第17回日本薬局学会学術総会

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共催シンポジウム

共催シンポジウム 2
「中性脂肪と疾病 - 生活習慣病から難病まで -」

Mon. Oct 9, 2023 9:00 AM - 10:30 AM 第5会場 (4号館3階 会議室431+432)

座長:平野 賢一(大阪大学大学院医学系研究科 中性脂肪学共同研究講座 特任教授(常勤)/一般社団法人中性脂肪学会 代表理事)日比野 靖(一般社団法人岐阜県薬剤師会 会長/株式会社サン・ウエスト サニー調剤薬局 代表取締役)

共催:一般社団法人 中性脂肪学会

[CSY2-3] 中性脂肪と腹部大動脈瘤

財満 信宏1,2 (1.近畿大学農学部 教授, 2.近畿大学アグリ技術革新研究所)

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 腹部大動脈瘤(AAA)は腹部大動脈が進行的に拡張する疾患であり、拡張が進展するにつれて破裂のリスクが増加する。AAAの破裂原因は完全には明らかになっておらず、AAA治療を可能にする薬剤も未だ開発されていないが、我々は、これまでの研究により、AAA破裂には中性脂肪が関与していることや、中性脂肪の適切な管理・利用によってAAA破裂を予防・治療できる可能性があることを見出した。結合する脂肪酸の違いによってAAAに対する中性脂肪の影響は大きく異なっているため、本発表では、中性脂肪の種類にも言及しながら腹部大動脈瘤と中性脂肪の関わりについて議論したい。以下に概要を記載する。
【AAA破裂と中性脂肪】
 血中の中性脂肪値はAAA破裂と相関しないことが報告されているが、我々はヒトAAAの血管外膜部分の中性脂肪値がAAA径と相関することを見出した。病理解析によって外膜の中性脂肪値が異常を示す原因を調べたところ、AAAの外膜壁には脂肪細胞(中性脂肪を蓄積する細胞)が異所出現していることが分かった。血管内に脂肪細胞が異所出現するという特殊な病態を再現した動物モデルを作成したところ、脂肪細胞は血管の強度を保つ血管線維量を低下させることで大動脈の脆弱化を誘導し、AAA破裂を引き起こしうることが分かった。
【中性脂肪によるAAA予防・治療の可能性】
 エイコサペンタエン酸(EPA)を豊富に含む魚油をモデル動物に投与したところ、AAAの進展抑制が観察された。ヒトでは魚食がAAA破裂リスクを低下させることや、AAA患者の脈波伝播速度を改善することなどが報告されており、n-3高度不飽和脂肪酸の供給源となる魚油はAAAを予防しうる可能性が考えられる。
 また、AAAを治療しうる可能性があるものとして我々がごく最近見出したものがトリカプリン(炭素数10の中鎖脂肪酸であるカプリン酸が結合した中性脂肪)である。興味深いことに、トリカプリンはモデル動物に形成されるAAAの進展を抑制するのみならず、退縮をさせる効果があることが分かった。トリカプリリン(炭素数8の中鎖脂肪酸であるカプリン酸が結合した中性脂肪)にはこの効果が観察されなかった。トリカプリンを投与した動物は、動脈の硬化、カルシウム沈着、線維の破壊などが抑制されており、大動脈変性を抑制する作用がAAA抑制効果につながっていると推測される。