[SO-02-4] 歩行耐久性に着目した左人工骨頭挿入術後の一症例
Keywords:大腿骨頚部骨折、表面筋電図
【症例紹介】
症例は80代女性。X日に自転車で転倒し、他院にて左大腿骨頚部骨折(GardenⅣ)と診断され、X+3日に左人工骨頭挿入術(後方アプローチ)を施行された。X+21日に当院回復期リハビリテーション病棟へ転院した。入院時Functional Independence Measure(以下、FIM)運動項目は67点であり、退院後の買い物には700m以上の歩行が必要であった。術中角度は股関節屈曲90°、股関節伸展0°であった。今回、術後の歩行時痛に着目し、表面筋電図(以下、sEMG)を用いて理学療法を実施し、内容を検討したため報告する。
【評価とリーズニング】
入院時の6分間歩行試験(以下、6MWT)は290mであり、6MWT後半より左立脚中期から後期に左殿部後外側部にNumerical Rating Scale(以下、NRS)5の鈍痛を認めた。同日の検査測定では関節可動域(以下、ROM)は左股関節伸展-5°、Hand Held Dynamometerでの筋力は、股関節伸展が左16.4kgf、右16.0kgf、股関節外転が左2.5kgf、右3.0kgfであった。さらに左大殿筋の圧痛や左股関節伸展の反復動作にて左殿部後外側に疼痛を認めた。以上の所見から歩行時に生じる左殿部後外側部痛は、侵襲された大殿筋の持続的な収縮によって生じた収縮時痛と推察した。
大殿筋へのリラクゼーションに加え、股関節伸展ROM練習を中心とした標準的な理学療法を実施した。X+44日には左股関節伸展は0°に改善し、6MWT時の疼痛は消失したが、左殿部後外側にNRS6の疲労感が残存した。歩行時のsEMGでは左立脚中期から後期にかけて左大殿筋の持続的な活動を認めた。また、股関節伸展ROM検査では運動範囲の大部分で伸展方向への抵抗感が増大した。以上の所見から左殿部後外側部の疲労感は股関節伸展制限により立脚期を通して股関節伸展方向への抵抗が増大し、大殿筋の過度な収縮が強いられたことが要因であると考えた。
【介入と結果】
左殿部後外側部の疲労感を改善する目的で股関節伸展ROM練習を継続すると共に、股関節伸展筋を中心とした筋力強化練習を実施した。最終評価(X+58日)では、左股関節伸展ROMは2°、筋力は、左股関節伸展20.0kgf、左股関節外転5.9kgfに改善した。6MWTは左殿部後外側部の疲労感はNRS3と残存したが、410mに改善した。また、6MWT中のsEMG評価では、左立脚期を通して大殿筋の活動が持続し、ピーク値、中間周波数は健側と著明な差を認めなかった。退院時FIM運動項目は86点と改善した。
【結論】
歩行動作時の殿部痛についてsEMGを用いて評価し理学療法内容を検討した。初期に生じた疼痛は後方アプローチによる手術侵襲が要因であると考え、理学療法をおこなった。その後、疼痛は消失したが、6MWT終盤にNRS6の疲労感が残存した。股関節伸展ROM制限が疲労感の原因と考え理学療法介入を継続したが、最終評価時にも左殿部後外側部の疲労感はNRS3と残存した。今回着目した大殿筋以外にも、深層外旋六筋など他の侵襲筋にも着目することが重要であったと考える。
症例は80代女性。X日に自転車で転倒し、他院にて左大腿骨頚部骨折(GardenⅣ)と診断され、X+3日に左人工骨頭挿入術(後方アプローチ)を施行された。X+21日に当院回復期リハビリテーション病棟へ転院した。入院時Functional Independence Measure(以下、FIM)運動項目は67点であり、退院後の買い物には700m以上の歩行が必要であった。術中角度は股関節屈曲90°、股関節伸展0°であった。今回、術後の歩行時痛に着目し、表面筋電図(以下、sEMG)を用いて理学療法を実施し、内容を検討したため報告する。
【評価とリーズニング】
入院時の6分間歩行試験(以下、6MWT)は290mであり、6MWT後半より左立脚中期から後期に左殿部後外側部にNumerical Rating Scale(以下、NRS)5の鈍痛を認めた。同日の検査測定では関節可動域(以下、ROM)は左股関節伸展-5°、Hand Held Dynamometerでの筋力は、股関節伸展が左16.4kgf、右16.0kgf、股関節外転が左2.5kgf、右3.0kgfであった。さらに左大殿筋の圧痛や左股関節伸展の反復動作にて左殿部後外側に疼痛を認めた。以上の所見から歩行時に生じる左殿部後外側部痛は、侵襲された大殿筋の持続的な収縮によって生じた収縮時痛と推察した。
大殿筋へのリラクゼーションに加え、股関節伸展ROM練習を中心とした標準的な理学療法を実施した。X+44日には左股関節伸展は0°に改善し、6MWT時の疼痛は消失したが、左殿部後外側にNRS6の疲労感が残存した。歩行時のsEMGでは左立脚中期から後期にかけて左大殿筋の持続的な活動を認めた。また、股関節伸展ROM検査では運動範囲の大部分で伸展方向への抵抗感が増大した。以上の所見から左殿部後外側部の疲労感は股関節伸展制限により立脚期を通して股関節伸展方向への抵抗が増大し、大殿筋の過度な収縮が強いられたことが要因であると考えた。
【介入と結果】
左殿部後外側部の疲労感を改善する目的で股関節伸展ROM練習を継続すると共に、股関節伸展筋を中心とした筋力強化練習を実施した。最終評価(X+58日)では、左股関節伸展ROMは2°、筋力は、左股関節伸展20.0kgf、左股関節外転5.9kgfに改善した。6MWTは左殿部後外側部の疲労感はNRS3と残存したが、410mに改善した。また、6MWT中のsEMG評価では、左立脚期を通して大殿筋の活動が持続し、ピーク値、中間周波数は健側と著明な差を認めなかった。退院時FIM運動項目は86点と改善した。
【結論】
歩行動作時の殿部痛についてsEMGを用いて評価し理学療法内容を検討した。初期に生じた疼痛は後方アプローチによる手術侵襲が要因であると考え、理学療法をおこなった。その後、疼痛は消失したが、6MWT終盤にNRS6の疲労感が残存した。股関節伸展ROM制限が疲労感の原因と考え理学療法介入を継続したが、最終評価時にも左殿部後外側部の疲労感はNRS3と残存した。今回着目した大殿筋以外にも、深層外旋六筋など他の侵襲筋にも着目することが重要であったと考える。