第34回大阪府理学療法学術大会

講演情報

ポスター 一般演題

事前公開

[P-01] ポスター演題①

2022年7月3日(日) 12:35 〜 13:25 会場8 (12階 12Fホワイエ)

座長:大槻 哲也(訪問看護ステーションMARE)

13:11 〜 13:23

[P-01-4] 回復期リハビリテーション病棟の脳血管疾患患者と整形外科疾患患者における入眠前後の遠位-近位部皮膚温度勾配の基礎的知見

井上 陽介1, 中川 友紀2 (1.医療法人協和会千里中央病院リハビリテーション科, 2.大阪人間科学大学保健医療学部)

キーワード:皮膚温度、睡眠

【背景と目的】入院中の患者は入眠困難が発生しやすくリハビリテーションの進行を妨げる報告がされている。睡眠は皮膚温度の変動と関連があると報告されているが入院患者を対象とした睡眠と皮膚温度との関連性について実証した研究報告は見当たらない。今回、入眠のタイミングを予測する指標として提唱されている遠位-近位部皮膚温度勾配(以下、distal-proximal skin-temperature gradient:DPG)を調査し、入院患者の睡眠障害改善に向けて疾患別の基礎的知見を得ることを目的とした。
【方法】A病院に入院している患者5名に対して1日の皮膚温度を測定し睡眠前後でのDPGを算出した。対象は回復期リハビリテーション病棟に入院しているMMSE24点以上の65歳以上の高齢者5名(軽度麻痺1名と重度麻痺1名の脳血管疾患2名、整形外科疾患3名。男性2名、女性3名。年齢平均74.6±4.5歳)。基本属性は年齢、性別、BMI、疾患、麻痺の重症度について医療記録より情報収集した。皮膚温度測定にはワイヤレス体表皮膚温度計「iButton DS1922T」(Maxim社製、Thermochron)を使用した。測定箇所として、「近位皮膚温度」は左右鎖骨下、「遠位皮膚温度」は手首掌側、足首の計6箇所とし、1分間隔で24時間連続的に皮膚温度を測定した。DPGは遠位皮膚温度から近位皮膚温度を減した値から算出した。入眠時刻10分前から10分後までのDPGの変化について、測定時刻1分毎にDPGを算出した。睡眠測定機器ライフ顕微鏡を片手首に装着して、入眠時刻を判断した。
【結果】整形外科疾患3名は入眠10分前から入眠10分後にかけてDPGの値が増加傾向となり、マイナス値(-1.68±0.19℃)から0に近づいた(-1.47±0.21℃)。
脳血管疾患2名のうち、軽度麻痺の対象者は入眠10分前から入眠10分後にかけてDPGの値が増加傾向となり、マイナス値(-0.98℃)から0に近づきプラス値(0.05℃)となった。一方で重度麻痺の対象者は入眠10分前から入眠10分後以降にかけてDPGは常に1℃を超えており(1.43℃)、入眠10分後も著明な変動は認めなかった(1.61℃)。
【結論】起床時は近位皮膚温度より遠位皮膚温度が低体温なのでDPGの値はマイナス値となる。入眠に近づくと遠位皮膚温度は上昇し、近位皮膚温度は下降して、遠位皮膚温度と近位皮膚温度が近づく。DPGが0℃に近づくことで、眠気が誘発すると報告されている。本研究でも整形外科疾患患者は通常のDPGの変動と同様の推移を認めた。一方で軽度麻痺の脳血管疾患患者は入眠10分後はプラス値を認めた。重度麻痺の患者は入眠前から入眠後にかけて大きな変動なく、常にプラス値で推移した。脳血管疾患は脳損傷により自律神経障害を引き起こす為、体温調節障害を認めるとされている。その為、脳血管疾患の対象者はDPGの変動の異常を認めたと考える。入眠とDPGの変動は密接に関係していると報告されていることから、脳血管疾患対象者の睡眠の質が低下している可能性が推測された。