14:55 〜 15:10
[SO-01-4] 体外式膜型人工心肺装着中の腹臥位療法が酸素化の改善に寄与したと考えられた重症レジオネラ肺炎の症例
キーワード:体外式膜型人工心肺、腹臥位療法
【症例紹介】
60歳台男性.バイク事故にて受傷された.救急隊到着時にはJCS-300であり,気管内挿管され当院救命救急センターへ緊急搬送された.CTにて脳挫傷,くも膜下出血,誤嚥性肺炎,左鎖骨,第3,第5肋骨骨折と診断された.人工呼吸器管理,脳低温療法開始となり,第6病日より人工呼吸器離脱・二次障害予防を目標にリハビリテーション開始となった.第7病日にレジオネラ感染が判明,P/F比は75(人工呼吸器BIPAPモード,FiO2 70,PEEP14mmHg)であり呼吸状態の急激な悪化を認め,重症非定型肺炎の診断となりVV-ECMO導入された.
【評価とリーズニング】
意識レベルは鎮静管理下にてRASS‐5,血圧150/70mmHg(ノルアドレナリン0.05γ),心拍数113bpm,SpO2 88-91%,人工呼吸器の設定はCPAPモード,FiO2 0.4,PEEP 8cmH2O,1回換気量は250ml,呼吸回数20回/分であった.VV-ECMOの設定は流量 4.3 L/分,回転数 2500 rpmであった.身体所見としては,呼吸補助筋の活動や努力呼吸は認めなかった.聴診では両側前胸部で,吸気呼気時の水泡音,左下肺野では呼吸音減弱を認めた.胸郭は左優位に可動域が低下していた.胸部レントゲンでは両肺野に広範囲な浸潤影を認めた.泡沫状痰が多く,30分ごとの吸引が必要であった.胸部聴診と画像所見から,左下肺野を主とした両下肺野の広範な無気肺,気道分泌物の貯留が推察され,腹臥位による体位ドレナージの適応と考えた.
【介入と結果】
完全側臥位で脳圧・循環動態の変動が無いことを確認した.腹臥位療法は十分な人員が確保できた1日2時間として,第11病日より3日間実施した.実施後は粘稠度の低い多量の黄色膿性痰が吸引され,呼吸音の改善を確認した.また,一回換気量が250mlから350mlへと上昇,SpO2は92%から96%へと即時効果を認めた.体位管理に伴う脳圧・循環動態の変動,カテーテルの事故抜去は発生しなかった.第14病日には胸部レントゲンで浸潤影の改善,血液ガス分析では酸素化の改善を認め(P/F比=163),VV-ECMO離脱した.遷延性意識障害と人工呼吸器管理を含めた加療継続が必要であり,第61病日に他院転院となった.
【結論】
ECMO中の腹臥位療法に関するエビデンスは限定的であり,実施する際の方法論は定まっていない.本症例の経験から,短時間の腹臥位療法は多職種の関りにより安全に実施可能であり,気道分泌のドレナージに有効であると考えられた.
60歳台男性.バイク事故にて受傷された.救急隊到着時にはJCS-300であり,気管内挿管され当院救命救急センターへ緊急搬送された.CTにて脳挫傷,くも膜下出血,誤嚥性肺炎,左鎖骨,第3,第5肋骨骨折と診断された.人工呼吸器管理,脳低温療法開始となり,第6病日より人工呼吸器離脱・二次障害予防を目標にリハビリテーション開始となった.第7病日にレジオネラ感染が判明,P/F比は75(人工呼吸器BIPAPモード,FiO2 70,PEEP14mmHg)であり呼吸状態の急激な悪化を認め,重症非定型肺炎の診断となりVV-ECMO導入された.
【評価とリーズニング】
意識レベルは鎮静管理下にてRASS‐5,血圧150/70mmHg(ノルアドレナリン0.05γ),心拍数113bpm,SpO2 88-91%,人工呼吸器の設定はCPAPモード,FiO2 0.4,PEEP 8cmH2O,1回換気量は250ml,呼吸回数20回/分であった.VV-ECMOの設定は流量 4.3 L/分,回転数 2500 rpmであった.身体所見としては,呼吸補助筋の活動や努力呼吸は認めなかった.聴診では両側前胸部で,吸気呼気時の水泡音,左下肺野では呼吸音減弱を認めた.胸郭は左優位に可動域が低下していた.胸部レントゲンでは両肺野に広範囲な浸潤影を認めた.泡沫状痰が多く,30分ごとの吸引が必要であった.胸部聴診と画像所見から,左下肺野を主とした両下肺野の広範な無気肺,気道分泌物の貯留が推察され,腹臥位による体位ドレナージの適応と考えた.
【介入と結果】
完全側臥位で脳圧・循環動態の変動が無いことを確認した.腹臥位療法は十分な人員が確保できた1日2時間として,第11病日より3日間実施した.実施後は粘稠度の低い多量の黄色膿性痰が吸引され,呼吸音の改善を確認した.また,一回換気量が250mlから350mlへと上昇,SpO2は92%から96%へと即時効果を認めた.体位管理に伴う脳圧・循環動態の変動,カテーテルの事故抜去は発生しなかった.第14病日には胸部レントゲンで浸潤影の改善,血液ガス分析では酸素化の改善を認め(P/F比=163),VV-ECMO離脱した.遷延性意識障害と人工呼吸器管理を含めた加療継続が必要であり,第61病日に他院転院となった.
【結論】
ECMO中の腹臥位療法に関するエビデンスは限定的であり,実施する際の方法論は定まっていない.本症例の経験から,短時間の腹臥位療法は多職種の関りにより安全に実施可能であり,気道分泌のドレナージに有効であると考えられた.