15:25 〜 15:35
[O-14-2] 片側横隔神経麻痺の合併がある気腫合併肺線維症患者に対し予測換気予備能より立案した運動療法が奏功した一症例
キーワード:CPFE、横隔神経麻痺
【症例紹介】
70歳代の男性.気腫合併肺線維症(CPFE)にてX-3年に在宅酸素療法導入(安静時2L/分,労作時4L/分)となった.X-20年にギランバレー症候群により右横隔神経麻痺(UDP)を呈し,右横隔膜挙上が残存していた.X-1年より,労作時呼吸困難感(DOE)が顕著となり自宅での身体活動量(PA)が低下していた.
今回,運動耐容能向上を目的に,2週間の包括的呼吸リハビリテーション入院となった.入院前のADLは自立していた.
【評価とリーズニング】
肺機能検査,実測値(%)は,肺活量(VC):1.86L(59.4%),1秒量:1.06L(44.4%),1秒率:67.9%と混合性換気障害を認めた.全肺気量(TLC):3.53L(60%),努力肺活量(FVC):1.56L,残気率:79.1%であった.肺拡散能(%DLCO):51.9%,DLCO/肺胞換気量(VA):68.8%であった.胸部CT所見は,上葉に気腫病変,肺底部に蜂巣肺,網状陰影を認めていた.漸増負荷試験はPeak watt:69wで,6分間歩行試験(6MWT)は183m,最低SpO2は75%であった.膝伸展筋力は左右共に0.33kgf/kgで,病棟内PA(本人希望で車椅子移動)は49歩/日であった.
肺機能より気流制限を認めたが,VCやTLCの減少があり,%DLCOに対してDLCO/VAが増加していた点から,線維症優位のCPFEであると考えられた.加えて,UDPはFVC,TLCの低下が特徴的であり,本症例もその傾向が認められ,呼吸仕事量が増大しやすく,DOEがPAや運動耐容能の低下へ影響していたと考えた.
そこで,肺機能検査より予測運動時換気量(予測VEpeak)と予測最大換気量(予測 MVV)を算出し,運動時の換気予備能を算出した.その結果,予測VEpeakは47.4L/min,予測MVVは36L/minであり,運動時換気予備能は低く,肺線維症やUDPによる肺容量の減少が運動制限因子であったと考えた.
【介入と結果】
運動療法は,修正Borg Scaleの呼吸困難感3~4,下肢疲労感5~6を目標とし,脈拍と呼吸数を評価し,脈拍:100-110bpm,呼吸数:30-35回/分の範囲内が適正であった.この結果を基に,動作指導,下肢レジスタンストレーニング,自転車エルゴメーター(Peak wattの40%から開始し最大60%)を実施した.併せて作業療法にて日常生活動作の指導を実施した.
結果,膝伸展筋力は0.42kgf/kgへ増大し,漸増負荷試験はPeak wattが89wへ向上した.6MWTは263mへ延長し,最低SpO2は77%であった.病棟内PAは2247歩/日へ増大した.DOEが軽減し運動耐容能が向上したため,X+14日自宅退院となった.
【結論】
本症例は2週間の包括的呼吸リハビリテーションにて,運動耐容能が向上し,病棟内PAも改善した.これまで,UDPを合併したCPFE患者に対する運動療法についての報告はないが,運動時換気予備能を算出し,呼吸筋疲労の影響を考慮したうえで,運動強度を調整することは,より効果的である可能性が示唆された.
70歳代の男性.気腫合併肺線維症(CPFE)にてX-3年に在宅酸素療法導入(安静時2L/分,労作時4L/分)となった.X-20年にギランバレー症候群により右横隔神経麻痺(UDP)を呈し,右横隔膜挙上が残存していた.X-1年より,労作時呼吸困難感(DOE)が顕著となり自宅での身体活動量(PA)が低下していた.
今回,運動耐容能向上を目的に,2週間の包括的呼吸リハビリテーション入院となった.入院前のADLは自立していた.
【評価とリーズニング】
肺機能検査,実測値(%)は,肺活量(VC):1.86L(59.4%),1秒量:1.06L(44.4%),1秒率:67.9%と混合性換気障害を認めた.全肺気量(TLC):3.53L(60%),努力肺活量(FVC):1.56L,残気率:79.1%であった.肺拡散能(%DLCO):51.9%,DLCO/肺胞換気量(VA):68.8%であった.胸部CT所見は,上葉に気腫病変,肺底部に蜂巣肺,網状陰影を認めていた.漸増負荷試験はPeak watt:69wで,6分間歩行試験(6MWT)は183m,最低SpO2は75%であった.膝伸展筋力は左右共に0.33kgf/kgで,病棟内PA(本人希望で車椅子移動)は49歩/日であった.
肺機能より気流制限を認めたが,VCやTLCの減少があり,%DLCOに対してDLCO/VAが増加していた点から,線維症優位のCPFEであると考えられた.加えて,UDPはFVC,TLCの低下が特徴的であり,本症例もその傾向が認められ,呼吸仕事量が増大しやすく,DOEがPAや運動耐容能の低下へ影響していたと考えた.
そこで,肺機能検査より予測運動時換気量(予測VEpeak)と予測最大換気量(予測 MVV)を算出し,運動時の換気予備能を算出した.その結果,予測VEpeakは47.4L/min,予測MVVは36L/minであり,運動時換気予備能は低く,肺線維症やUDPによる肺容量の減少が運動制限因子であったと考えた.
【介入と結果】
運動療法は,修正Borg Scaleの呼吸困難感3~4,下肢疲労感5~6を目標とし,脈拍と呼吸数を評価し,脈拍:100-110bpm,呼吸数:30-35回/分の範囲内が適正であった.この結果を基に,動作指導,下肢レジスタンストレーニング,自転車エルゴメーター(Peak wattの40%から開始し最大60%)を実施した.併せて作業療法にて日常生活動作の指導を実施した.
結果,膝伸展筋力は0.42kgf/kgへ増大し,漸増負荷試験はPeak wattが89wへ向上した.6MWTは263mへ延長し,最低SpO2は77%であった.病棟内PAは2247歩/日へ増大した.DOEが軽減し運動耐容能が向上したため,X+14日自宅退院となった.
【結論】
本症例は2週間の包括的呼吸リハビリテーションにて,運動耐容能が向上し,病棟内PAも改善した.これまで,UDPを合併したCPFE患者に対する運動療法についての報告はないが,運動時換気予備能を算出し,呼吸筋疲労の影響を考慮したうえで,運動強度を調整することは,より効果的である可能性が示唆された.