第34回大阪府理学療法学術大会

講演情報

口述 一般演題

事前公開

[O-14] 一般演題(呼吸①)

2022年7月3日(日) 15:15 〜 16:00 会場6 (12階 特別会議場)

座長:一宮 晶(イチタス)

15:15 〜 15:25

[O-14-1] 重症のCOVID-19患者が日常生活動作自立し自宅退院となった一症例

赤松 邦洋, 松村 友明, 福島 凌, 藤川 薫 (城山病院リハビリテーション科)

キーワード:COVID-19、ICUAW

【症例紹介】
60歳代男性、発症前ADL自立。X年Y月Z日にCOVID-19感染症に罹患。Z+7日目より挿管下人工呼吸器管理となり、Z+16日目よりV-V ECMOを開始し、Z+35日目に人工呼吸器離脱した。Z+43日目よりリハビリテーション開始。ADLは全介助。Z+113日目に当院回復期病棟に転棟となった。
【評価とリーズニング】
初回評価(Z+114日目)はADLが全般的に中等度介助であり、FIMは70点、コミュニケーションは嗄声残存も良好。MMTは体幹2、両上下肢2-3でありICU-Medical-Research Council Score(以下ICU MRC score)は36点と重度の筋力低下を呈していた。握力は(Rt/Lt)15.5/15.2kgであり、Albは2.7g/dl 、総蛋白は4.5g/dlであり中等度栄養障害であった。胸部CT上、両下肺に胸水、すりガラス影や浸潤影を認めた。
【介入と結果】
Z+129日目に栄養科に相談し、翌日より、朝昼夕の運動後に栄養補助食品の提供となった。その結果、摂取カロリーは500kcal増量し、たんぱく量も15g増量となった。その後、運動負荷を上げていき、最終的に4.0~6.0Metsの歩行、階段昇降などを30分程度×3回実施した。最終評価(Z+178日目)では、MMTが体幹4、両上下肢4-5であり、ICU MRC scoreは46点、握力は(Rt/Lt)25.5/21.6kg、Albは3.8g/dl、総蛋白は6.1g/dlとなった。また、6分間歩行は378m、10m歩行の最大速度は6.8秒であった。病棟ADLは自立し、FIMは125点であった。胸部CT上では、肺炎と胸水の改善を認めた。
【結論】
本症例は、ICU MRC scoreの結果及び、発症からの経過を踏まえると、PICSの運動機能障害の一つに含まれるICU-acquired weakness(以下ICUAW)であると考えた。ICUAW罹患後の筋力回復の目安として1年でプラトーになるとの報告や、PICSは退院後も身体機能障害が持続するといわれている。また、低栄養状態での過度の身体活動は過用性筋力低下を生じると報告されている。このことから栄養状態に着目し、高負荷でのリハビリが必要と考えた。たんぱく付加前では、起立などの約1.5~3METs程度の運動強度であったがたんぱく付加後は歩行、階段昇降など約4.0~6.0METs程度の運動負荷まで実施。最終評価時には2から4~5にMMTの改善を認め、栄養状態の改善(Alb:3.8g/dl総蛋白:6.1g/dl)を認めた。筋力の低下が無く、ADLも改善を認めたことから、PICSを発症した低栄養患者に対してたんぱく付加を行った上での筋力増強は妥当であったと考える。また、低栄養状態の中、運動負荷量をここまで上げ、過用性の筋力低下が起こらず、筋力増強、ADLの向上を認めた理由として、他職種との連携が取れ、適切な栄養付加、運動負荷量を提供できた結果、中枢神経系の機序によって残存筋に対し運動単位数の増加、発火頻度の増加・同期化、拮抗筋の抑制、運動プログラムの改善が効果的に生じた為であると考えた。病態を理解し栄養状態にも着目する事や他職種との連携が、退院後の生活リハビリの観点からも必要であることが示唆される。