第34回大阪府理学療法学術大会

講演情報

口述 一般演題

事前公開

[O-15] 一般演題(介護・学校・地域①)

2022年7月3日(日) 15:15 〜 16:15 会場7 (12階 1202会議室)

座長:北川 智美(四條畷学園大学)

15:15 〜 15:25

[O-15-1] 療法士間の連携により介護者の介護負担軽減に至った一例 -通所、訪問リハビリテーションの役割をふまえた関わり-

横山 広樹1, 柳迫 哲也1, 知花 朝恒2, 石垣 智也2,3, 後藤 悠太4, 尾川 達也4, 玉置 昌孝1 (1.関西医科大学くずは病院リハビリテーション科, 2.川口脳神経外科リハビリクリニックリハビリテーション科, 3.名古屋学院大学リハビリテーション学部 理学療法学科, 4.西大和リハビリテーション病院リハビリテーション部)

キーワード:介護負担、通所リハビリテーション

【症例紹介】
症例はレビー小体型認知症を呈した要介護4の80歳代女性であり、夫と娘と同居していた。主な介護者は夫である。現病歴としてX年Y月に腰椎圧迫骨折、Y +4ヶ月後に自宅退院となり、当院の訪問リハビリテーション(以下、訪問リハ)と長時間(6-7時間未満)の通所リハビリテーション(以下、通所リハ)が開始となった。自宅退院後にはパーキンソニズムの症状に対して、服薬調整が行われた。入院前は軽度の認知機能低下はあったものの、概ね自立した生活を送られていた。
【評価とリーズニング】
Bedside Mobility Scale(以下、BMS)は10点、Functional Ambulation Classification of the Hospital at Sagunto (以下、FACHS)は1点であり、起居、移動動作全般に介助を要していた。改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)は11点であり、行動心理症状に関しては概ね安定していた。夫の介護負担を把握するためにZarit介護負担尺度日本語版(以下、J-ZBI)を、介護に対する肯定的評価として介護マスタリー評価を用いた。J-ZBIは38点であり、主に心理的負担に関する項目の点数が高い傾向にあった。介護マスタリーでは自己達成感が13点、対処効力感が11点と高い状態であった。しかし、訪問リハ時に夫の介助方法を確認したところ、屋内歩行や階段昇降、また特に夫が負担として感じていたトイレ動作時の便座からの立ち上がりや下衣の着脱場面で過介助となっていた。主観的な対処効力感は高いのにも関わらず、客観的な対処は不十分であり、介護者の認識と実際の介護方法に相違を認めた。その為、夫の介護負担軽減を目的に通所リハでは症例の動作能力の改善を目的とした介入を、訪問リハでは生活環境での動作練習と共に夫への介護指導を実施した。
【介入と結果】
通所リハでは階段昇降練習や歩行練習を中心に実施した。また動作能力の改善と共に通所リハ利用時の移動や食事、入浴といったセルフケアに関わる動作を症例自身で実施できるよう介入した。訪問リハでは通所リハの情報もふまえて症例の動作能力を活かした介護方法を夫に指導した。介入から4ヶ月後の症例のBMSは30点、FACHSは2点であり、起居、移動動作の改善を認めた。J-ZBIは33点となり、介護マスタリーは自己達成感が11点で、特に対処効力感が4点に低下した。また夫より「今まで適切な介護ができていなかった」との発言があり、介護者が対処内容の内省を認めるとともに、各動作場面における介護方法の改善を認めた。
【結論】
今回、介護マスタリーにおける対処効力感の低下を認め、J-ZBIでは改善を認めた。これは介護者が症例に対して適切な対処行動が形成されたことで介護負担感が軽減するとともに、過度な対処効力感が是正された影響と考えられる。今回の結果は各サービスの特色を生かした取り組みのほか、夫が新しい介護方法に対する受容が良好であった介護者特性を持っていたことが影響した可能性がある。