[P-055-A] 保険薬剤師による2型糖尿病患者への食事指導が生活行動およびHbA1cへ与える影響~理解度調査表を活用した取り組み~
【目的】2型糖尿病患者の多くは、食事療法に関して、院内において管理栄養士から栄養指導を受けている。保険薬局においても、薬剤師が服薬指導と共に食事指導を行うことは重要である。我々は、2型糖尿病患者に対して、食事に関するクイズ形式の理解度調査(富永らの報告(糖尿病64 (1) : 8-18, 2021)を元に内容を一部改変・追加)後の服薬指導によりHbA1cが改善した事例を2023年の本学会で報告した。今回、どの程度の割合の患者に対して、本運用が有効であるか評価する為、対象を拡大して調査した。
【方法】本研究は、北海道薬剤師会より倫理審査の承認を得た(承認番号:06-0005)。継続的に来局している2型糖尿病患者で、糖尿病治療薬に関して前回処方から変更がなく、研究参加に同意した患者33名に対して理解度調査を行ったのち、服薬指導時に、調査結果に基づき食事指導した。調査実施日から28~72日経過後に来局した際のHbA1c及び調査実施後の生活変化の有無を聞き取った。
【結果】調査実施後のHbA1c(7.5±0.8)は調査実施日(7.6±0.8)と比較して有意差を認めなかった(n=33, paired t-test)。33名の内、生活改善とHbA1cの低下が認められた患者は5名(15.2%)であった。生活改善の内容は、「食事内容の是正(野菜摂取量の増加)」1名、「運動量の増加」3名、「食事内容の是正(1日の総摂取カロリーの見直し)および運動量の増加」1名)であった。
【考察】本研究において、HbA1cの有意な改善は認めなかったが、理解度調査をきっかけとして何らかの生活の改善に取り組み、その結果HbA1cの改善が認められた患者が15.2%であった。これらの患者について、生活の改善内容は、食生活の是正よりも運動量の増加に努めた件数が多いことから、本運用は、患者自身の生活全体に対する見直しに影響した可能性がある。今後は更に、長期的かつ反復的な評価を行うことで本取り組みの有用性を評価していきたい。