[O-6-1] 薬局薬剤師による認知症の定点観測を活用した認知症重症化予防の取り組み
【目的】認知症は気づきや対応の遅れで重症化する可能性があり、認知症初期集中支援チームの支援開始時に対象事例の約5割が困難事例とみなされる現況にある。介入の契機を見逃さぬために、製薬会社提供の確認票を用いて認知症の人を定点観測(以下、観測)した。認知機能と身体機能との密接な関連から、見当識・会話・入浴・更衣・排泄の5項目を定期的に確認し観測結果を評価し、治療やケアに繋げた。本取組の観測が、薬局薬剤師の適時介入実施に有用であることを報告する。
【症例】80代女性、アルツハイマー型認知症、メマンチン20mg服用、要介護1、「もの忘れが悪化、5年間検査も処方変更もない」と訴える夫に聴取し観測した。初回、確認票にて見当識と更衣の自立度低下を認め、デイサービス利用、認知症専門医受診へ導いた。その結果、認知症進行(5年間でMMSE26点から17点に低下、ADAS上昇)判明、ガランタミンが追加された。4ヶ月後、8ヶ月後、確認票変化なし。13ヶ月後、確認票にて入浴と更なる更衣の自立度低下を認めた。病態進行の懸念から、環境整備ののち観測結果を根拠としてガランタミン増量提案(16mg/日から24mg/日)を実施し、処方変更された。16ヶ月後、確認票で入浴と更衣の自立度改善、21ヶ月後、定期検査で認知機能改善(MMSE17点、ADAS低下)が確認された。
【考察】観測に基づき介入を行った結果、処方変更や介護サービス導入に繋がり、施設入所は保留となり患者の望む在宅生活が延長された。「確認票」によるエビデンスが、患者・家族、多職種への具体的アプローチとその実施時期の見極めに役立っている。観測は手間を要さず、繁多な現場でも実施可能である。同様の簡便な認知症確認票は数多あるため、患者を取り巻く関係者間で選択できると良い。薬局薬剤師が観測した確認票を共有することは、多職種同士の行動変容に結びつきスピーディに治療に生かされ、困難事例の減少に大きく貢献すると考えている。