第34回大阪府理学療法学術大会

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Olal session

事前公開

[O-18] 一般演題(呼吸②)

Sun. Jul 3, 2022 4:00 PM - 4:45 PM 会場6 (12階 特別会議場)

座長:山科 吉弘(藍野大学)

4:30 PM - 4:40 PM

[O-18-4] サルコペニアと低栄養が原因で、杖歩行獲得に難渋した血液透析患者の一症例

佐々木 海人, 松藤 勝太, 芦田 征丈, 山口 勝生 (愛仁会 井上病院技術部 リハビリテーション科)

Keywords:誤嚥性肺炎、低栄養

【症例紹介】
60代後半、男性。併存疾患は慢性腎不全(血液透析歴2年)、糖尿病、慢性心不全である。 既往歴は咽頭癌がある。X日に誤嚥性肺炎を発症した。X-10年から 咽頭癌の後遺症で、食事摂取が困難であり、X+22日に胃瘻を造設した。
【評価とリーズニング】
初期評価では、BMIは13.82㎏/m、MMT(右/左)は腹筋群3、中殿筋3/3、大腿四頭筋3/3、下腿三頭筋2+/2+、ROMの著明な制限はなし 、血液データはアルブミン1.7g/dl、FIMは65点で、起居・移乗は見守り、歩行はふらつきが原因で杖歩行軽介助であった 。年齢・握力・下腿周径の合計点で判断するサルコペニアのスクリーニングテストでは、サルコペニアと診断された。また、BMI・アルブミン・総コレステロール・クレアチニンで判断される血液透析患者の栄養評価法では、低栄養の高リスク群と診断された。入院前は杖歩行で透析通院されていたものの、筋力低下・サルコペニア・低栄養が原因で、ふらつきが強く杖歩行自立は困難であった。問題点は、歩行時のふらつきが原因による杖歩行自立の困難 、自宅での入浴時の跨ぎ動作が困難の2点を挙げた。血液透析患者は、サルコペニアといった骨格筋の退行性変化を伴う場合が多く、身体機能が低下すると報告されている。さらに、今回の誤嚥性肺炎による胃瘻造設や熱発、低栄養状態からも筋力が向上しづらいことが考えられた。そのため、杖歩行軽介助また見守りでの透析通院、妻またはヘルパー介助での浴槽の跨ぎ動作の獲得を目標にした。
【介入と結果】
入院中、貧血・慢性誤嚥による発熱と、低栄養状態のためDr.より歩行練習中止(X+35日~46日)の指示があった。その間は、本人のその日の体調に合わせて、軽負荷の筋力増強運動や立位練習などを実施した。 しかし、歩行練習再開後はふらつきがさらに強くなり、杖歩行自立が困難であった。そのため、腋窩介助での杖歩行練習、筋力増強運動、バランス練習など徐々に負荷量を上げながら介入した。その結果、最終時のBMIは13.41㎏/m、腹筋群2、中殿筋3/3、大腿四頭筋4-/4-、アルブミン2.2 g/dl、FIM109点となった。歩行はふらつきが軽減し杖歩行200mを行えるようになった。入浴時の跨ぎ動作は、動作練習を繰り返し行っていき、福祉用具を使用し対応していくこととした。 X+54日に杖歩行で見守りとなり、退院後の透析通院も妻の介助で可能となった。
【結論】
サルコペニアと低栄養の上、病態の悪化により一時的に歩行練習が行えなかったことで歩行時のふらつきが強くなった症例であった。しかし、本人の症状を考慮しながら軽負荷による運動を継続できたことで、歩行能力の改善ができた。