第34回大阪府理学療法学術大会

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Olal session

事前公開

[O-11] 一般演題(補装具・疼痛・代謝①)

Sun. Jul 3, 2022 2:10 PM - 3:10 PM 会場7 (12階 1202会議室)

座長:宮下 創(JCHO星ヶ丘医療センター)

2:30 PM - 2:40 PM

[O-11-3] 右視床出血により小脳性運動失調を呈した患者に対し、油圧式短下肢装具を用いて歩行再獲得を目指した症例

畑 佳弥乃, 辻中 椋, 糸川 竜平 (泉佐野優人会病院リハビリテーション部)

Keywords:脳卒中、小脳性運動失調

【症例紹介】
80歳代,女性.診断名は右視床出血であった.現病歴は呂律困難,左上肢に麻痺が出現し,頭部CT施行.右視床外側腹側核,内包後脚に高吸収域がみられ,当院回復期リハビリテーション病棟へ入院となった.本症例は自宅復帰を目指し歩行動作獲得が必要であった.
【評価とリーズニング】
初期評価はFIM運動項目14点, SARA25点,SIAS25点下肢運動項目3-3-2,TCT24点,BBS14点, 表在感覚中等度鈍麻,FACT1点10m歩行は実施困難,移動能力は平行棒内歩行中等度介助レベルであった.視床の外側腹側核に障害を呈した症例では,歯状核-赤核-視床の神経線維が終止し,小脳性運動失調を呈するとされ,視床梗塞により麻痺を伴う失調性半身麻痺が生じるとされている(Melo et al. 1992). 初期動作分析は左ICで骨盤左回旋,MStで体幹後方へのふらつき,TStで下腿前傾の減少がみられた.
【介入と結果】
本症例は運動失調が著明であった為,筋電図評価を実施した.筋電図では油圧式短下肢装具(以下GSD)装着下と非装着下での前脛骨筋と下腿三頭筋の歩行周期の同時収縮を co-contraction index(以下CI)(Falconer et al .1985)にて算出した.尚,CIは2歩行周期の平均を算出した.
Iant=∫T1T2EMG_TA (t)dt+∫T2T3EMG_SOL (t)dt
Itotal=∫T3T1[EMGagon+EMGant] (t)dt
CI=2Iant/Itotal×100%
結果は非装着下では値が89.8%,装着下では81.5%の同時収縮がみられた.装着下では同時収縮の値が軽減している.このことから,練習内容はGSDを用いた歩行,ステップ練習,杖歩行,動的バランス練習,下肢・体幹の筋力増強練習を行った.装着下で踵接地を意識しながら実施し,部分練習は立脚後期を反復して行い協調性の向上を図った.最終評価はFIM運動項目80点, SARA9点,SIAS60点下肢運動項目5-5-5,TCT100点,BBS51点 ,表在感覚中等度鈍麻,FACT16点,10m歩行は11.78s,退院時の屋内移動能力は杖歩行自立となった.
【結論】
本症例は軽度の運動麻痺と失調症状を呈していた.最終動作分析は円滑な下腿前傾が可能となり骨盤左回旋や体幹ふらつきの改善がみられた.失調症状を有する歩行の下肢不安定性に対し,拮抗筋の同時収縮で関節の剛性を高める代償動作がみられる(Silvia et al. 2014).さらに,短下肢装具は足関節底屈に抵抗するトルクを作り足関節の協調運動を支援するとされている(Ohata et al. 2011).したがって、立脚初期で前脛骨筋と下腿三頭筋の同時収縮を改善させることで,円滑にMStやTStに下腿が前傾し,下腿三頭筋の底屈トルクの産出に繋がったと考える.