[1P-12*] Structural analysis of lyssavirus P-protein C-terminal domain for understanding pathogenesis
狂犬病を引き起こすことが知られているラブドウイルス科リッサウイルス属のウイルスは、自身の遺伝子にコードされているP蛋白質 (RVP) を用いて宿主の免疫系を阻害することにより、自身の増殖に有利な環境を作り出す。特に、RVPのC末端ドメイン (RVP CTD) は、宿主の免疫経路の中心を担う、JAK-STATシグナル伝達経路を阻害する。しかしながら、RVP CTDによるJAK-STAT経路阻害機構の詳細は、未だ明らかになっていない。リッサウイルス属のウイルスのうち、本研究では弱毒性のDuvenhage ウイルス P CTD、強毒性の狂犬病ウイルス西ヶ原株 P CTDの結晶構造解析を行い、他の強毒性ウイルス3種のP CTDと構造比較を行った [1]。5種のRVP CTDの疎水性パッチを比較すると、強毒性の4種は265番目の残基がWやFの影響で嵩高く、結晶中において隣接する単量体との相互作用に寄与していた。一方で、相当する残基が266GであるDuvenhage virus P CTDの疎水性パッチは窪んだ構造をしており、結晶中における分子パッキングには関与していなかった。このことから、疎水性パッチの嵩高さが、他の分子との相互作用に影響し、ウイルスの毒性の違いを生み出す可能性を考えている。
[1] Aoi Sugiyama et al., BBRC. 529, 507 - 512 (2020)
[1] Aoi Sugiyama et al., BBRC. 529, 507 - 512 (2020)