第21回日本蛋白質科学会年会

講演情報

ポスターセッション

[1P-1] ポスター1(1P-01ー1P-48)

2021年6月16日(水) 14:45 〜 16:45 ポスター会場1

[1P-11*] 高圧力NMR法を用いたボレリア菌表層タンパク質OspAの変性中間体に関する研究

山本 純也1, 北沢 創一郎2, 北原 亮2 (1.立命館大・薬・薬科学, 2.立命館大・薬・創薬)

ライム病は、ボレリア菌の表面に存在するOuter surface protein A (OspA)が、マダニの腸管細胞受容体TROSPAを認識し腸管内で共棲することでマダニを介して人間に感染する。OspAはN末端側とC末端側に球状のドメインがβ-strandで繋がれた31 kDaのタンパク質である。OspAのTROSPA認識部位を含むC末端ドメインから中央領域までのアミノ酸残基はN末端ドメインより安定性が低くこれが変性した局所変性状態の存在が高圧力NMRなどの研究からわかっている。局所変性することがTROSPAの認識に重要と考えている。今回、我々は局所変性状態を模倣した変異体の作製を試みた。K189-E160間の塩橋はC末端領域から中央領域を安定化させている重要な相互作用である。これを減弱したOspA E160D変異体を作製し、水素/重水素(H/D)交換NMR実験、高圧力NMR実験、高圧力トリプトファン蛍光実験により構造及び熱力学的安定性を評価した。E160D変異体の中央領域とC末端ドメインは野生型のそれと比べ安定性が低下した。40 ℃、1気圧における局所変性状態の分布率は野生型では0.0024 %、E160Dでは0.1 %となる。一方、2500気圧では野生型は80 %に対し、E160Dではほぼ100 %まで安定化させることに成功した。E160D変異体は局所変性状態模倣変異体として生化学実験や立体構造解析に有力な変異体であり、E160D変異体の研究により局所変性状態の機能的意義が明らかになることが期待される。