第34回大阪府理学療法学術大会

講演情報

査読者推薦演題

事前公開

[SO-02] 【事前公開】査読者推薦演題②(回復期)

座長:脇田 正徳(関西医科大学)

[SO-02-6] 回復期脳卒中患者のTrunk Impairment Scale(TIS)の点数分布 -後方視的記述研究-

松本 拓也1, 植田 耕造1,2, 犬飼 康人3 (1.JCHO星ヶ丘医療センターリハビリテーション部, 2.畿央大学大学院健康科学研究科, 3.新潟医療福祉大学理学療法学科)

キーワード:回復期脳卒中、体幹機能

【背景と目的】脳卒中患者の体幹機能評価として信頼性、妥当性が高いTrunk Impairment Scale(以下,TIS)がよく使用されている(Verheyden,2004)。TISは静的座位バランス、動的座位バランス(以下,DSB)、体幹の協調性(以下,COO)の3領域から構成され、この中でDSBの麻痺側の肘付き、麻痺側と非麻痺側の骨盤挙上、COOの下部体幹の回旋が行いにくい項目として挙げられている(Verheyden,2010)。しかし、先行研究の対象者は急性期から慢性期と幅広いため本邦の回復期脳卒中患者でも同様の結果となるかは定かではない。そこで、本邦の回復期脳卒中患者で同様の結果となるかという疑問を追試研究にて検証した。本研究の目的は回復期リハビリテーション入棟中の脳卒中患者においてTISの各項目の点数分布を記述し、行いにくい項目を示すことである。
【方法】対象の包含基準は初発のテント上病変の脳卒中患者で、年齢は90歳未満の座位保持が可能な者。除外基準は座位保持に影響を及ぼす可能性のある整形外科的又は神経学的疾患、TISのテストプロトコルに支障をきたすコミュニケーション障害のある者とした。後方視的研究とし、データ収集は診療録より調査した。データ分析は発症6と12週間後のTISの各項目の点数を出し、その点数ごとの割合を算出した。
【結果】発症6週間後は1075例から包含基準に当てはまらない876例、除外基準に当てはまる66例、TISデータの欠損がある6例を除いた127例(71.7±10.0歳)が対象となり、Functional Ambulation Categories(以下,FAC)で4以上の自立の人が47例、3で見守りの人が30例、2以下の介助が必要な人が47例となった。その中で点数が0の割合が多い項目はDSB③(麻痺側の肘付き)が61%、DSB⑧(麻痺側の骨盤挙上)が57%、DSB⑩(非麻痺側の骨盤挙上)が56%であり、COOは下部体幹の回旋を評価するCOO③が54%、④が87%であった。次に発症12週間後は6週間後と同様に包含基準に当てはまらない335例、除外基準に当てはまる52例、TISデータの欠損又は12週の評価前に退院した630例を除いた58例(69.3±11.4歳)が対象となり、FAC4以上が19例、3が11例、2以下が27例となった。その中で点数が0の割合が多い項目はDSB③が69%、DSB⑩が66%、DSB⑥(非麻痺側の肘付き)が64%、DSB⑧が60%であり、COOは6週間後と同じくCOO③が62%、④が93%であった。
【結論】発症6週間後は先行研究と同様に麻痺側の肘付き、麻痺側と非麻痺側の骨盤挙上、下部体幹の回旋が行いにくい項目であったのに対し、発症12週間後は先行研究と少し異なり、麻痺側と非麻痺側の肘付き、非麻痺側の骨盤挙上、下部体幹の回旋が行いにくい項目であった。急性期から慢性期と幅広い病期が対象である先行研究と回復期のみに限定した本研究との結果の違いや、歩行能力(FAC)の分布が異なる本研究の6と12週間後の結果の違いから、TISの行いにくい項目は病期や歩行能力により異なる可能性が示唆される。