第34回大阪府理学療法学術大会

講演情報

口述 一般演題

事前公開

[O-07] 一般演題(脳卒中②)

2022年7月3日(日) 13:20 〜 14:05 会場7 (12階 1202会議室)

座長:草場 正彦(関西電力病院)

13:40 〜 13:50

[O-07-3] 脳卒中後失語症患者における歩行自立に影響を及ぼす予測因子の検討

山田 良, 嘉摩尻 伸 (医療法人えいしん会 岸和田リハビリテーション病院リハビリテーションセンター)

キーワード:脳卒中後失語症、歩行自立

【背景と目的】
脳卒中患者では、歩行障害が日常生活動作や生活の質に影響を与えると報告されており(Muren, 2008)、歩行が自立するか否かは重要である。歩行自立の関連因子として下肢運動麻痺、認知機能、失語症の有無などが報告されている(Preston, 2021; Paolucci, 2008)が、失語症を有していても歩行自立する症例を経験する。そこで、失語症の有無だけでなく、失語症の重症度などを含めたより詳細な評価項目を用いて、脳卒中後失語症患者における歩行自立に影響を及ぼす予測因子を明らかにすることを目的とした。

【方法】
対象は2017年12月から2022年1月に当院回復期病棟に入院し、入院時のFunctional Ambulation Categories(FAC)が3以下、Western Aphasia Battery(WAB)失語指数が93.8未満である初発の脳卒中後失語症患者93名とした。評価項目として、年齢、性別、発症から入院までの日数、入院時のWAB失語指数、Fugl-Meyer assessment(FMA)下肢項目、Raven's Colored Progressive Materices(RCPM)を入院時に評価した。退院時にFACが4以上の自立群と3以下の非自立群の2群に分類し、性別はχ2検定、年齢や発症から入院までの日数、WAB失語指数、FMA下肢項目、RCPMはMann-Whitney U検定にて群間比較を行った。さらに、群間比較にて有意差を認めた評価項目を独立変数、退院時の歩行自立・非自立を従属変数としてロジスティック回帰分析を行なった。有意水準は0.05とした。

【結果】
自立群は48名、非自立群は45名であった。群間比較では、年齢は自立群で有意に低く、WAB失語指数、FMA下肢項目、RCPMは自立群で有意に高かった。ロジスティック回帰分析の結果、脳卒中後失語症患者における歩行自立の予後予測として、FMA下肢項目とRCPMが抽出された。

【結論】
脳卒中後失語症患者における歩行自立に影響を及ぼす因子として、失語症の重症度は抽出されなかった。一方で、下肢運動麻痺の評価であるFMA下肢項目と非言語的認知機能の評価であるRCPMが抽出された。下肢運動麻痺は歩行速度と関連し、歩行自立に影響を与えると報告されており、妥当な結果であると考える。また、歩行自立には認知機能が関連すると言われている。脳卒中後失語症患者は言語障害があり、非言語によるコミュニケーションを多く利用すると報告されている。脳卒中後失語症患者は限られた言語能力によって、歩行獲得に向けた動作の学習や自己管理が必要だと考えられ、非言語によるコミュニケーションを含めた非言語的認知機能が歩行自立に影響している可能性がある。よって、脳卒中後失語症患者における歩行の予後予測として、下肢運動麻痺と非言語的認知機能を評価する重要性が示唆された。