第17回日本薬局学会学術総会

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一般演題(ポスター)

一般演題(ポスター)Cグループ

Mon. Oct 9, 2023 2:50 PM - 3:30 PM ポスター会場 (2号館3階 会議室231/会議室232+233/会議室234)

[P-120-C] ふらつきの主訴から過度な降圧を疑い減薬に至った一症例

若林 諒 ((株)スギ薬局 松阪中央店)

【目的】
高齢者の転倒は、中枢神経系や循環系に係る薬剤起因性であることも少なくない。今回、「薬は極力飲みたくない」との訴えから、患者へのヒアリングでアドヒアランスの低下にふらつきが影響していたことを特定し、介入した症例について報告する。
【症例】
80代女性。要介護1 、独居。歩行困難により在宅療養にて高血圧、糖尿病、脂質異常症、緑内障の加療中。認知機能の低下があり、週4回デイサービスに通っている。患者から「薬は極力飲みたくない」と訴えがあり、介入を開始した。患家には、転倒防止の手すりが設置されていたが、半年前に転倒による入院歴があり、「最近、ふらつくことが増えてきた」との主訴より、ふらつきに係る薬剤から検討した。介入前、降圧作用のある6種の薬剤(フロセミド、スピロノラクトン、オルメサルタン、ドキサゾシン、シルニジピン、カルベジロール)が処方されていた。血圧値は、朝食前(9時) 95-110/60、配薬時(18時) 126/66であった。α遮断薬は起立性低血圧や転倒のリスクがあることから、薬剤師はまず、α遮断薬の減薬を提案した。減薬後の血圧は、朝食前(9時) 95/56-60、配薬時(18時) 121/56と2ヶ月経過後も顕著な変動は見られなかった。しかし、患者からは「ふらつくことが減った。飲む薬も減って嬉しい」との声を聞くことができた。
【考察】
高齢者の高血圧治療においても降圧目標の達成が第一目標であり、降圧薬の併用療法において薬剤数の上限は無い。しかし、過度な降圧により、転倒のリスクのみならず認知機能に悪影響を与えることも懸念されている。今回の症例は、患者の訴えを深堀することで、飲みたくない原因に介入することができたと考える。今後、服薬アドヒアランスを考慮し、降圧薬3種類と利尿薬2種についても、各1種になるよう精査して医師へ減薬の提案をしていきたい。