第34回大阪府理学療法学術大会

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Olal session

事前公開

[O-14] 一般演題(呼吸①)

Sun. Jul 3, 2022 3:15 PM - 4:00 PM 会場6 (12階 特別会議場)

座長:一宮 晶(イチタス)

3:45 PM - 3:55 PM

[O-14-4] 回復期リハビリテーション病棟に入院したCOVID-19重症例の発症から1年後までの経過

藤井 萌1, 梶原 史恵1, 奥野 友和1, 松並 耀平1, 山本 福子2 (1.大阪急性期・総合医療センター医療技術部セラピスト部門, 2.大阪急性期・総合医療センターリハビリテーション科)

Keywords:COVID-19、呼吸リハビリテーション

【症例紹介】
COVID-19の長期的な経過についての症例報告は少なく未だ不明な点も多い。今回、COVID-19の重症例で発症から1年後に肺機能の改善を認め、在宅酸素療法(以下HOT)を終了した症例について報告する。症例は70歳男性、既往に外傷性糖尿病、慢性腎臓病、高血圧症があり、入院前ADLは全て自立していた。X年Y月Z日に発熱、COVID-19と診断され、翌日他院に入院となった。Z+6日に呼吸状態が悪化し気管挿管され、当院へ転院となった。Z+11日にVAP併発、Z+13日に気管切開、Z+19日に呼吸器離脱、Z+24日に理学療法開始、Z+34日に回復期病棟へ転床となった。
【評価とリーズニング】
回復期病棟転床時は、ベンチュリーマスク5Lで安静時SpO2 95%を維持するも、座位ではSpO2 82%まで低下し、呼吸困難感の増強により動作の継続が困難であった。ICU MRC scoreは48点、集中治療室活動度スケールは6、FIMは44点(運動17 認知27)で低下を認め、肺機能検査は%VC 47.6(Z+53日)、%DLCO 53.4(Z+76日)であった。画像所見は両肺に気管支透亮像を伴うすりガラス影を広範囲に認め、両側の胸水貯留を認めた。病態や画像所見より換気血流比不均等や拡散障害による低酸素血症が生じ、動作の継続が困難になっていると推測した。
【介入と結果】
介入初期はコンディショニングと下肢筋力増強のため起立・移乗動作練習から開始した。運動中はSpO2値が90%を下回らないように低強度負荷の運動から介入し、改善に合わせて運動量を増加した。Z+46日に平行棒内歩行練習、Z+68日に独歩練習、Z+109日に屋外歩行練習を実施し、Z+121日で自宅退院となったが労作時の低酸素血症によりHOT導入となった。退院後は週2回のデイケアで、有酸素運動・下肢筋力増強練習を継続していた。退院後は同様の評価を退院時→発症後6カ月→発症後1年で実施した。膝伸展HHD(kgf):(R/L)28.4/31.1→37.9/40.0→41.3/42.9、6分間歩行(m):277→417→447、NRADL(点):76→83→90、FIM(点):122→125→126、肺機能検査は%VC:67.0→74.7→80.6、%DLCO:67.9(Z+97日)→95.5→100.6と全項目で改善し、発症後8カ月でHOT終了となった。一方で発症後1年時の画像所見では両肺にすりガラス影が残存、呼吸器症状として連続動作における息切れが残存していた。
【結論】
本症例は呼吸器管理期間が2週間であり、介入当初は動作時の呼吸困難感が著明であった。継続した運動療法により退院時のADLは自立レベルまで改善したが、COVID-19により肺機能障害が遷延したことでHOT導入を余儀なくされた。Albertoらは、COVID-19はDLCOおよび呼吸器症状が入院後1年間に正常化または改善する傾向があると報告している。本症例も発症後8カ月でHOT終了となり、同様の経過を辿った。本症例は退院後も運動療法を継続しており、そのことも改善の一因であると考える。COVID-19重症例は長期的に後遺症が持続する場合もあるが、運動療法の継続によって退院後も改善が期待できることを示す結果となった。