16:30 〜 16:40
[O-17-4] 肩腱板損傷の術後、屈曲可動域制限に対し外旋可動域に着目した一症例
キーワード:1st外旋可動域、烏口上腕靱帯、屈曲可動域
【症例紹介】
50歳代、女性。診断名は左肩腱板損傷。誘因なく左肩関節に疼痛が出現し、当院を受診され、鏡視下腱板修復術(SSP-ARCR)を施行。手術所見として腱板疎部の完全閉鎖、肩峰下滑液包の重度狭小化、棘上筋付着部の変性および小断裂を認めた。
【評価とリーズニング】
当院では、腱板修復術後翌日から他動での関節可動域(以下ROM)練習開始、術後6週後から自動ROM練習を開始している。初期評価(術後6週目)のROM(自動/他動)は、肩関節屈曲70°/135°、1st外旋0°/15°、内転-5°/0°であった。筋力は、棘上筋、棘下筋、前鋸筋の低下を認めた。アライメントは、左肩甲骨軽度下制・下方回旋位、肩関節内旋位で上腕骨頭の前上方偏位を認めた。肩関節自動屈曲では、初期に肩甲骨外転が出現し、屈曲45°付近で肩関節水平内転、肩甲骨上方回旋による代償を認め、その後体幹伸展の代償が出現し、屈曲70°が限度であった。治療場面において1st外旋ROMの向上に伴い、他動屈曲のROM向上を認めた。
【介入と結果】
1st外旋ROMの向上を図るため、烏口上腕靱帯および小胸筋、大胸筋に対し、徒手的に圧迫、持続伸張を行った。1st外旋ROMの向上を認めた後に、屈曲方向のストレッチや持続伸張などを行い、獲得した屈曲ROMを自動介助運動で反復練習をした。さらに肩甲帯の代償を抑制しながら、棘上筋トレーニングを実施した。また自主練習は、介入時と同じ順番で実施するよう指導した。最終評価(術後8週目)では、ROM(自動/他動)として、肩関節屈曲125°/145°、1st外旋10°/30°に向上した。筋力は棘上筋、棘下筋、前鋸筋ともに初期よりも向上を認めた。肩関節自動屈曲では、開始初期の肩甲骨外転は残存したが、肩甲帯の代償は屈曲70°付近、体幹伸展の代償は屈曲115°付近まで認めず、125°まで屈曲が可能となった。
【結論】
本症例は、1st外旋ROM向上とともに、自動および他動屈曲ROM向上を認めた。このことから、1st外旋ROMが屈曲ROMに関与している可能性があると考えられた。肩甲上腕関節のアライメントにおいて、安静時から上腕骨頭の前上方偏位を認め、肩関節屈曲運動時の上腕骨頭の後下方への滑り運動が低下していた。術所見から肩関節前上方の狭小化は著明であり、烏口上腕靱帯の柔軟性低下が上腕骨頭を前上方へ偏位させるといわれることから、烏口上腕靱帯の柔軟性低下が屈曲制限に影響していると考えた。それらの評価をもとに治療した結果、烏口上腕靱帯周辺組織の柔軟性が向上したことで、1st外旋ROMの拡大となり、屈曲運動時の上腕骨頭の後下方への滑り運動が改善し、他動屈曲ROMが拡大したと考えられた。また、1st外旋ROM拡大により、棘下筋の外旋域での筋発揮が可能となり、自動屈曲ROMが拡大し、ADL上の制限が改善したと考えた。
【倫理的配慮、説明と同意】
本研究は当院倫理委員会の承認を得た。なお、本人には趣旨を説明し、同意を得た。
50歳代、女性。診断名は左肩腱板損傷。誘因なく左肩関節に疼痛が出現し、当院を受診され、鏡視下腱板修復術(SSP-ARCR)を施行。手術所見として腱板疎部の完全閉鎖、肩峰下滑液包の重度狭小化、棘上筋付着部の変性および小断裂を認めた。
【評価とリーズニング】
当院では、腱板修復術後翌日から他動での関節可動域(以下ROM)練習開始、術後6週後から自動ROM練習を開始している。初期評価(術後6週目)のROM(自動/他動)は、肩関節屈曲70°/135°、1st外旋0°/15°、内転-5°/0°であった。筋力は、棘上筋、棘下筋、前鋸筋の低下を認めた。アライメントは、左肩甲骨軽度下制・下方回旋位、肩関節内旋位で上腕骨頭の前上方偏位を認めた。肩関節自動屈曲では、初期に肩甲骨外転が出現し、屈曲45°付近で肩関節水平内転、肩甲骨上方回旋による代償を認め、その後体幹伸展の代償が出現し、屈曲70°が限度であった。治療場面において1st外旋ROMの向上に伴い、他動屈曲のROM向上を認めた。
【介入と結果】
1st外旋ROMの向上を図るため、烏口上腕靱帯および小胸筋、大胸筋に対し、徒手的に圧迫、持続伸張を行った。1st外旋ROMの向上を認めた後に、屈曲方向のストレッチや持続伸張などを行い、獲得した屈曲ROMを自動介助運動で反復練習をした。さらに肩甲帯の代償を抑制しながら、棘上筋トレーニングを実施した。また自主練習は、介入時と同じ順番で実施するよう指導した。最終評価(術後8週目)では、ROM(自動/他動)として、肩関節屈曲125°/145°、1st外旋10°/30°に向上した。筋力は棘上筋、棘下筋、前鋸筋ともに初期よりも向上を認めた。肩関節自動屈曲では、開始初期の肩甲骨外転は残存したが、肩甲帯の代償は屈曲70°付近、体幹伸展の代償は屈曲115°付近まで認めず、125°まで屈曲が可能となった。
【結論】
本症例は、1st外旋ROM向上とともに、自動および他動屈曲ROM向上を認めた。このことから、1st外旋ROMが屈曲ROMに関与している可能性があると考えられた。肩甲上腕関節のアライメントにおいて、安静時から上腕骨頭の前上方偏位を認め、肩関節屈曲運動時の上腕骨頭の後下方への滑り運動が低下していた。術所見から肩関節前上方の狭小化は著明であり、烏口上腕靱帯の柔軟性低下が上腕骨頭を前上方へ偏位させるといわれることから、烏口上腕靱帯の柔軟性低下が屈曲制限に影響していると考えた。それらの評価をもとに治療した結果、烏口上腕靱帯周辺組織の柔軟性が向上したことで、1st外旋ROMの拡大となり、屈曲運動時の上腕骨頭の後下方への滑り運動が改善し、他動屈曲ROMが拡大したと考えられた。また、1st外旋ROM拡大により、棘下筋の外旋域での筋発揮が可能となり、自動屈曲ROMが拡大し、ADL上の制限が改善したと考えた。
【倫理的配慮、説明と同意】
本研究は当院倫理委員会の承認を得た。なお、本人には趣旨を説明し、同意を得た。