第18回日本薬局学会学術総会

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シンポジウム

シンポジウム12
「薬剤師の職能を見える形で患者さんに評価してもらえるために 神奈川県薬剤師会合同シンポジウム」

Sun. Nov 3, 2024 2:00 PM - 3:30 PM 第3会場 (3階 315)

座長:亀井 美和子(帝京平成大学 薬学部 薬学部長) 原 和夫(神奈川県薬剤師会 リスクマネジメント委員会)

[SY12-1] 薬学的知見を活かした質の高い医療の実現

亀井 美和子 (帝京平成大学 薬学部 薬学部長)

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 六年制課程の薬学教育が開始されて19年目となり、その課程を修めた多くの薬剤師が医療現場で活躍している。薬学部に入学直後の新入生の多くが語る薬剤師は薬局の薬剤師であり、処方箋を持っていくと調剤してくれる、薬の説明をしてくれる、といった場面をイメージする。その後の授業や実習を通じて、疑義照会、情報提供、薬学的知見に基づく指導、薬剤交付後の継続したサポートなどの調剤した薬剤に関する任務や、在宅患者の環境と多職種連携、セルフメディケーションや健康サポートといった人々の健康を支える役割などについて見聞きし、薬局薬剤師の幅広い仕事を知るようになる。大学で、健康に関わる医薬品を含む幅広い物質、薬物動態、製剤、薬物治療、環境・食品衛生等々についてこれだけ学修する医療職は薬剤師以外にはなく、このことからも、人々の暮らしの多くの場面に薬剤師による薬学的知見を活かすことができるのは明らかである。しかし一方、薬学的知見をどうやって活かせばよいのかについては、残念ながら、多くの大学では学修する機会が少ない(ほとんどない)のではないだろうか。低学年から地域や人々が抱える課題に触れ、学修をすすめながら薬学的知見の活かし方を身に付けていけるような教育が当たり前になってほしいものである。
 さて、このような薬剤師養成段階の課題はあるものの、六年制卒の薬剤師が増えた現在、地域における薬剤師の行動は着実に変化している。ずっと長い間、四年制卒であろうが、場が調剤室であろうが、患者や人々の安全や健康を願って仕事をしてきた薬剤師であるが、直接的に関わる機会や一人一人に向き合う姿勢が少なかった故に、その役割が理解されにくい状況があった。しかし、在宅医療に関わる薬局薬剤師が増え、災害時の活動が身近なものへと変化し、COVID-19感染拡大を乗り越え、薬剤師が薬学的知見を発揮することが地域にとって欠かせないことが認識されるようになってきた。薬剤師は自分たちの職能が人々のウェル・ビーイングの実現につながっていることに自信を持ち、薬学的知見を活かして一人一人の課題に向き合う姿勢を行動で示すことが大切である。職能団体である薬剤師会が、その行動を牽引する取り組みを行うことは重要である。