第34回大阪府理学療法学術大会

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[SO-03] 【当日】査読者推薦演題③(生活期)

Sun. Jul 3, 2022 2:10 PM - 3:10 PM 会場2(LIVE ch2) (10階 1001-2会議室)

座長:浅田 史成(大阪労災病院)

2:55 PM - 3:10 PM

[SO-03-4] 排痰困難により入退院を繰り返していた肺非結核性抗酸菌症・リウマチ肺患者に対して排痰指導により効果的な運動療法を実施できた1症例

木村 暢人1, 釜田 千聡1, 白石 匡1, 杉谷 竜司1, 水澤 祐貴1, 野口 雅矢1, 木村 保1, 東本 有司2 (1.近畿大学病院リハビリテーション部, 2.近畿大学病院医学部リハビリテーション医学)

Keywords:肺NTM症、排痰困難

【はじめに】
 近年,肺非結核性抗酸菌症(nontuberculous mycobacteria :NTM)が世界的に増加している.肺NTM症に対する呼吸リハビリテーション(呼吸リハ)は,気道クリアランスにより排痰困難・呼吸困難感・健康関連QOLを改善することは報告されている.しかし,運動療法の効果についての報告は少ない.今回,排痰困難にて入退院を繰り返していた肺NTM症・リウマチ肺患者に排痰指導を実施した.その結果,排痰困難が改善し,効果的な運動療法を実施でき,運動耐容能の改善した症例を経験したため報告する.
【症例紹介】
67歳女性, 体重33.3kg,身長157.0cm,BMI:13.5kg/m.緑膿菌性肺炎による入院歴があり,肺NTM症・リウマチ肺で通院中.X日に入院,X+21日に退院し,X+24日から外来リハビリを開始した.
【評価】
呼吸機能検査は,肺活量1.21L(45.7%),1秒量1.10L(94.83%)であった.胸部CTでは両側多発陰影,両側気管支拡張,右中葉ブラ内液体貯留を認めた.咳嗽時最大呼気流量(CPF:cough peak flow)は165L/min,呼吸筋力はPImax:44.3cmHO,大腿四頭筋力はHHD:0.51kgf/kg, 6分間歩行距離は418m,心肺運動負荷試験ではpeak VO2: 11.9ml/kg/min, peak Watt:35watt,COPD assessment test(CAT)は25点, 排痰回数は,0~1回/日であった.また,本症例は過去1年間で4回入院しており,非入院期間は1~2ヵ月であった.
【介入と結果】
退院後,週2回の外来リハを3か月間実施した.内容は, アカペラによる気道クリアランス,排痰肢位・排痰時の座面調整などの環境調整,コンディショニング,吸気筋トレーニング(30%PImax 30回×2セット/日),四肢筋力強化,自転車エルゴメータによるインターバルトレーニング (70% peak Watt 5分×3セット 休憩2分)を実施した.運動療法中,咳嗽や呼吸困難感・SpO2低下があり,開始当初は排痰指導を中心に実施した.
介入前後で呼吸機能検査は, 肺活量1.15L(43.7%),1秒量1.10L(94.83%)で, 咳嗽力・呼吸筋力はCPF:180L/min,PImax:49.3cmHOで著変なかった. 大腿四頭筋力はHHD:0.70kgf/kg,6分間歩行距離は485m,peak VO2:16.5ml/kg/min, peak Watt:46watt, CATは16点(息苦しさ3→1,日常生活5→1,睡眠3→0,活力4→3)と改善を認めた. 排痰回数は3~5回/日と増加し,以後,再入院はなく経過している.
【結論】
本症例は排痰困難が改善したことで,効果的な運動療法が行えた.排痰指導として気道クリアランスや気道内の加湿,咳嗽時の過度な屈曲姿勢の修正により,排痰時努力量軽減,排痰回数の増加が得られ,排痰困難が改善した.加えて,運動療法前に排痰を行い,労作時呼吸困難感・SpO2低下が軽減され運動負荷を増加できたため,インターバルトレーニングによる下肢筋力増加・運動耐容能の改善が得られやすくなったと考えた.また,排痰指導によりブラ内の緑膿菌貯留を軽減することができ,再入院なく経過していることが考えられる.
 肺NTM症に対して,排痰指導を実施することで,より効果的な運動療法を行えることが示唆された.