±21.7であった.次にFIMは自宅群59.9±17.2,96.6±20.1,108.9±15.9,回復期群45.9±17.3,65.0±16.5,80.2±20.7であり分散分析および多重比較ではすべてに有意差を認めた.2群間の比較ではFMA,FIMともにすべて有意差を認めた.変化量の比較は自宅群,回復期群の順にFMA16.6±20.7,15.7±19.2,p=0.878,効果量(r)0.02,FIM49.0±18.7,34.2±18.0,p=0.00394,効果量(r)0.36であった.最後に開始時FMAのカットオフ値は47.0,曲線下面積0.778,感度0.750,特異度0.795,陽性尤度比3.66,陰性尤度比0.31であった.
【結論】上肢機能,ADLの急性期経過は自宅群,回復期群ともそれぞれ一定の改善傾向を辿った.また,2群間の変化量における比較では上肢機能に差はなく,FIMに差があったものの効果量は低値であった.よって必ずしも上肢機能の変化度により自宅退院を選択するわけではないかもしれない.転帰先決定における上肢機能の目安として,開始時FMA47点が抽出された.しかし陽性尤度比は5以下であり異なる集団との比較では精度が不十分であった.今後はさらに症例数を重ね上肢機能と自宅退院における因果関係について明らかにしていきたい.