[SO-02-1] 延髄外側梗塞によりLateropulsionを伴いバランス障害を呈した一症例に対するGVSの効果
キーワード:左延髄外側梗塞、Lateropulsion
【症例紹介】
50歳代男性。診断名は左延髄外側梗塞。X日、めまい、頭痛を自覚し当院へ救急搬送され、
頭部MRIにて延髄左背外側部に高信号域を認めた。X+1日から理学療法を開始し、立位、歩行時に左側偏倚を認め、独歩は軽介助を要した。X+19日に当院回復期リハビリテーション病棟へ入棟し、歩行練習や下肢筋力増強運動を継続したが、X+39日の時点で左側偏倚に改善を認めなかった。
今回、延髄外側梗塞により立位バランスおよび歩行障害を呈した症例に対し、Lateropulsion(以下LP)の評価ならびに直流前庭刺激(Galvanic Vestibular Stimulation,以下GVS)を使用した結果、独歩自立に至ったので経過を報告する。
【評価とリーズニング】
X+39日目の評価は、下肢筋力はMMT5/5、感覚は表在感覚および深部感覚ともに正常、温痛覚障害は左顔面と右上下肢に認めた。運動失調はScale for the assessment and rating of ataxia(以下SARA)で5点(歩行2点、立位1点、指鼻試験1点、踵すね試験1点)、Functional Balance Scale(以下FBS)は44点であった。また重心動揺計(UM-BARⅡ)を用いた評価は矩形面積121.5cm、前後方向への単位軌跡長9.9㎜/s、左右への単位軌跡長11.0㎜/sであった。前庭機能の評価はSubject Visual Vertical(以下SVV)で、左へ10°偏倚していた。LPの重症度はLateropulsion GradeⅡで、立位、歩行時に左側偏倚を認め、独歩は軽介助を要した。
過去の研究ではLPの原因に前庭機能が関与することが報告されており、本症例においても画像所見およびSVVから責任病巣は前庭神経核と推察した。一方GVSは前庭脊髄路を賦活し、前庭機能障害を改善することが報告されている。そのため、前庭機能障害に起因すると推察された本症例のLPにGVSが有効であると考え、運動療法と並行してGVSを実施した。
【介入と結果】
GVS はIntelect Advenced Combo(chattanooga 社製)を用い、頻度は週に5日実施した。電極は陰極を左側、陽極を右側の乳様突起に装着し、運動療法前に立位で2.0mAの強度で20分間実施した。
X+74日目の評価は、FBSは55点、重心動揺計では、矩形面積79.7mm、前後方向への単位軌跡長8.4㎜/s、左右方向への単位軌跡長8.7㎜/s、SVVは0°であった。姿勢、動作分析では立位、歩行時の左側偏倚は改善し、独歩は自立レベルとなり、LPは認めなかった。またX+101日目に独歩で退院した。
【結論】
GVSは延髄外側梗塞によるLPに対して効果的であり、立位バランスならびに歩行障害を改善させる可能性がある。
50歳代男性。診断名は左延髄外側梗塞。X日、めまい、頭痛を自覚し当院へ救急搬送され、
頭部MRIにて延髄左背外側部に高信号域を認めた。X+1日から理学療法を開始し、立位、歩行時に左側偏倚を認め、独歩は軽介助を要した。X+19日に当院回復期リハビリテーション病棟へ入棟し、歩行練習や下肢筋力増強運動を継続したが、X+39日の時点で左側偏倚に改善を認めなかった。
今回、延髄外側梗塞により立位バランスおよび歩行障害を呈した症例に対し、Lateropulsion(以下LP)の評価ならびに直流前庭刺激(Galvanic Vestibular Stimulation,以下GVS)を使用した結果、独歩自立に至ったので経過を報告する。
【評価とリーズニング】
X+39日目の評価は、下肢筋力はMMT5/5、感覚は表在感覚および深部感覚ともに正常、温痛覚障害は左顔面と右上下肢に認めた。運動失調はScale for the assessment and rating of ataxia(以下SARA)で5点(歩行2点、立位1点、指鼻試験1点、踵すね試験1点)、Functional Balance Scale(以下FBS)は44点であった。また重心動揺計(UM-BARⅡ)を用いた評価は矩形面積121.5cm、前後方向への単位軌跡長9.9㎜/s、左右への単位軌跡長11.0㎜/sであった。前庭機能の評価はSubject Visual Vertical(以下SVV)で、左へ10°偏倚していた。LPの重症度はLateropulsion GradeⅡで、立位、歩行時に左側偏倚を認め、独歩は軽介助を要した。
過去の研究ではLPの原因に前庭機能が関与することが報告されており、本症例においても画像所見およびSVVから責任病巣は前庭神経核と推察した。一方GVSは前庭脊髄路を賦活し、前庭機能障害を改善することが報告されている。そのため、前庭機能障害に起因すると推察された本症例のLPにGVSが有効であると考え、運動療法と並行してGVSを実施した。
【介入と結果】
GVS はIntelect Advenced Combo(chattanooga 社製)を用い、頻度は週に5日実施した。電極は陰極を左側、陽極を右側の乳様突起に装着し、運動療法前に立位で2.0mAの強度で20分間実施した。
X+74日目の評価は、FBSは55点、重心動揺計では、矩形面積79.7mm、前後方向への単位軌跡長8.4㎜/s、左右方向への単位軌跡長8.7㎜/s、SVVは0°であった。姿勢、動作分析では立位、歩行時の左側偏倚は改善し、独歩は自立レベルとなり、LPは認めなかった。またX+101日目に独歩で退院した。
【結論】
GVSは延髄外側梗塞によるLPに対して効果的であり、立位バランスならびに歩行障害を改善させる可能性がある。