第18回日本薬局学会学術総会

講演情報

シンポジウム

シンポジウム9
「患者主体の薬剤師職能のエビデンス構築に向けて~True endpointは患者の笑顔~」

2024年11月3日(日) 09:00 〜 10:30 第2会場 (5階 503)

座長兼オーガナイザー:益山 光一(東京薬科大学薬学部 医療薬物薬学科 社会薬学教育センター 薬事関係法規研究室 教授) 原 和夫(株式会社わかば 学術部 部長)

[SY9-3] 薬剤師から始めるValue Based Care

中井 清人 (厚生労働省医薬局 医薬品審査管理課長)

 近年では、科学技術の進展に伴い、創薬環境も大きく変貌しています。今までは、メガファーマによる自社開発、創薬ターゲットも生活習慣病などを対象としたブロックバスターが多くを占めていましたが、ベンチャー・アカデミアとのアライアンスによる開発、バイオ製品によるアンメットメディカルニーズを対象とした創薬が増えてきています。この様な製品では、市販前に大規模な治験を行うことは難しく、創薬を促進させる薬事制度(先駆け審査指定制度、条件付き早期承認制度など)の導入も有り、市販前の開発段階から市販後の育薬を見据えた開発が求められています。
 医薬品をより安全で効果があり、使いやすいものへと育てていくことが育薬です。医薬品の価値を最大にするためには、承認を取得する前の治験だけではなく、承認取得後にも実使用時の情報の調査・収集を絶えず行うことが必要です。そして、医薬品が本質としてもっている特性、すなわち人の身体に対する作用・影響を適切にコントロールして、国民が望まない面を最小限に抑えつつ、国民が求める部分を最大限引き出すための条件を導き出すことが極めて重要です。つまり、医薬品の使用を必要とする個々の患者さんに対して、医療の現場で現に実践されてきた結果である医療情報に基づいて、医薬品の持つ価値(Value)を最大化・最適化していくことが薬剤師の皆様に求められていることと思います。
 近年では、Value Based CareやPay For Performanceと言った言葉が、米国の医療制度における議論において散見されます。これは、今までの出来高払い制度(Pay For Performance)や包括支払制度(Diagnosis Related Group(DRG))から「価値に基づく医療」への変化を示しています。本講演では、この「価値に基づく医療」がどのようなものか、どういったやり方で評価するのか、また、我が国はこの流れをどのように見るべきなのか等について、薬剤師の視点から考察していきたいと思います。