第34回大阪府理学療法学術大会

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Olal session

事前公開

[O-15] 一般演題(介護・学校・地域①)

Sun. Jul 3, 2022 3:15 PM - 4:15 PM 会場7 (12階 1202会議室)

座長:北川 智美(四條畷学園大学)

3:55 PM - 4:05 PM

[O-15-5] 集団リハビリテーションによって運動恐怖感の軽減と身体活動量の向上を認めた慢性疼痛患者の一例

金 起徹1, 壹岐 伸弥1, 石垣 智也2,1, 川口 琢也3 (1.川口脳神経外科リハビリクリニックリハビリテーション科, 2.名古屋学院大学リハビリテーション学部 理学療法学科, 3.川口脳神経外科リハビリクリニック脳神経外科)

Keywords:慢性疼痛、集団リハビリテーション

【症例紹介】
 慢性疼痛患者に対して集団でのリハビリテーション(リハ)やピアサポートの有効性が示されている(Mary O.2017)(Yulia K.2020)。背景には、社会的支援や患者同士の交流により痛みの自己管理能力や心理的要因の改善が得られるという仮説があるが、集団で行う本邦の通所リハでも同様の効果が期待できるかは明らかではない。今回、この課題に対して、個別(外来)から集団(通所)でのリハに移行することで、運動恐怖感の軽減に加え身体活動量の向上を認めた一例から考察する。 
 症例は橋出血により軽度右片麻痺を認めた70代後半の女性であり、発症1ヶ月後より当院外来リハ開始となった。併存疾患に関節リウマチ、既往歴に腰椎圧迫骨折があり、発症前より慢性的な腰痛や関節痛を認めていた。

【評価とリーズニング】
 初期評価では10m歩行時間 27.9秒、Berg balance scale(BBS)50/56点であった。外来リハ開始時より腰痛と右足部痛の訴えがあり、安静時痛はNRS 8/10、運動恐怖感はTampa Scale for Kinesiophobia(TSK)で39/68点とカットオフ値37点を上回っており、「体重を乗せると痛くなりそうで怖い」と発言があった。関節リウマチの疾患活動性を表すDAS28は3.37であり、中等度の関節炎を認めていた。また、身体活動量計を用いて日中の身体活動量を評価した結果、座位行動の占める割合が77.4%と高く、軽強度活動は22.3%と低かった。さらに、外来リハ場面では安全に歩行が行えていたが痛みや恐怖感の訴えが多く、運動や活動への動機付けに難渋していた。しかし、療法士や他患者とのコミュニケーション場面から外向的な性格が伺えたため、集団でのピアサポートが運動恐怖感の軽減に有効と考え、外来リハ3ヶ月後に通所リハへ移行した。なお、外来リハでは歩行練習を中心に行い、身体活動量計の結果を用いてペーシングや患者教育も併せて行っていた。

【介入と結果】
 通所リハ移行時のTSKは41点であり、状態の大きな変化は認めなかった。通所リハでは集団体操やエルゴメーターなどの有酸素運動を中心に行い、同じく腰痛をもつ利用者とのコミュニケーション機会を多く設けた。結果、通所リハ開始1ヶ月後でTSKは32点へと軽減し、3~6ヶ月後もカットオフ値を上回ることはなく、「皆さんから元気を貰っている」と発言があった。さらに、身体機能は6ヶ月後に10m歩行時間 10.5秒、BBS 55点へと改善し、身体活動量は1ヶ月後に座位行動が63.2%、軽強度活動が36.5%と向上し、6ヶ月後も同程度の状態を維持した。しかし、6ヶ月後の安静時痛はNRS 8/10、DAS28は4.16であった。

【結論】
 対象者が外向的な性格を有する場合、本邦の通所リハであっても集団によるピアサポートは実現可能であり、慢性疼痛を有していても運動恐怖感の軽減や身体活動量の向上に寄与する可能性が示唆された。