14:40 〜 14:55
[SO-01-3] 感染予防具による体温変動が注意機能に与える影響 【卒業研究】
キーワード:注意機能、感染予防具
【背景と目的】
COVID-19の感染拡大が懸念されている中で,現在も医療・福祉の現場では感染予防対策として感染予防具の装着が必要不可欠となっている.しかし,一般を対象に環境省はマスク着用による熱中症予防に対する啓蒙活動を行うほどであり,マスク1つにしても熱中症の危険が危惧されている.これらのような感染予防具が身体に及ぼす報告は皆無に等しい.このため,感染予防具を装着した環境で理学療法業務を実施した際に,予測される暑熱環境下が注意機能に与える影響を検証することで,理学療法業務に支障を及ぼす可能性を調査した.これらが明確になることで,臨床現場で感染予防具を着用した業務を遂行する際の医療従事者側のリスク管理に対する一助となると考えた.
【方法】
本校理学療法士学科昼間部3年生男子学生の11名を対象とした.被験者は感染予防具を装着する装着群と感染予防具を装着しない非装着群に分け,クロスオーバー試験を実施した.課題はセザムベッド上背臥位姿勢の患者役を車椅子に移乗し,3m先のプラットフォームに移乗し背臥位姿勢をとらせる.これは本校中間年次に実施している実技OSCEと同様の課題であり患者の介助量も同様に中等度の介助とした.これを20分間(6往復)繰り返し行った.測定項目は運動課題を実施する前後にTMT-B,鼓膜音,体重,VAS(不快感)を測定し,装着群と非装着群のそれぞれで課題前後の変化を対応のある t 検定およびWilcoxonの符号付順位和検定を用いて解析した.いずれも有意差判定の基準は危険率5%未満とした.
【結果】
予備実験の結果より,装着群で平均0.8℃の体温の上昇を認め,非装着群では表面温度の上昇は認めなかった.本実験の結果では,TMT-Bの遂行時間は,非装着群で課題前33.8±8.09秒,課題後では32.3±11.0秒(p=0.4),装着群では課題前36.5±10.4秒,課題後35.7±10.56秒であり(p=0.79),装着群で課題前後の両者に3秒ほど延長を認めた.課題前後の鼓膜音変化では装着群は0.15℃低下,非装着群では0.16℃低下した(p=0.66).VASによる不快感では,非装着群で4.2±0.8,装着群で5.7±0.9であった(p=0.96).発汗量では,非装着群90.9g,装着群190.9gと装着群で増加傾向が見られた.これらの項目においていずれも有意差は認められなかった.
【結論】
本研究では感染予防具を装着し,理学療法業務を実施した際,注意機能に与える影響を検証した.TMT‐B,VAS(不快感),発汗量,鼓膜音で有意差が見られなかったことから,20分間の身体介助では感染予防具の有無に関わらず判断力の影響は少ないと考えられる.また,感染予防具を着用していても20分間であれば身体には装着していない場合と同様の運動生理学的変化を示すことが分かった
COVID-19の感染拡大が懸念されている中で,現在も医療・福祉の現場では感染予防対策として感染予防具の装着が必要不可欠となっている.しかし,一般を対象に環境省はマスク着用による熱中症予防に対する啓蒙活動を行うほどであり,マスク1つにしても熱中症の危険が危惧されている.これらのような感染予防具が身体に及ぼす報告は皆無に等しい.このため,感染予防具を装着した環境で理学療法業務を実施した際に,予測される暑熱環境下が注意機能に与える影響を検証することで,理学療法業務に支障を及ぼす可能性を調査した.これらが明確になることで,臨床現場で感染予防具を着用した業務を遂行する際の医療従事者側のリスク管理に対する一助となると考えた.
【方法】
本校理学療法士学科昼間部3年生男子学生の11名を対象とした.被験者は感染予防具を装着する装着群と感染予防具を装着しない非装着群に分け,クロスオーバー試験を実施した.課題はセザムベッド上背臥位姿勢の患者役を車椅子に移乗し,3m先のプラットフォームに移乗し背臥位姿勢をとらせる.これは本校中間年次に実施している実技OSCEと同様の課題であり患者の介助量も同様に中等度の介助とした.これを20分間(6往復)繰り返し行った.測定項目は運動課題を実施する前後にTMT-B,鼓膜音,体重,VAS(不快感)を測定し,装着群と非装着群のそれぞれで課題前後の変化を対応のある t 検定およびWilcoxonの符号付順位和検定を用いて解析した.いずれも有意差判定の基準は危険率5%未満とした.
【結果】
予備実験の結果より,装着群で平均0.8℃の体温の上昇を認め,非装着群では表面温度の上昇は認めなかった.本実験の結果では,TMT-Bの遂行時間は,非装着群で課題前33.8±8.09秒,課題後では32.3±11.0秒(p=0.4),装着群では課題前36.5±10.4秒,課題後35.7±10.56秒であり(p=0.79),装着群で課題前後の両者に3秒ほど延長を認めた.課題前後の鼓膜音変化では装着群は0.15℃低下,非装着群では0.16℃低下した(p=0.66).VASによる不快感では,非装着群で4.2±0.8,装着群で5.7±0.9であった(p=0.96).発汗量では,非装着群90.9g,装着群190.9gと装着群で増加傾向が見られた.これらの項目においていずれも有意差は認められなかった.
【結論】
本研究では感染予防具を装着し,理学療法業務を実施した際,注意機能に与える影響を検証した.TMT‐B,VAS(不快感),発汗量,鼓膜音で有意差が見られなかったことから,20分間の身体介助では感染予防具の有無に関わらず判断力の影響は少ないと考えられる.また,感染予防具を着用していても20分間であれば身体には装着していない場合と同様の運動生理学的変化を示すことが分かった