[O-7-3] エール薬局における薬剤性摂食嚥下障害の早期発見への取り組み
【目的】向精神薬は嚥下障害を起こしやすい薬剤である。薬剤性嚥下障害は、誤嚥性肺炎や栄養障害を併発すると共に、軽度な嚥下障害でも薬剤の服用困難をきたし、病状の悪化やQOLの低下をもたらす。今回、向精神薬の服用患者に嚥下状態の質問を行い、薬剤性嚥下障害を早期に発見することが可能であるか検討した。【方法】調査期間は2024年1月18日~4月30日。対象患者は精神科を標榜する医療機関近隣の当社グループ4店舗にて以下の向精神薬(リスペリドン・ハロペリドール・クエチアピン・チアプリド、アルプラゾラム・ジアゼパム)の服用者とした。大熊らの機能性嚥下障害スクリーニングテスト(日摂食嚥下リハ会誌,6,3-8,2002)より摂食嚥下プロセスの咽頭・口腔・食道機能に関する1.飲み込み2.むせ3.食物残渣4.食事の遅延5.胸のつかえの5項目を選定し、現在の嚥下状態をA(しばしば)、B(ときどき)、C(なし)にて評価、ひとつでもAがあった場合は嚥下障害の可能性が高いと判断し、処方医への情報提供を行った。本研究はI&H学術研究倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号:23006HS)。【結果】該当患者は95名(平均年齢52.8歳)であり、対象薬剤を3剤服用していた患者は1名、2剤8名、1剤は86名であった。嚥下障害の可能性が高いと判断された患者は9名、このうち4名については、処方医に情報提供を行い1名が減薬となった。【考察】本調査では既存テストを咽頭・口腔・食道機能に限定し簡略化したことで、時間負担が減少し、多くの患者のスクリーニングが可能となった。1例ではあるが情報提供により減薬が行われたことで、今回の5項目は、嚥下障害の可能性を早期に把握するという点において有用と考えられる。今後も、5項目の質問の活用により、患者の副作用の早期発見やQOLの低下の予防に努めていきたい。