[P-063-C] 薬剤師の積極的な声かけによる腎機能低下患者の把握に関する調査
【目的】
薬剤師による患者の腎機能把握は、処方の適正化に有用だが、腎機能異常なしと聴取歴はあるものの、実際には正常値より低い高齢患者が時折見られる。本研究では、高齢者の腎機能を適切に把握することを目的に、薬局で腎機能を把握しておらず問題ないと話す65歳以上の患者(以下、対象患者)に対し、検査値持参の声かけ又は医療機関へ検査値の問い合わせ(以下、積極的な声かけ)を行い、どの程度腎機能低下患者が把握できるか、隠れた腎機能低下患者の傾向を調査した。
【方法】2024年1月9日~同年2月29日、なの花薬局米が浜店・ハマミ店・榛原神戸店・本牧店に処方箋を持参し研究者が投薬した対象患者へ積極的な声かけを行った。eGFR=60 mL/min以上を腎機能正常(以下、正常群)、未満を腎機能低下(以下、低下群)とし、低下群の人数と、その傾向を薬歴等の年齢・体重・性別・喫煙の有無・飲酒の有無・服用薬剤数から調査した。
【結果】
40名の検査値を収集し(収集率16.4%)、うち21名が新たに発覚した低下群だった。
低下群21名、正常群19名でそれぞれ、平均年齢79.6歳・76.7歳、男性7名・7名、女性14名・12名、喫煙あり1名・2名、飲酒あり3名・6名、平均服用薬剤数6.6剤・5.4剤だった。
【考察】
収集した検査値のうち半数は低下群で、積極的な声掛けをしない場合、低下群が見逃されている可能性が示唆された。必要時に検査値を確認するだけでなく、日頃から積極的な声かけを行い検査値を収集することが重要である。また、低下群と正常群で特徴的な傾向はみられなかった。年齢や性別等によらない広い声掛けが必要であると言える。
更に、隠れ腎機能低下者の存在を周知することは、患者に自身の腎機能について関心を持ってもらい、薬剤師が腎機能を適切に把握し、より適切な治療へとつなげられる可能性があると考えられる。