第34回大阪府理学療法学術大会

講演情報

口述 一般演題

事前公開

[O-16] 一般演題(脳卒中⑤)

2022年7月3日(日) 16:00 〜 16:45 会場3 (10階 1008会議室)

座長:木下 篤(さくら会病院)

16:30 〜 16:40

[O-16-4] 左足尖離地が困難な場面があり独歩の安定性低下を認めた右放線冠脳梗塞の一症例

安井 柚夏1, 井尻 朋人1, 鈴木 俊明2 (1.医療法人寿山会法人リハビリテーション部, 2.関西医療大学大学院保健医療学研究科)

キーワード:独歩、不安定性

【症例紹介】
症例は右放線冠脳梗塞の70歳代の女性である。Z日に左下肢のしびれが出現し、Z+5日に他院で内服・点滴療法を開始された。Z+30日にリハビリ継続目的で当院に転院となった。主訴は「しっかり歩けるようになりたい」であった。本症例は夫と2人暮らしであり、家事動作などを行う必要があった。そのため、ニードを「独歩の安定性向上」とした。
【評価とリーズニング】
本症例は独歩において常に左足尖離地が乏しく、ときには左足尖離地困難な場面を認めた。そのため独歩の安定性は低下していた。左足尖離地が乏しい要因として、左立脚期から右立脚期への移行の際、身体の右への移動が乏しいことを考えた。立位姿勢から左足関節背屈に伴う下腿前傾・膝関節屈曲により機能的脚長差(左<右)が生じており、身体は左に傾いていた。このことから左足関節底屈筋力低下を予想した。独歩における左立脚期から右立脚期への移行の時期でも上記立位姿勢と類似した姿勢を呈しており、右立脚初期からの右足部回内に伴う下腿外側傾斜および骨盤右側方移動が乏しくなっていた。また、左足尖離地可能となっても右立脚期の右股関節内転に伴う骨盤左下制が生じ、早期に左踵接地となっていた。このことから右股関節外転筋力低下を予測した。以上の2つの現象により左足尖離地が乏しくなると考えた。右股関節外転MMTは2、左足関節底屈MMTは2であり、静止時筋緊張検査では、左腓腹筋に筋緊張低下を認めた。
【介入と結果】
左足関節底屈筋力強化練習としてカーフレイズを行った。また、右股関節外転筋力強化練習として立位での右下肢荷重練習を行った。治療期間は39日で毎日行った。治療後、左足尖離地が可能となり、独歩の安定性向上を認めた。立位姿勢における左足関節背屈に伴う下腿前傾・膝関節屈曲位は改善を認めた。左立脚期から右立脚期への移行の際、右下腿外側傾斜と骨盤右側方移動が増大し、右下肢への体重移動が可能となった。左足尖離地後の骨盤水平位保持も可能となり、右立脚期の右股関節内転に伴う骨盤左下制は改善を認めた。左足関節底MMTは3、右股関節外転はMMT3と改善を認め、静止時筋緊張検査では左腓腹筋の筋緊張改善を認めた。
【結論】
姿勢保持に重要とされる下腿三頭筋の強化を図ったことで、左下腿前傾および膝関節屈曲位による身体が左へ傾いた立位姿勢が改善され、右下肢への体重移動を遂行しやすくなったと考えた。また右股関節外転筋力強化により、左足尖離地後の骨盤水平位保持が可能となり、左足尖離地時間の延長が可能となったと考えた。症例は左片麻痺であるが、右股関節外転筋力低下が著明であった。左足関節底屈筋力低下により、左下腿前傾および膝関節屈曲位で身体が左へ傾いた立位姿勢を続けた結果、右下肢への荷重が乏しくなり、非麻痺側である右下肢にも右股関節外転筋力低下が生じたと考えた。