16:20 〜 16:30
[O-17-3] 姿勢改善が運動機能、目標達成率に与える影響について~整形外科クリニックにおける姿勢外来の取り組み~
キーワード:姿勢、GAS
【背景と目的】
昨今デスクワークやリモートワークの増加に伴い、それに関連した頚部から腰殿部にかけての疼痛は整形外科クリニックで頻度の高い愁訴となっている。その原因に不良姿勢があることは数多く報告されているが、姿勢改善による治療効果についての詳細は明らかでない。当院は「姿勢外来」を発足し姿勢治療に取り組んでおり、本研究の目的は姿勢の改善がもたらす治療効果について検討することである。
【方法】
当院で2021年10月から2022年3月に理学療法を行った患者のうち、姿勢改善を希望し受診した6例(平均年齢47.8±21.5、男性2名、女性4名)を対象とした。評価項目は姿勢評価、疼痛評価でNumeric Rating Scale(以下NRS)、閉眼での片脚立位保持時間(以下、片脚立位)、目標達成度でGoal attainment scaling(以下GAS)とした。姿勢評価は両側の肩峰、大転子、足関節外果をマーキングして写真撮影し、スマートフォンアプリケーション(Photo Measures Lite、Cubent社)を用いて解析した。前額面では両側肩峰を結んだ線と両側大転子を結んだ線が成す角度(以下、前額面角度)、矢状面では足関節外果を通る鉛直線と同線の肩峰高位より頭頂へ引いた線の成す角度(以下、矢状面角度)を算出した。治療の枠組みとしては、愁訴や不良姿勢の原因となる筋群を特定しハンドリングを用いての身体図式改善を主とした。各評価項目を理学療法開始時と2ヶ月後で測定し比較した。統計学的処理は介入前後比較にWilcoxon符号付順位和検定を、介入後の各パラメータ相関関係検討にSpearmanの順位相関分析を行い、統計学的有意水準は5%未満とした。
【結果】
介入前後の比較では、前額面角度、GASで優位に改善を認めた。NRS、片脚立位は改善傾向を認めたが有意差はなかった(各P=0.07, P=0.06)。矢状面角度では視覚的には改善したが、統計上の改善は認めなかった。各パラメータの相関関係は、GASと前額面角度で負の相関傾向を認めたが有意差はなく(P=0.06)、一方でGASと片脚立位の間には有意な正の相関を認めた。
【結論】
治療介入により前額面角度で主に改善を認めた。姿勢における前額面の特徴として、体幹側屈角度や骨盤の下制・挙上のアライメント、体幹筋活動との関係が報告されており、その中で片脚立位との関係性にも言及されている。本研究においても前額面角度の改善が片脚立位とGASの改善につながったことが示唆された。以上より、姿勢改善の治療は前額面を特に重視しての介入が重要であると考えられた。不良姿勢に介入し、特に前額面の改善を得ることで片脚立位とGASが改善した。本研究の限界はサンプルデータが小さいこと、姿勢測定の正確性が挙げられ、測定方法の見直しやデータ蓄積を継続する。
昨今デスクワークやリモートワークの増加に伴い、それに関連した頚部から腰殿部にかけての疼痛は整形外科クリニックで頻度の高い愁訴となっている。その原因に不良姿勢があることは数多く報告されているが、姿勢改善による治療効果についての詳細は明らかでない。当院は「姿勢外来」を発足し姿勢治療に取り組んでおり、本研究の目的は姿勢の改善がもたらす治療効果について検討することである。
【方法】
当院で2021年10月から2022年3月に理学療法を行った患者のうち、姿勢改善を希望し受診した6例(平均年齢47.8±21.5、男性2名、女性4名)を対象とした。評価項目は姿勢評価、疼痛評価でNumeric Rating Scale(以下NRS)、閉眼での片脚立位保持時間(以下、片脚立位)、目標達成度でGoal attainment scaling(以下GAS)とした。姿勢評価は両側の肩峰、大転子、足関節外果をマーキングして写真撮影し、スマートフォンアプリケーション(Photo Measures Lite、Cubent社)を用いて解析した。前額面では両側肩峰を結んだ線と両側大転子を結んだ線が成す角度(以下、前額面角度)、矢状面では足関節外果を通る鉛直線と同線の肩峰高位より頭頂へ引いた線の成す角度(以下、矢状面角度)を算出した。治療の枠組みとしては、愁訴や不良姿勢の原因となる筋群を特定しハンドリングを用いての身体図式改善を主とした。各評価項目を理学療法開始時と2ヶ月後で測定し比較した。統計学的処理は介入前後比較にWilcoxon符号付順位和検定を、介入後の各パラメータ相関関係検討にSpearmanの順位相関分析を行い、統計学的有意水準は5%未満とした。
【結果】
介入前後の比較では、前額面角度、GASで優位に改善を認めた。NRS、片脚立位は改善傾向を認めたが有意差はなかった(各P=0.07, P=0.06)。矢状面角度では視覚的には改善したが、統計上の改善は認めなかった。各パラメータの相関関係は、GASと前額面角度で負の相関傾向を認めたが有意差はなく(P=0.06)、一方でGASと片脚立位の間には有意な正の相関を認めた。
【結論】
治療介入により前額面角度で主に改善を認めた。姿勢における前額面の特徴として、体幹側屈角度や骨盤の下制・挙上のアライメント、体幹筋活動との関係が報告されており、その中で片脚立位との関係性にも言及されている。本研究においても前額面角度の改善が片脚立位とGASの改善につながったことが示唆された。以上より、姿勢改善の治療は前額面を特に重視しての介入が重要であると考えられた。不良姿勢に介入し、特に前額面の改善を得ることで片脚立位とGASが改善した。本研究の限界はサンプルデータが小さいこと、姿勢測定の正確性が挙げられ、測定方法の見直しやデータ蓄積を継続する。