16:10 〜 16:20
[O-17-2] 頸髄症を発症した長期血液透析患者の歩行再獲得を目指した症例
キーワード:頸髄症、血液透析
【症例紹介】
50歳代女性、BMIは24.0kg/m2、透析歴は35年である。既往歴に、両膝人工関節全置換術、腰部脊柱管狭窄症、末梢動脈疾患、手根管症候群がある。入院前は独居で屋内独歩、屋外杖歩行自立であった。X日に後側方固定術(C3-Th1)を施行した。杖歩行獲得を目標に理学療法を開始した。
【評価とリーズニング】
術前は、四肢の表在/深部感覚が軽~中等度鈍麻、筋緊張はModified Ashworth Scale(MAS)で上肢2、下肢3、ROM(右/左、°)が肩屈曲95/40、股伸展-15/-15、膝伸展-20/-20、MMTは上肢1~2、下肢2、ADLは全介助であった。術後の初期評価(X+7日)では、MMTが上肢2~3、下肢3、と術前よりも改善した。中間評価(X+35日)で感覚は変化がなく、MASは上肢1、下肢2~3、ROMは、肩屈曲125/80、股伸展-10/-10、膝伸展-15/-15、足背屈-5/-5、MMT(右/左)は肩屈曲3/3、肘屈曲4/2、体幹屈曲2、回旋2/2、股外転2/2、膝伸展3/3、足底屈2/2であった。片脚立位は、右下肢支持は5秒、左下肢支持では保持できなかった。10m歩行(杖)は、中等度介助下で24.46秒であった。歩容は右立脚後期が短縮し、左立脚期ではデュシャンヌ兆候を認めふらつきが見られた。右立脚後期の短縮は右殿筋群の筋力低下によるもの、また左立脚期に見られたデュシャンヌ兆候は左中殿筋の筋力低下が原因であると考えた。デュシャンヌ兆候により体幹の動揺が生じ、加えて左足部の表在/深部感覚の低下があるため重心の移動量が一定せず、ふらつきにつながると推察した。しかし、足部の感覚障害は末梢動脈疾患由来のものであり改善の見込みが少ないと考え、殿筋群の筋力向上に重点を置いた治療プランを選択した。
【介入と結果】
透析日を含む週6回、関節可動域運動と筋力増強運動、歩行練習を実施した。透析日は透析前に介入することにより、非透析日と同様のプランを実施できた。両側殿筋群の筋力低下を主な問題点と考え、介入初期はOKCで筋力増強運動を行った。歩行動作能力の向上に伴い、X+61日からは段差昇降練習、大股歩行、横歩きなど動作練習やバランス練習を中心に実施した。最終評価(X+84日)では、感覚とMASは変化がなく、ROMは肩屈曲125/90、股伸展-5/-5、膝伸展-15/-10、足背屈5/5、MMTは肩屈曲4/3、肘屈曲4/3、体幹屈曲3、回旋3/3、股外転3/2+、膝伸展4/4、足底屈2/2であった。片脚立位は、右下肢支持は10秒、左下肢支持は5秒であった。10m歩行(杖)は17.9秒であった。歩容は左立脚期に認めたデュシャンヌ兆候による体幹の動揺が軽減し、ふらつきが見られなくなった。杖歩行自立となりX+87日に自宅退院となった。
【結論】
長期血液透析患者の増加に伴い、脊椎疾患を合併した患者も増加しているものの、頸髄症術後に対する理学療法の報告は非常に少ない。今回、頸髄症を発症した長期血液透析患者に対する術後理学療法で、筋力増強運動に加えて動作練習やバランス練習を行うことで歩行獲得に至った症例であった。
50歳代女性、BMIは24.0kg/m2、透析歴は35年である。既往歴に、両膝人工関節全置換術、腰部脊柱管狭窄症、末梢動脈疾患、手根管症候群がある。入院前は独居で屋内独歩、屋外杖歩行自立であった。X日に後側方固定術(C3-Th1)を施行した。杖歩行獲得を目標に理学療法を開始した。
【評価とリーズニング】
術前は、四肢の表在/深部感覚が軽~中等度鈍麻、筋緊張はModified Ashworth Scale(MAS)で上肢2、下肢3、ROM(右/左、°)が肩屈曲95/40、股伸展-15/-15、膝伸展-20/-20、MMTは上肢1~2、下肢2、ADLは全介助であった。術後の初期評価(X+7日)では、MMTが上肢2~3、下肢3、と術前よりも改善した。中間評価(X+35日)で感覚は変化がなく、MASは上肢1、下肢2~3、ROMは、肩屈曲125/80、股伸展-10/-10、膝伸展-15/-15、足背屈-5/-5、MMT(右/左)は肩屈曲3/3、肘屈曲4/2、体幹屈曲2、回旋2/2、股外転2/2、膝伸展3/3、足底屈2/2であった。片脚立位は、右下肢支持は5秒、左下肢支持では保持できなかった。10m歩行(杖)は、中等度介助下で24.46秒であった。歩容は右立脚後期が短縮し、左立脚期ではデュシャンヌ兆候を認めふらつきが見られた。右立脚後期の短縮は右殿筋群の筋力低下によるもの、また左立脚期に見られたデュシャンヌ兆候は左中殿筋の筋力低下が原因であると考えた。デュシャンヌ兆候により体幹の動揺が生じ、加えて左足部の表在/深部感覚の低下があるため重心の移動量が一定せず、ふらつきにつながると推察した。しかし、足部の感覚障害は末梢動脈疾患由来のものであり改善の見込みが少ないと考え、殿筋群の筋力向上に重点を置いた治療プランを選択した。
【介入と結果】
透析日を含む週6回、関節可動域運動と筋力増強運動、歩行練習を実施した。透析日は透析前に介入することにより、非透析日と同様のプランを実施できた。両側殿筋群の筋力低下を主な問題点と考え、介入初期はOKCで筋力増強運動を行った。歩行動作能力の向上に伴い、X+61日からは段差昇降練習、大股歩行、横歩きなど動作練習やバランス練習を中心に実施した。最終評価(X+84日)では、感覚とMASは変化がなく、ROMは肩屈曲125/90、股伸展-5/-5、膝伸展-15/-10、足背屈5/5、MMTは肩屈曲4/3、肘屈曲4/3、体幹屈曲3、回旋3/3、股外転3/2+、膝伸展4/4、足底屈2/2であった。片脚立位は、右下肢支持は10秒、左下肢支持は5秒であった。10m歩行(杖)は17.9秒であった。歩容は左立脚期に認めたデュシャンヌ兆候による体幹の動揺が軽減し、ふらつきが見られなくなった。杖歩行自立となりX+87日に自宅退院となった。
【結論】
長期血液透析患者の増加に伴い、脊椎疾患を合併した患者も増加しているものの、頸髄症術後に対する理学療法の報告は非常に少ない。今回、頸髄症を発症した長期血液透析患者に対する術後理学療法で、筋力増強運動に加えて動作練習やバランス練習を行うことで歩行獲得に至った症例であった。