第34回大阪府理学療法学術大会

講演情報

口述 一般演題

事前公開

[O-08] 一般演題(脳卒中③)

2022年7月3日(日) 14:10 〜 15:10 会場3 (10階 1008会議室)

座長:壹岐 伸弥(川口脳神経外科リハビリクリニック)

14:40 〜 14:50

[O-08-4] 自室内歩行自立に至った左放線冠梗塞後右片麻痺を呈した一症例 -体幹機能及び歩行周期変動の観点-

山内 大輔1, 伊藤 拓海2, 森高 良樹1 (1.森之宮病院リハビリテーション部, 2.ボバース記念病院リハビリテーション部)

キーワード:脳卒中、歩行予後予測

【症例紹介】
60歳代男性。左放線冠梗塞後、右片麻痺を呈し保存的加療となり、発症24病日目に当院回復期病棟へ入院となった。今回、歩行自立に向けて体幹及びバランス評価に加え、加速度計による歩行周期変動から検討を行い、自室内歩行自立に至った症例を経験した為報告する。
【評価とリーズニング】
入院時FIMは59/126点(運動項目34/91点、認知項目25/35点)、麻痺側運動機能評価はFugl-Meyer(FMA)下肢9/34点、体幹機能評価はTrunk control test(TCT)75/100点、Trunk Impairment Scale(TIS)は11/23点、バランスはBerg balance scale(BBS)10/56点、歩行機能評価はFunctional Ambulation Categories(FAC)1、ロフストランド杖歩行が中等度介助であった。吉松ら(2018)は、回復期入院時から3ヶ月後の歩行自立の予測因子としてバランス能力(BBS13点以上)を挙げており、本症例の入院時BBSは10点であった為、3ヶ月後の歩行自立は困難と予測した。
【介入と結果】
リハビリテーションは6~9単位/日、理学療法介入は背臥位での筋力増強、座位での骨盤選択運動、立ち上がり及び介助歩行練習を実施した。発症60病日目のFIMは86/126点(運動項目56/91点、認知項目30/35点)、FMA下肢14/34点、TCT87/100点、TIS11/23点、BBS31/56点、FAC2となった。ロフストランド杖歩行は軽介助で可能となった。発症123病日目のFIMは111/126点(運動項目77/91点、認知項目34/35点)、FMA下肢22/34点、TCT87/100点、TIS16/23点、BBS45/56点、FAC3となった。短下肢装具下での自室内伝い歩き自立、T字杖歩行は近位見守りとなった。発症60病日、123病日目に3軸加速度計(TSND121、ATR社)を使用し、T7棘突起部、L4棘突起部、右腓骨頭直下に装着し、歩行評価を行った。歩行周期変動は36%から7.6%に減少した。
【結論】
入院時評価から歩行自立困難と予測したが、自室内歩行自立を獲得した。Collinら(1990)は、発症6週時点でのTCTスコアが50点以上では、発症18週時点の歩行自立(介助なしで10m歩行)が可能と報告し、入院時のTCTは75点であった為、体幹機能が保持されていた事が自室内歩行自立に寄与したと考えた。一方で、新井ら(2013)は歩行周期変動が3.3%以上の脳血管障害者は転倒の危険性が高いと報告し、本症例の歩行周期変動は7.6%であった為、病棟内歩行自立に至らなかったと考察した。歩行の予後予測において、短距離などの条件付きでの自立には体幹機能が関与する可能性が示唆された。