[AW-12] 処方箋記載検査値から見た2型糖尿病合併慢性腎臓病患者の現状調査
【目的】近年、検査値記載の院外処方箋の普及により、保険薬局ではこれらを活用した処方監査や服薬指導の実践が求められる。本研究では中等度腎障害患者の糖尿病治療実績を調査し、該当患者群への服薬指導充実化に向けた示唆を得ることを目指す。<BR>【方法】2022 年 1 月~3 月に来局した患者のうち過去2 年間の薬剤服用歴管理記録を参照し、処方箋記載の推算糸球体濾過量(eGFR )の値から慢性腎臓病グレードG3 に分類される487 名の患者についてHbA1c の最大値を評価対象とした。内訳として「6.4 %以下」、「6.5 ~7.9 %」、「8 %以上」の 3 群に分類し、さらに血糖降下薬による治療実績の有無によりそれぞれ「治療」と「未治療」に分け、その分布を調査した。さらに「6.5 ~7.9 %」かつ「未治療」に該当する患者について、HbA1c 上昇の背景を調査した。本研究は茨城県薬剤師会倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番 号:202103 )<BR>【結果】G3 に分類された 487 名の内訳は「6.4 %以下」が 288 名(59 %)、「6.5 ~7.9 %」が 146 名(30 %)、「8 %以上」が 53 名(11 %)であった。「6.5 ~7.9 %」に該当する患者の治療実績は、「治療」が 77 名、「未治療」が 69 名であった。「未治療」のHbA1c に関わる背景は「一過性の上昇あり」37 名(54 %)、「持続的な上昇あり」24 名(35 %)、「ステロイド性の疑い」8 名(11 %)であった。また69 名中19 名が直近1 年間でHbA1cの測定が無かった。<BR>【考察】未治療の背景として一過性のHbA1c上昇が半数を占めており、一時的な生活習慣の乱れや基礎疾患に起因している可能性がある。複数医療機関、診療科を横断的に観察する保険薬局では中等度腎機能低下・糖尿病未治療の患者に対し、検査値推移の把握による受診勧奨やアドヒアランスの確保などの服薬指導の充実化が糖尿病の悪化や慢性腎臓病の進行を遅らせるための有効な介入手段になり得ると考えている。