14:10 〜 14:25
[SO-01-1] JKOM effectivenessは術前の値に影響されない指標になり得るのか
キーワード:QOL、JKOM effectiveness
【背景と目的】
変形性膝関節症(以下、膝OA)患者の疾患特異的QOL評価は、日本版変形性膝関節症患者機能評価表(以下、JKOM)が広く用いられている。ただし、JKOMはFunctional Impairment Measurement(以下、FIM)と同様に天井効果が懸念され、介入前後の改善度を判断する場合、介入前の値が高いほど変化量が小さくなるといった問題点が指摘されている。FIMではこの問題点を克服する方法として、FIM effectiveness=(介入後FIM-介入前FIM)/(126点-介入前FIM)が用いられている。一方、疾患特異的QOL指標では、このeffectivenessを用いた報告は少ない。そこで本研究は、人工膝関節置換術を施行された患者を対象に、術前を介入前、術後12ヶ月を介入後として、JKOMの介入前後の変化量(以下、JKOM変化量)とJKOM effectiveness(以下、JKOM-e)=(介入後JKOM-介入前JKOM)/(100-介入前JKOM)を算出し、それぞれに影響を及ぼす因子からJKOM変化量とJKOM-eの有用性について検討することとした。
【方法】
対象は、当院にて人工膝関節置換術を施行された膝OA患者25名(男性7名、女性18名、年齢76.2±6.1歳)とした。
全ての評価は術前と術後12ヶ月に行い、JKOMの他、身体機能として膝関節屈伸可動域、膝伸展筋力、5m歩行時間、TUG、階段昇降テスト、身体組成を計測した。疼痛程度はVAS、精神心理機能として破局的思考はPain Catastrophizing Scale(以下、PCS)、不安・抑うつはHospital Anxiety and Depression Scale(以下、HADS)を測定した。
統計学的解析は、JKOM変化量およびJKOM-eと各測定値の変化量との関連についてPearsonの積率相関係数を用いた。さらに、JKOM変化量およびJKOM-eを従属変数とし、JKOM変化量およびJKOM-eと有意な相関が認められた項目を独立変数として、重回帰分析(ステップワイズ法)を用いた。なお、統計学的有意水準は5%とした。
【結果】
JKOM変化量は、PCSの無力感(r=0.43)およびHADSの不安(r=0.50)との間に有意な相関が認められ、重回帰分析の結果、PCSの無力感(β=0.43)とHADSの不安(β=0.50)が影響因子として抽出された。JKOM-eは、PCSの無力感(r=0.49)、PCS拡大視(r=0.39)、HADS不安(r=0.70)との間に有意な相関が認められ、重回帰分析の結果、PCSの無力感(β=0.48)、HADSの不安(β=0.70)が影響因子として抽出された。
【結論】
人工膝関節置換術後の長期的なJKOMの改善を評価する指標として、JKOM変化量およびJKOM-eを用い、それらの有用性を検証した。その結果、JKOM-eの影響因子はPCSの無力感とHADSの不安が抽出され、JKOM変化量と同様であった。このことからJKOMには天井効果が認められず、介入後の値が介入前の値に影響しにくいことがわかり、術後のQOL評価としてJKOM-eを算出しなくてもJKOM変化量で十分に有用であることを明らかにした。また、術後に無力感や不安に対する介入を加えることで、QOLをより一層改善させる可能性を示した。
変形性膝関節症(以下、膝OA)患者の疾患特異的QOL評価は、日本版変形性膝関節症患者機能評価表(以下、JKOM)が広く用いられている。ただし、JKOMはFunctional Impairment Measurement(以下、FIM)と同様に天井効果が懸念され、介入前後の改善度を判断する場合、介入前の値が高いほど変化量が小さくなるといった問題点が指摘されている。FIMではこの問題点を克服する方法として、FIM effectiveness=(介入後FIM-介入前FIM)/(126点-介入前FIM)が用いられている。一方、疾患特異的QOL指標では、このeffectivenessを用いた報告は少ない。そこで本研究は、人工膝関節置換術を施行された患者を対象に、術前を介入前、術後12ヶ月を介入後として、JKOMの介入前後の変化量(以下、JKOM変化量)とJKOM effectiveness(以下、JKOM-e)=(介入後JKOM-介入前JKOM)/(100-介入前JKOM)を算出し、それぞれに影響を及ぼす因子からJKOM変化量とJKOM-eの有用性について検討することとした。
【方法】
対象は、当院にて人工膝関節置換術を施行された膝OA患者25名(男性7名、女性18名、年齢76.2±6.1歳)とした。
全ての評価は術前と術後12ヶ月に行い、JKOMの他、身体機能として膝関節屈伸可動域、膝伸展筋力、5m歩行時間、TUG、階段昇降テスト、身体組成を計測した。疼痛程度はVAS、精神心理機能として破局的思考はPain Catastrophizing Scale(以下、PCS)、不安・抑うつはHospital Anxiety and Depression Scale(以下、HADS)を測定した。
統計学的解析は、JKOM変化量およびJKOM-eと各測定値の変化量との関連についてPearsonの積率相関係数を用いた。さらに、JKOM変化量およびJKOM-eを従属変数とし、JKOM変化量およびJKOM-eと有意な相関が認められた項目を独立変数として、重回帰分析(ステップワイズ法)を用いた。なお、統計学的有意水準は5%とした。
【結果】
JKOM変化量は、PCSの無力感(r=0.43)およびHADSの不安(r=0.50)との間に有意な相関が認められ、重回帰分析の結果、PCSの無力感(β=0.43)とHADSの不安(β=0.50)が影響因子として抽出された。JKOM-eは、PCSの無力感(r=0.49)、PCS拡大視(r=0.39)、HADS不安(r=0.70)との間に有意な相関が認められ、重回帰分析の結果、PCSの無力感(β=0.48)、HADSの不安(β=0.70)が影響因子として抽出された。
【結論】
人工膝関節置換術後の長期的なJKOMの改善を評価する指標として、JKOM変化量およびJKOM-eを用い、それらの有用性を検証した。その結果、JKOM-eの影響因子はPCSの無力感とHADSの不安が抽出され、JKOM変化量と同様であった。このことからJKOMには天井効果が認められず、介入後の値が介入前の値に影響しにくいことがわかり、術後のQOL評価としてJKOM-eを算出しなくてもJKOM変化量で十分に有用であることを明らかにした。また、術後に無力感や不安に対する介入を加えることで、QOLをより一層改善させる可能性を示した。