2:20 PM - 2:30 PM
[O-08-2] 重度運動麻痺・感覚障害を呈した一症例~歩行獲得に向けた治療展開~
Keywords:運動麻痺、感覚障害
【症例紹介】
50代男性,右被殻出血,発症同日に開頭血腫除去術施行.第15病日当院入院.既往に高血圧症,病前は就労し妻と2人暮らし.入院時身体機能は,左BRS-t.Ⅰ-Ⅰ-Ⅱ,FACT0/20点,BBS1/56点,表在・深部感覚:左上下肢脱失,MMT:体幹2,上下肢(右/左)3/0,動作時左殿筋群が低緊張,高次脳機能は同時処理機能低下や左半側空間無視を認めた.FIM37/126点(運動項目15点),移動は車椅子にて全介助を要した.
【評価とリーズニング】
第120病日,左BRS-t.Ⅱ-Ⅰ-Ⅲ,FACT7/20点,BBS30/56点,表在・深部感覚は左上下肢脱失,MMTは体幹2,上下肢4/1,下肢荷重率(以下WBR)はT字杖にて右67%/左56%,動作時左殿筋群の収縮は弱化,高次脳機能は同時処理・遂行機能障害が残存した.FIM103/126点(運動項目68点),移動は車椅子にて自立となった.歩行はシューホーン型短下肢装具(以下SHB)を装着し,T字杖にて2動作揃え型,左立脚中~後期の骨盤左後方回旋,左遊脚期の骨盤左挙上,左トゥクリアランス低下を認めた.6分間歩行は100m,10m歩行の歩行率は1.0歩/秒,速度は0.30m/秒(最大速度).
【介入と結果】
動作時左殿筋群の低緊張に対し,弾性包帯で体幹・左股関節を固定し介入した.また体幹・左股関節の筋出力・感覚機能・WBRの向上を目的に,第120病日以降は視覚代償,及び接地面の荷重感覚の確認を行い,座位・膝立ち位・立位・歩行と支持基底面を段階的に調整し重心移動練習を重点的に実施した.
第175病日,表在感覚は著変なく,左BRS-t.Ⅱ-Ⅱ-Ⅲ,FACT14/20点,BBS48/56点,深部感覚は左股関節軽度鈍麻,その他脱失,MMTは体幹3,上下肢5/2,WBRは杖にて92%/67%,独歩83%/70%,動作時左殿筋群の収縮の向上に伴い,下肢の支持性の向上を認めた.FIM117/126点(運動項目82点)と改善した.高次脳機能は同時処理・遂行機能障害が残存した.歩行はT字杖・SHB装着下にて2動作前型となり,歩容は左立脚中~後期の骨盤左後方回旋や左遊脚期の骨盤左挙上は軽減し,左トゥクリアランスの向上を認め,院内杖歩行の獲得に繋がった.6分間歩行は145m,10m歩行の歩行率は1.2歩/秒,速度は0.5m/秒(最大速度)と向上した.
【結論】
金子らより,特殊感覚や固有感覚,荷重感覚等,複数の感覚受容器より入力された感覚と運動機能を統合することが固有感覚と運動機能の向上に繋がるとされている.本症例においても関節位置と筋出力を意識させた介入をするべく,体幹・左股関節を弾性包帯で固定し,大腿骨を臼蓋に対し求心位にて保持したことで,左殿筋群の促通や荷重・固有感覚の促通によるFBに繋がり,左股関節の運動機能が向上し,また深部感覚の向上にも繋がったと考えた.また支持基底面を段階的に調整した介入も,運動機能と深部感覚向上に寄与したと考えた.これらより歩行は左立脚中~後期の骨盤左回旋が軽減したことで歩行周期における立脚相が安定し,左トゥクリアランスの向上と前方推進力の向上に繋がり,歩行距離・効率ともに改善を認め,杖歩行獲得に至った.
50代男性,右被殻出血,発症同日に開頭血腫除去術施行.第15病日当院入院.既往に高血圧症,病前は就労し妻と2人暮らし.入院時身体機能は,左BRS-t.Ⅰ-Ⅰ-Ⅱ,FACT0/20点,BBS1/56点,表在・深部感覚:左上下肢脱失,MMT:体幹2,上下肢(右/左)3/0,動作時左殿筋群が低緊張,高次脳機能は同時処理機能低下や左半側空間無視を認めた.FIM37/126点(運動項目15点),移動は車椅子にて全介助を要した.
【評価とリーズニング】
第120病日,左BRS-t.Ⅱ-Ⅰ-Ⅲ,FACT7/20点,BBS30/56点,表在・深部感覚は左上下肢脱失,MMTは体幹2,上下肢4/1,下肢荷重率(以下WBR)はT字杖にて右67%/左56%,動作時左殿筋群の収縮は弱化,高次脳機能は同時処理・遂行機能障害が残存した.FIM103/126点(運動項目68点),移動は車椅子にて自立となった.歩行はシューホーン型短下肢装具(以下SHB)を装着し,T字杖にて2動作揃え型,左立脚中~後期の骨盤左後方回旋,左遊脚期の骨盤左挙上,左トゥクリアランス低下を認めた.6分間歩行は100m,10m歩行の歩行率は1.0歩/秒,速度は0.30m/秒(最大速度).
【介入と結果】
動作時左殿筋群の低緊張に対し,弾性包帯で体幹・左股関節を固定し介入した.また体幹・左股関節の筋出力・感覚機能・WBRの向上を目的に,第120病日以降は視覚代償,及び接地面の荷重感覚の確認を行い,座位・膝立ち位・立位・歩行と支持基底面を段階的に調整し重心移動練習を重点的に実施した.
第175病日,表在感覚は著変なく,左BRS-t.Ⅱ-Ⅱ-Ⅲ,FACT14/20点,BBS48/56点,深部感覚は左股関節軽度鈍麻,その他脱失,MMTは体幹3,上下肢5/2,WBRは杖にて92%/67%,独歩83%/70%,動作時左殿筋群の収縮の向上に伴い,下肢の支持性の向上を認めた.FIM117/126点(運動項目82点)と改善した.高次脳機能は同時処理・遂行機能障害が残存した.歩行はT字杖・SHB装着下にて2動作前型となり,歩容は左立脚中~後期の骨盤左後方回旋や左遊脚期の骨盤左挙上は軽減し,左トゥクリアランスの向上を認め,院内杖歩行の獲得に繋がった.6分間歩行は145m,10m歩行の歩行率は1.2歩/秒,速度は0.5m/秒(最大速度)と向上した.
【結論】
金子らより,特殊感覚や固有感覚,荷重感覚等,複数の感覚受容器より入力された感覚と運動機能を統合することが固有感覚と運動機能の向上に繋がるとされている.本症例においても関節位置と筋出力を意識させた介入をするべく,体幹・左股関節を弾性包帯で固定し,大腿骨を臼蓋に対し求心位にて保持したことで,左殿筋群の促通や荷重・固有感覚の促通によるFBに繋がり,左股関節の運動機能が向上し,また深部感覚の向上にも繋がったと考えた.また支持基底面を段階的に調整した介入も,運動機能と深部感覚向上に寄与したと考えた.これらより歩行は左立脚中~後期の骨盤左回旋が軽減したことで歩行周期における立脚相が安定し,左トゥクリアランスの向上と前方推進力の向上に繋がり,歩行距離・効率ともに改善を認め,杖歩行獲得に至った.