[SO-02-5] 痛覚感受性の亢進を認めた脳卒中患者に対して段階的な運動療法により歩行獲得に至った一症例
Keywords:脳卒中、変形性膝関節症
【症例紹介】
本症例は右被殻から右放線冠の脳梗塞を認めた60代女性で、病前は家事や買い物は自立していた。既往歴に両側変形性膝関節症(以下、膝OA)を有しており、病前から疼痛があり最大歩行距離が40m程度で、移動は主に自動車であった。発症18日後に当院へ転院となり、理学療法を開始した。
【評価とリーズニング】
入院時評価は、体重62.8kg、Fugl-Mayer Assessment下肢・協調性項目(以下、FMA)は28点、Functional Ambulation Categry(以下、FAC)は4,Time Up and Go test(以下、TUG)はT字杖にて20.5秒、Functional Balance Scale(以下、FBS)は39点だった。また、徒手筋力計による等尺性膝伸展筋力(以下、膝伸展筋力)は0.29/0.21 kgf/kg(右/左)だった。歩行時痛が左膝関節(NRS 7)に限局してみられ、最大歩行距離は30 mであった。左膝に炎症所見はなく、膝蓋骨内側下縁の圧痛閾値は21.7/17.8 N(右/左)で、先行研究と比較して痛覚感受性の亢進を認め、さらに、「痛いのは嫌やから、長い距離は歩きたくない」という発言から、運動恐怖がうかがえた。本症例は、発症前から膝痛を有しており発症後の安静臥床による活動量の低下により、疼痛が増悪し、身体機能の低下をきたしていると考えた。
【介入と結果】
介入は1時間の理学療法を毎日1~3回実施した。介入内容は、歩行器やT字杖にて疼痛強度に合わせた段階的な歩行練習、左大腿四頭筋に対する神経筋電気刺激療法を併用した筋力増強運動、活動量の増加の必要性やペーシングなどの患者指導を行った。入院1ヶ月後、膝伸展筋力は0.31/0.30 kgf/kg、圧痛閾値は26.9/36.6 Nと向上した。歩行時痛はNRS 3で、最大歩行距離はT字杖にて50mとなった。また、膝伸展筋力にて左右差を認めなかったため、電気刺激療法を中止し、ステップ練習や段差昇降などの課題指向型練習を実施した。入院3ヶ月目の評価は、FMAは34点、膝伸展筋力は0.36/0.32 kgf/kg、TUGは9.7秒、FBSは54点、圧痛閾値は37.8/40.8 N、歩行時痛はNRS 1と改善し、最大歩行距離は独歩にて200 mとなった。また、本人から「痛みを気にせず歩けるようになってきた」と言動の変化があった。院内独歩自立となり、病棟では自主練習に加えて、洗濯やお茶汲みなどが実施可能となった。
【結論】
本症例は、軽度運動麻痺にも関わらず、脳梗塞の発症に伴い病前からの膝痛や身体機能の増悪を認め、痛覚感受性が高いことから痛覚変調性疼痛の関与が大きいと考えた。膝OA患者 において、疼痛強度には変形の程度よりも痛覚感受性の関与が大きく、有酸素運動が効果的だと報告されている。今回、患者指導や電気刺激療法を併用し、歩行中の疼痛に留意した段階的運動療法を行った結果、疼痛症状や身体機能、バランス能力が改善し、独歩獲得に至ったと考える。
本症例は右被殻から右放線冠の脳梗塞を認めた60代女性で、病前は家事や買い物は自立していた。既往歴に両側変形性膝関節症(以下、膝OA)を有しており、病前から疼痛があり最大歩行距離が40m程度で、移動は主に自動車であった。発症18日後に当院へ転院となり、理学療法を開始した。
【評価とリーズニング】
入院時評価は、体重62.8kg、Fugl-Mayer Assessment下肢・協調性項目(以下、FMA)は28点、Functional Ambulation Categry(以下、FAC)は4,Time Up and Go test(以下、TUG)はT字杖にて20.5秒、Functional Balance Scale(以下、FBS)は39点だった。また、徒手筋力計による等尺性膝伸展筋力(以下、膝伸展筋力)は0.29/0.21 kgf/kg(右/左)だった。歩行時痛が左膝関節(NRS 7)に限局してみられ、最大歩行距離は30 mであった。左膝に炎症所見はなく、膝蓋骨内側下縁の圧痛閾値は21.7/17.8 N(右/左)で、先行研究と比較して痛覚感受性の亢進を認め、さらに、「痛いのは嫌やから、長い距離は歩きたくない」という発言から、運動恐怖がうかがえた。本症例は、発症前から膝痛を有しており発症後の安静臥床による活動量の低下により、疼痛が増悪し、身体機能の低下をきたしていると考えた。
【介入と結果】
介入は1時間の理学療法を毎日1~3回実施した。介入内容は、歩行器やT字杖にて疼痛強度に合わせた段階的な歩行練習、左大腿四頭筋に対する神経筋電気刺激療法を併用した筋力増強運動、活動量の増加の必要性やペーシングなどの患者指導を行った。入院1ヶ月後、膝伸展筋力は0.31/0.30 kgf/kg、圧痛閾値は26.9/36.6 Nと向上した。歩行時痛はNRS 3で、最大歩行距離はT字杖にて50mとなった。また、膝伸展筋力にて左右差を認めなかったため、電気刺激療法を中止し、ステップ練習や段差昇降などの課題指向型練習を実施した。入院3ヶ月目の評価は、FMAは34点、膝伸展筋力は0.36/0.32 kgf/kg、TUGは9.7秒、FBSは54点、圧痛閾値は37.8/40.8 N、歩行時痛はNRS 1と改善し、最大歩行距離は独歩にて200 mとなった。また、本人から「痛みを気にせず歩けるようになってきた」と言動の変化があった。院内独歩自立となり、病棟では自主練習に加えて、洗濯やお茶汲みなどが実施可能となった。
【結論】
本症例は、軽度運動麻痺にも関わらず、脳梗塞の発症に伴い病前からの膝痛や身体機能の増悪を認め、痛覚感受性が高いことから痛覚変調性疼痛の関与が大きいと考えた。膝OA患者 において、疼痛強度には変形の程度よりも痛覚感受性の関与が大きく、有酸素運動が効果的だと報告されている。今回、患者指導や電気刺激療法を併用し、歩行中の疼痛に留意した段階的運動療法を行った結果、疼痛症状や身体機能、バランス能力が改善し、独歩獲得に至ったと考える。